元刑務官「いまだに夢を」歴代大臣の葛藤 被害者は…様々な“死刑の重さ”【報ステ】[2022/11/10 23:30]

葉梨法務大臣が9日夜、法務大臣の職務について「死刑のハンコを押した時だけニュースになる地味な役職だ」などと発言し、強い批判にさらされています。

葉梨法務大臣:「法務大臣は朝、死刑のハンコを押しまして、昼のニュースのトップになるのは、そういう時だけという地味な役職」

「元法務大臣」、死刑に立ち会った「元刑務官」、死刑囚に傷付けられた「被害者」は、死刑の重さについてどう考えるのか。

オウム真理教の幹部などを含む16人への死刑を命じた当時の上川陽子法務大臣の言葉です。

上川陽子法務大臣(当時):「私としては、鏡を磨いて磨いて磨いて磨いて、そういう心構えで、慎重にも慎重な検討を重ねたうえで、死刑執行命令を発したもの」

「死刑の執行は法務大臣の命令による」と、刑事訴訟法は定めています。

ただ、それは政治家としての、人としての信条に“相反する決断”をしなければならない場合もあります。

杉浦正健法務大臣(当時):「哲学・宗教・生命に対する考え方、色々あると思う。(命令書に)私はサインしません」

江田五月法務大臣(当時):「死刑というのが欠陥を抱えた刑だと。唯一、死刑だけが法務大臣の執行指揮になっているのは、どういう意味があるのか」

法務大臣として3人の死刑を命じた小川敏夫元参院議員。死刑囚の資料を1カ月読み込んでサインをしたといいます。

小川敏夫元法務大臣:「死刑を執行することで問題あるかないか、えん罪の可能性とか。(資料を)読み込んだうえで、自分の結論を出すわけですね。(Q.『朝ハンコを押して』という発言もありましたが)そんな簡単なもんじゃない。犯罪者とはいえ、人の生命をそこで終了させるわけですから、重いものは感じますね」

“死刑の重責”を抱えるのは大臣だけではありません。

「言葉にできない経験」と話すのは、死刑施行に立ち会った元刑務官で作家の坂本敏夫さんです。

坂本敏夫さん:「運動とか入浴とか、検診したり会話をしたり、コミュニケーションをとっている刑務官たち、死刑の執行にあたるんですね。連行、首にロープをかけたり、それから手錠、足を縛ったり、絶命した後に棺おけに入れたり(死刑囚に)毎日顔を合わせている刑務官たちがやるので、彼らの心の痛みは言葉で言えない。私も退職して27年くらいになるが、いまだに時々夢を見ます」

2008年の秋葉原無差別殺傷事件で重傷を負った湯浅洋さん。加藤智大死刑囚への刑は今年、執行されましたが、意外な思いを口にしました。

湯浅洋さん:「加藤元死刑囚は、私の子どもたちと同じ世代なんです、ちょうど。あの事件さえ起こさなければ、どんな人間になって、家庭を築いたのかなと考えます。罪を起こさないで済む世の中にしてほしい。刑の執行をすること自体が殺人、法に守られていなければ。人ひとりの命を奪うことを真剣に考えないと、それが法務大臣では世の中おかしくなってくる」

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