日本発!雨でも発電可能な“曲がる”太陽電池で「都市全体を発電所に」[2022/10/09 23:30]

今年も各分野で発表が続いているノーベル賞、その次なる候補と呼ばれる発明がこちらです。
名刺ほどの大きさで曲がる素材なんですがモーターに繋いでみると…(プロペラが回りますね)
実は次世代の太陽電池なんです。
発明者から原料までメイドインジャパンです。

▽“都市全体が発電所に“ノーベル賞級の発明
そこでは、これまでの常識を覆す、最先端の研究が行われていました。
(桐蔭横浜大学 宮坂力特任教授)「出来上がりです。10分もかからないで出来あがります。スピードが速いっていうことは生産コストも下がってきます。最終的にはシリコン(太陽光パネル)の半額位にはなると思います」
こう話すのは、この太陽電池の産みの親、宮坂力教授。
「ペロブスカイト」という、この太陽電池の特徴は、極めて薄く、軽量で柔軟なこと。さらに…
(桐蔭横浜大学 宮坂力特任教授)「これはペロブスカイトの薄膜をインクジェットプリンターを使って印刷で作るという新しい装置なんです。色々なロゴとかパターンとか絵とか印刷したものが発電する」
そのデザインさえも、自由自在。しかし最大の魅力は、設置場所を選ばないこと。
(山口豊アナウンサー)「こういう風に設置できる?」
「うん」
Q. 垂直に立てても発電できる?
(桐蔭横浜大学 宮坂力特任教授)「手すりの全体を発電に使うことができますね」
従来のシリコン系太陽電池は、重量があるうえ、太陽に向ける必要がありました。
(桐蔭横浜大学 宮坂力特任教授)「ペロブスカイト太陽電池は色々な角度から入った拡散光を使いますから、ビルとか建物の壁を使う。それから光が当たっていない北の面、西の面を使う、雨の日、曇りの日も発電できます。都市全体が発電所になっていくと思いますね」
用途はアイデア次第で、建物のブラインドや車の屋根などにも設置が可能。“都市全体が発電所”になるのも、夢ではないのです。
「ツトム・ミヤサカ」
この功績が認められ、宮坂教授はノーベル賞受賞者も輩出している『ランク賞』を受賞しました。
(オックスフォード大学 ヘンリー・スネイス教授)「宮坂教授は“伝説の人”です。過去に彼と仕事をするようになって、ペロブスカイトの作り方を学んだのです」
ペロブスカイトの原料のほとんどは、輸入に頼る必要がありません。
なかでも主要な原料である「ヨウ素」は、千葉県などで天然ガスと一緒に採取されています。しかも日本は、世界第二位の生産量を誇る“ヨウ素大国”。ペロブスカイトは“純国産の太陽電池”に成りうるのです。では、開発はどこまで進んでいるのか?
こちらの企業ではある製造法を応用して巨大なペロブスカイトを作っていました。
(山口豊アナウンサー)「この奥がペロブスカイトを作っている、その研究施設ということになります。中に入ります…今、中に入りました」
(積水化学 次世代技術開発センター 森田健晴センター長)「ちょっとここは」「ここはダメですか」「ノウハウが入ってるんで…」
入室直後の“撮影禁止”。ペロブスカイトは今、各社が開発にしのぎを削る、重要機密なのです。
Q. これそうですか?
(森田健晴センター長)「ペロブスカイト太陽電池が出てきていますね」
Q. 結構大きいですね?
(森田健晴センター長)「そうですね、30cm幅になっています。」
巻かれながら製造されていく、ペロブスカイト。これはフィルムの印刷技術を応用した製法でロール状になった基板を巻きながら、一連の工程を自動で行う仕組み。これにより、数百メートルものペロブスカイトが一気に作られ、低コスト化にも繋がると言います。しかし…
(積水化学工業 森田健晴センター長)「ただまだ歩留まりというか良品率みたいなものはまだこれからなんです。この30cm幅での量産の目標は2025年です」
少なくとも、あと2年以上はかかるという製品化。
イギリスでは、世界最先端のペロブスカイトの開発が進んでいました。宮坂教授の視察に同行した我々は、その中枢部に入ることを許されました。
(山口豊アナウンサー)「ここがオックスフォードPVの研究施設の内部です。いま中に入ります」
湿度などが制御された、密閉空間。奥に進むと、テーブルの上にはおびただしい数の基板が積み上げられていました。
(オックスフォードPV 最高技術責任者 クリス・ケイス博士)「これはシリコンの上にペロブスカイトを組み合わせたもので、これこそ、我々が開発したものなのです」
(桐蔭横浜大学 宮坂力特任教授)「これだけの物(実験サンプル)があるっていうことは、本格的に作っている証拠ですから、これはすごいと思いますよ」
一般にシリコン系太陽電池は多くの光で発電しているものの変換効率は、最大25%。ペロブスカイトを重ねることでそれ以外の光も使うことができ、高い効率が期待できるのです。
(クリス・ケイス博士)「ここにある太陽電池は、従来のシリコン電池の可能性を超えた性能を持っています。変換効率は30%に極めて近く、さらに研究を進めれば、38%から39%になるかもしれません」
こちらの会社は、すでにドイツに大量生産ができる工場を持ち、来年早々の商品化を進めています。

さらに中国では、既に大型パネルの量産に成功し、販路を広げていました。
(大正微納 ユウ・アレンCEO)「スマートフォンや有機ELのメーカーなど、様々な会社が製品を購入しています。彼らはコンピューターや通信、家電などにペロブスカイトを利用しようとしているのです」
着々と市場を席巻していく、海外企業。

(桐蔭横浜大学 宮坂力特任教授)「日本には十分、太陽電池を作れる資源がある訳です。材料が安いだけじゃなくて、これを作る工程も安くできる町工場や中小企業でもある程度のものが作れる。まさにペロブスカイトが日本の成長を推進する良い例になってくると思います」 


10月9日『サンデーステーション』より

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