【わたしの提言】新型コロナ 全数把握“見直し”でひっ迫改善?まだ大きな壁が…[2022/08/23 19:57]

 新型コロナ対策で新たな動きです。政府が陽性者の全数把握を見直す方針であることが分かりました。ただ、アドバイザリーボードのメンバーである阿南氏に話を聞いたところ、ゴールにはまだ大きな壁があるといいます。

 東京都で23日、新たに確認された感染者は2万1770人。病床使用率は60%近くと医療の逼迫(ひっぱく)が続いています。

 日本医師会・松本吉郎会長:「医療提供体制においては救急搬送困難事案が増加したり、医療従事者の欠勤の割合が高くなっている。医療現場はまさに対応限度ぎりぎりの状態が続くなかで全力で患者さんへの医療提供に取り組んでおります」

 23日、全国で確認されたコロナによる死者は343人です。去年2月以来、過去最多を更新しました。

 感染者がかつてないほどに増えることでこれまでの制度では医療機関が対応できなくなっています。

 日本医師会・松本吉郎会長:「日本医師会としても感染者の全数把握については現場の負担軽減になるように入力項目の簡素化などは政府に求めている」

 全国知事会会長・平井鳥取県知事:「全数調査にこだわりすぎて実際に医療のフォローアップができなくなったり、保健所が崩壊しかけたりということになるのではないか。検討するのはもうたくさんであります。実行に移して頂きたい」

 各所から要望がある全数把握の見直しについては政府が24日にも説明する予定です。

 これまで医療機関や保健所にはすべての感染者の症状やワクチン接種歴などの詳細報告が義務付けられていました。

 政府関係者によると今後、詳細報告は高齢者など重症化リスクの高い人だけに限定する方針です。

 ただ、人数については引き続き全数を把握することを検討しています。

 この変化は今後も続くコロナとの闘いにおいて大事な一歩だと指摘するのは神奈川県のコロナ対策の指揮を執り、アドバイザリーボードのメンバーとして厚労省へ助言を行っている阿南英明氏です。

 新型コロナウイルス感染症対策ADBメンバー・阿南英明医師:「(Q.今回、政府に全数把握見直しの動きがある。阿南先生はどう感じている?)それ(把握しないこと)によってクリニックの作業が減るんだ、だから自分が具合が悪くなった時いざという時に(診察を)受けてもらえる。キャパシティーが確保される可能性が出てくる」

 医療資源の確保につながるという全数把握の見直し。ただ、これは阿南氏が描く完成系ではないといいます。

 新型コロナウイルス感染症対策ADBメンバー・阿南英明医師:「いま『コロナ』と『コロナ以外』というふたくくり、世の中が。それってとても異様なことで世の中にたくさんの病気がある。その中の一つにコロナをおかないといけない」「(Q.普通の風邪やインフルエンザと同じような扱いになるのがゴール?)コロナというものも全然特性は違います。インフルエンザとも特性が違うし心筋梗塞(こうそく)とも特性は違います。だけど社会のなかの取り扱いというのは同じところに落とし込むことがゴール」

 しかし、コロナを他の病気と同じ扱いにしていくことは、すぐには実現不可能です。

 新型コロナウイルス感染症対策ADBメンバー・阿南英明医師:「例えばゴールのところにはお金の問題も絡む。今は全部無料でやっているがこれは保険診療になっていくはず。保険診療に落とし込んでいく時に自分でお金の支払いが発生します。今のコロナの抗ウイルス薬はものすごく高い。外来でもちゃんとした機関だと10万円くらいかかる。(約10万円の)3割負担になるわけですから、そういう薬を皆使っているということをちゃんと理解しなければいけない。どういう制度設計に変えていくのか。どういう支払いの形にしていくのか。こういうことを一定の時間をかけて皆で理解し納得していくことはどうしても必要」

 国民の意識の変化に合わせた段階的な制度の見直しが重要だと阿南氏は指摘します。

 今回の全数把握の見直しはその第一歩でもあるのです。

 そしてもう一つ。ゴールを目指すために国がやるべきことがあるといいます。

 新型コロナウイルス感染症対策ADBメンバー・阿南英明医師:「コロナは残念ながら消えない。これから先ずっとお付き合いをしないといけない。そうすると我々人類はコロナとどう付き合うかというと、『コロナかな?』『コロナでないかな?』ということは自分自身が判断し、自分自身で適切な行動を取っていくこと。そのなかで抗原検査キットがある。抗原検査キットという武器を最大限使えるようにしていかなければ。これは国が大きな責任を負っていると思います。何としてももっと入手しやすいように変えるべき。抗原検査キットを皆さんが当たり前に安価で安易に入手できる形を実現すべき。私は国に対しては『国家プロジェクトとして取り組んで下さい』とお願いしている」

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