厄介者を有効活用!牛糞を燃料に 排ガスを“メタネーション”の可能性【SDGs】[2022/09/22 23:30]

そのゲップで、温室効果ガス・メタンを排出してしまうことから、いま、何かと嫌われてしまっている“牛”。しかし、北海道の小さな町で、牛のあるものを利用した新たなエネルギー開発が進められていました。

酪農の町・鹿追町と民間企業が一緒になって作った国内初の牛の糞尿を原料とした水素エネルギー。毎日、約1300頭分、100トンの糞尿が集められると、発酵槽と呼ばれるドームの中で、38度で温められます。すると、糞尿中に含まれる微生物が分解を促進。発酵が進むことで生まれるバイオガスが発生します。そのバイオガスを水蒸気と反応させて、水素を製造します。

現在、1日の製造量は約150キロ。燃料電池車30台を満タンにする量が製造可能だといいます。そこで町は、公用車10台を燃料電池車に変更。酪農の町が牛の糞尿で、カーボンニュートラルに挑んでいます。

神奈川県小田原市の清掃工場では、地球温暖化の原因である“二酸化炭素”を活用した世界初の研究が行われていました。
日立造船環境事業・大地佐智子理事:「こちら排ガスから天然ガスを作り出すメタネーション施設になります」

この施設で行われているのは“メタネーション”という、いま、注目の環境負荷の低いエネルギー製造法。温室効果ガスである二酸化炭素に水素を結合させることで、牛のゲップと同じメタンを作る技術です。

実は、メタンは空気中に放出されると、地球温暖化の原因となる嫌われ者となりますが、温度、濃度などを管理して製造すると、家庭で使う都市ガスの原料となります。

1911年にフランスの化学者、ポール・サバティエが発見したというメタンガス製造法“メタネーション”。ようやく今年、世界で初めて、実際のゴミ処理場での実証実験に成功しました。

清掃工場の煙突から分岐する太いパイプ。排ガスは、約300メートルあるパイプの中を通り、清掃工場の裏手にあるメタネーション施設へと送られていきます。そして、施設の中で水素と合成され、都市ガスの原料であるメタンに生まれ変わります。
日立造船環境事業・大地佐智子理事:「大体2600世帯分のガスを供給できるような設備になっています」


厄介者の二酸化炭素を再利用することから“カーボンリサイクル”とも呼ばれるメタネーション技術。資源エネルギー庁では、2050年までにガス全体の90%をメタネーションで作った合成メタンにすることを目標に設定しています。

また、2025年の大阪・関西万博では、大阪の企業が開発したメタネーション技術が、実際にテスト運用される予定だといいます。
日立造船環境事業・大地佐智子理事:「メタネーションのいいところは、今ある都市ガスとか、例えばプロパンガス、 そういったインフラがそのまま使えるというのが一番大きなメリット」

都市ガスの主成分であるメタンは、日本中を走るガス管や、ガスホルダー、さらには、タンカーもそのまま使うことができます。そのため、将来的には、海外へ日本産メタンの輸出をすることも夢ではありません。
日立造船環境事業・大地佐智子理事:「エネルギーを日本はほとんどを輸入している。国の中にあるもので、どうにかエネルギーを作っていく。上手く使っていくという発想が、すごく大事になってくると思う」

こちらも読まれています