被害者「死刑にしました終わりです。では納得いかない」秋葉原“無差別殺傷”死刑執行[2022/07/26 23:30]

14年前、歩行者天国でにぎわう東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件。加藤智大死刑囚(39)の刑が26日に執行されました。

古川禎久法務大臣:「本日、加藤智大の死刑を執行しました。身勝手な動機によって、尊い人の命が奪われるという卑劣な事件は、断じて許されない」

2008年6月8日午後0時半ごろ、東京・秋葉原。この日は日曜日で、歩行者天国となり、多くの人でにぎわっていました。

加藤死刑囚は、トラックで交差点に突っ込み、人をはねた後、ナイフで刺して、男女7人を殺害、10人に重軽傷を負わせました。

加藤死刑囚は、携帯電話用の掲示板に、犯行予告の書き込みを行っていました。

加藤死刑囚:「秋葉原で人を殺します 車でつっこんで、車が使えなくなったらナイフを使います みんなさようなら」

加藤死刑囚は裁判で、動機について、ネット掲示板を荒されたり、本人に成りすました書き込みをされたりするなどの嫌がらせが、きっかけになったと説明しています。

これまで4冊の本を出している、加藤死刑囚。出版元の編集長は、その過程で手紙をやり取りし、20回近く面会しています。

批評社・佐藤英之編集長:「すごく好青年だと思っていました。なんで彼があんな事件を起こしたのか不思議でした。(Q.雰囲気は?)自分からも話す人」

事件が起きた2008年は、経済面で大きな転換を迎えた年でした。

リーマンショックから金融危機が世界に広がり、株価が暴落、日経平均株価がバブル後、最安値となりました。

加藤死刑囚は青森市出身。岐阜県の短期大学を卒業後、宮城・埼玉・茨城などで職を転々としてきました。

勤務先は、警備会社・自動車工場・住宅建材会社など様々。加藤死刑囚は裁判で、ネットの掲示板は、本音を言える、自分が自分でいられる場所だと語っています。

事件後は、その場が本に代わったかのように、出版への熱が高かったといいます。

批評社・佐藤英之編集長:「(Q.自分の思いを世間に知ってもらいたいと?)それはありますね。ただ何か自分の思いを素直に出していくタイプではない。(Q.事件の動機や背景を聞いたこともあるのか?)聞いたことはない。手紙では書いたことはあると思うが(動機や背景を)もっと掘り下げてほしいという意味で。だけど、彼はそれには答えて来なかった」

原稿は、すべて加藤死刑囚からの持ち込みでした。当初、4冊も出版するとは思っていなかったといいます。

批評社・佐藤英之編集長:「彼のなかでは、説明責任を果たしていると思っている。これじゃダメなんだと。これじゃ説明責任果たしたことにならないと。もっとあなたのやってきたことを、自分のその時の内面を掘り下げなさいと。言葉として何度も言ったが、分かりましたとはならなかった」

加藤死刑囚に襲われ、一時意識不明の重体となった、元タクシー運転手の湯浅洋さんは、こう話します。

湯浅洋さん:「まず思ったのは、なんで今日なのというのがあって。今までの死刑執行期間が7年平均だから今日だとしか聞こえなかった。秋葉原事件の再発防止、何かやったのか全然聞こえない」

事件の教訓が生かされていないのではないかとの思いが湧いてきたといいます。

湯浅洋さん:「安倍元総理の事件では、鉄砲も作れるし、爆弾も作れると。加藤死刑囚みたいなのがまた出てきたら、秋葉原事件の比じゃないような大事件になるような気がしてならない。加害者を作らないというか。そういうことを7年間やってたのか(政府から)全然聞こえてこない。『死刑にしました。終わりです』では、被害に遭った当事者として納得いかない」

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