「仕事は人間研究」兵頭慎治さんと日本防衛の中枢で国防を考える…小木アナ取材後記[2022/08/24 22:25]

終戦の日を迎えるにあたり『サンデーステーション』小木逸平キャスターが、日本の“防衛の中枢”を取材した。ニュースでおなじみの、あの方の職場訪問も。

■防衛の中枢で感じた「人間」

その建物は防衛省のやや奥まった場所にある。防衛省防衛研究所。どんなところなんだろうかと、ついに来てしまった。その一階には資料閲覧室なる戦史を研究する上で貴重な資料が所蔵されている場所がある。

見せていただいた「大本営発表」が実に生々しかった。8月7日のもので、広島に投下された原爆を伝える発表文なのだが、「特殊爆弾」と最初書いたものに修正の指示が出されたのだろう「特殊」の文字に二重線が引かれ「新型」と書かれている。特殊、では人心がより動揺するだろうと新型に直したもののようだ。最早それでどうにかなるものでもないのだが。

終戦の日を前に、防衛省を取材して安全保障を考える…と書くとなんだか難しそうだが、あれこれ見て感じたのは「人間」そのものだった。

自分の仕事を一言でいうと、プーチン大統領の頭の中をのぞく事なんですよ。と防衛研究所の兵頭慎治(政策研究部長)さんはいう。大統領に就任してからの20年余り、彼が何を考えているのか、論理的に分析を積み重ねてきての「まさか」が起こった。ウクライナへの侵攻だ。

人間は合理的な判断をし続けるとは限らない。正しい情報が上げられていなかったのかもしれないし、体調の問題があるのかもしれない、老いが何かを鈍らせたか固執させたか……読み切れなかったプーチン氏の判断。それがいかなる背景で行われたのか、まさに「人間研究」なのだと兵頭さんはいう。そして同じことが繰り返されないように研究しなければいけない、とその使命を語ってくれた。

防衛省には陸海空の自衛隊員が暮らす隊舎もある。食堂では“食にうるさい”という隊員の皆さんが担当の自衛官が作った食事に舌鼓を打つ。聞くと上官はどんな状況でも隊員が食事と睡眠をとれるように気を配るそうだ。最近よく兵站なんて言葉を聞くようになったが、いざというときに人が動けなくては意味がないのだ。

国防の最前線にいるのももちろん人間。地域の運命を変えてしまうような判断も結局は人間がするもの。戦争の惨禍を繰り返さないように、正しい情報を把握し人間の理性・知性を発揮したいものだ。兵頭さんの「知ることが超えることにつながるんです」という言葉が心に染みた。

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