「トンネルの抜けるところがわからない方へ」自らの経験を歌に[2022/10/15 12:43]

 国内で年間の自殺者が2万人を超えるなか、自殺を思いとどまった人の経験を伝えることで抑止につながるという「パパゲーノ効果」が注目されています。自身の経験を歌にして届けている女性を取材しました。

 渕崎紅さん(39):「(当時は)生きていく意味が分からないと思っていて、なんかもう漠然と死んでしまいたいと」

 20歳のころにうつ病やパニック障害などを発症した渕崎紅さん。当時は、一日30錠以上の薬を飲み続け、体調を崩して退職に追い込まれました。

 毎日をどう過ごせばよいか分からず、自殺も考えたといいます。

 渕崎紅さん:「好きなことをやろうと思っても、やりきれない自分が生きている意味がないなって」

 苦しむ渕崎さんを変えるきっかけとなったのが、鍼灸(しんきゅう)との出会いでした。親の勧めで鍼灸治療に通い始めると、飲んでいた薬をやめることができたといいます。

 渕崎紅さん:「体が良くなった鍼灸というものを知れば、生きていけるんじゃないか」

 症状も改善し、自らも鍼灸師の道を選んだ渕崎さん。

 同じように苦しむ人を救いたいとの思いから、歌で自らの経験を伝える活動を始めました。

 「物語はいつか誰かの役に立つ」この歌のタイトルです。

 渕崎紅さん:「同じような思いを今されてる方だったりとか、暗闇でトンネルから抜けるところが分からない方とかに届けばいいなと」

 渕崎さんのように、自らの経験を歌や絵本にして届ける人たちを支援している会社があります。

 今年3月に設立された「パパゲーノ」は、自殺を踏みとどまった人の物語を伝えることで自殺の抑止につながるという「パパゲーノ効果」が会社名の由来です。

 株式会社パパゲーノ・田中康雅代表:「つらい経験が無駄ではなかったと思えたとか、そういったうれしいコメントも頂いております。着実に小さくても(活動の)輪を広げていけてるなと」

 コロナ禍の去年1年間に自殺した人の数は2万1007人に上り、女性は2年連続で増えています。

 渕崎紅さん:「きっと生きてる意味が分からないのって、やりたいことが多分できていないからかなと。素直な気持ちが伝えられるようになると、もっと生きやすくなるんじゃないかなと」

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