安倍元総理を銃撃 現場の警備は?元埼玉県警の佐々木成三氏に聞く[2022/07/08 23:30]

街頭演説中に襲撃された安倍元総理が、奈良県内の病院で8日午後、亡くなりました。現場の警備態勢はどうだったのでしょうか。元埼玉県警の佐々木成三さんに聞きます。

安倍元総理は、大和西大寺駅近くのロータリーで応援演説。捜査関係者によりますと、容疑者は5メートルほど離れた場所から発砲。映像では数分前から周辺に容疑者がいたことが確認できます。また、自民党関係者によりますと、安倍元総理の奈良入りは、急きょ、決まったため、警備は急だったはずだとのことです。警備態勢について、捜査関係者によりますと、奈良県警の指揮のもとで警視庁のSPが1人同行していたといいます。

また、元神奈川県警で現在は民間のボディガードとして勤める古谷謙一さんによりますと、「被疑者を抑えているのは恐らく地元の警察。警視庁のSPは警護対象者(安倍元総理)を守るのが優先だ」といいます。

(Q.今回、気づいた問題点などを教えてください)
警視庁のSPが1人でした。SPはチームで警護をしますので、初めて会った奈良県警とやるのは、かなり難しかったのではないかと思います。SPの服装を見ますと、防弾チョッキは着ていませんが、防弾盾は持っています。それを活用できなかったということもわかります。SPについては、身を挺して警護対象者を守る訓練はしています。ただ、いきなりのできごとだったので、状況を把握するのに時間がかかってしまったということがあるのかなと感じました。

元SP経験者によりますと「通常、元総理クラスなら前日までに周辺の検索を徹底して、当日は不審者がいないかに集中して警備するが、日程変更で事前の準備ができなかったのでは」といいます。現場を見ると、ロータリーの周りは道路で囲まれ、ビルが立ち並び、狙われやすい場所ともいえます。

(Q.急きょ、日程が変更されたことの影響をどう見ますか)
警備態勢の変更というのは過去あります。急きょ、変更があっても、どうやって配置するか入念に行われていると思いますが、刃物に対する警護の訓練はしていますが、銃に対しては、十分な訓練は難しかったのかなと思います。

捜査関係者によりますと、山上容疑者は、自作した銃のようなものについて、「銃1丁に3本の筒、1本の筒に6発の弾丸が入っている。その銃は複数作っていて、今年の春ごろにはできていた」と話していて、計画的犯行の可能性が高いとのことです。また、山上容疑者は、以前、海上自衛隊に在籍していました。防衛省によりますと、同一人物かは確認中としながら、「小銃についての取り扱い方を把握し、実弾射撃の訓練、銃の分解・整備・組み立ても行っていた」とのことです。

(Q.手製の銃で犯行に及んでいますが、これはどう見ますか)
私も警察官が長かったですが、銃の扱いはできても、改造銃をつくる知識はありません。しかし、改造銃を誰でもつくれるマニュアルがあります。今回、使用された銃は、かなり雑というか、ち密な作り方ではない。また、この容疑者は、爆発物もつくっていることが現場からわかっています。この改造銃をつくったときに、試し打ちをしているはずです。そうなってときに精度が悪いことと、威力も少ないということを把握したうえで、狙撃をするとき安倍元総理の近くに行かないとできないということを知ったうえでの犯行だとよくわかります。

(Q.有権者と距離を置きたくない、選挙特有の事情もあります。教訓とすべきことは何でしょうか)
結果論ですが、容疑者が安倍元総理の背後5メートルに近付いてしまった。SPとして、事前に把握できたら、何かしら対処できたと思います。刃物に対する襲撃は想定していましたが、拳銃による襲撃は想定できなかった。今後は、こういった事例を踏まえて、警護態勢の見直しというのは、すべきだと感じました。

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