老朽化マンション “修繕費”&“高齢化”問題…解決のヒント“管理会社の見直し”[2022/12/14 16:45]

全国にある分譲マンションは、およそ686万戸。そのうち築40年以上のマンションは116万戸です。建物の老朽化に加え、住人の高齢化で思わぬトラブルもあります。増え続ける「老朽化マンション」、その実態を追跡しました。

■修繕費用“1億円” ドアの歪み&内外壁にヒビ

千葉県某所。この日、老朽化対策の依頼を受けた、マンションコンサルタントの別所毅謙さんに同行しました。

別所さん:「建物全体の修繕工事が控えているマンションですが、資金がだいぶ厳しい」

それがこの築48年、全33戸の分譲マンション。マンションのエントランスから入っていくと…。

別所さん:「(Q.ちょっと詰まっている?)下に当たっちゃうんですね」

玄関のドアが傾いているのか、床と接触して開けにくい状態です。そして、エントランス内部の壁も…。

別所さん:「ここにヒビ割れがあって、下が濡れている。これは、どこかから水が漏れていると」

実は、外の壁にはヒビが入っている箇所があり、そこから雨水が建物の内部に染み込んでいる可能性があるといいます。

別所さん:「劣化は加速してくる。最初は大したことなくても、ある日突然、急激に悪化し始める。そうなる手前の段階で、ちゃんと直しておかないと」

多くの問題を抱えた、このマンション。修繕にかかる費用は?

別所さん:「すべてを直そうとすると、予算は1億円を超える」

■「4000万円不足」 住人の高齢化“値上げ困難”

修繕費をどうするのか?頭を抱えていたのが、管理組合の理事長・志賀明男さん(73)でした。

志賀理事長:「予算が非常に足りないので、お金が回らないというのが現状」

予算は、住人が積み立てた修繕費など、およそ6000万円。必要な1億円には「4000万円足りない」といいます。

さらに、住人の高齢化が進むことで、ある問題が…。

志賀理事長:「今、非常に悩んでいるのはバリアフリー。入り口の階段が急なので、あれも何とかしたい」「(Q.工事に向けて、(住人が支払う)修繕積立金を上げる可能性は?)それも非常に難しい。(住人から)言われているのは、『修繕費とか管理費は絶対に上げる方向でやるな』と。私も70いくつですけど、定期的な収入が年金しかないので、毎月出費が重なるというのは非常に困る」

住人の多くが年金生活の高齢者。修繕積立金の値上げは、難しいといいます。

■老朽化で…“屋上”“配管設備”にも問題

お金はないのに、老朽化は進むばかり。屋上にも重大な問題がありました。それが、この屋根の斜めになっている部分。13年前の修繕工事で十分な防水対策が行われなかったといいます。

別所さん:「雨を受ける面になってるにもかかわらず、防水材を塗っていないので。ペンキなので、雨水が染み込んでしまう。バルコニーから、そのまま部屋に侵入して、壁内にも漏水が発生してしまう」

一方、夫婦で暮らしている65歳の男性の部屋を訪ね、トイレを見せてもらうと、壁が黒くなっています。

マンション住人:「自分が8年住んでいる間に、2回(壁を)張り替えたのに、まだ黒い。今回の大規模修繕では、トイレの配管を取り換えてくれたら一番良いなと」

建物内部の配管設備も、老朽化で損傷している可能性があるといいます。

■“優先順位付け”“工事業者の選定”を提案

すでに、仕事をリタイアしているという男性。現在、月1万3300円という修繕積立金を支払っていますが、値上げは生活に大きな影響が出るといいます。

マンション住人:「もし(修繕積立金が)上がると、個人の問題だけじゃなく、住んでる人全員のことだから。でも、できるだけ高くないほうがありがたい」

そこで別所さんが提案したのが、修繕の優先順位付けと工事業者の選定です。

別所さん:「適正に見積もりを取るという作業をして、複数の工事会社に声を掛け、それぞれバラバラに値段交渉をしていく」

外壁と水漏れの修繕を最優先に進め、バリアフリーなどは検討案件とし、工事費用の見直しをするといいます。

■国交省が目安提示も…住人の“合意得られず”

修繕費の調達がうまくいかない理由は様々です。マンション管理の専門家を訪ねました。

さくら事務所 マンション管理コンサルタント・土屋輝之さん(65):「何かそういうこと(修繕)が面倒だと思っていて。『自分が亡くなってから、そういうことをやってもらいたい』ということで、賛成してくれないケースも残念ながらある」

国土交通省では、マンションの修繕積立金に関するガイドラインで、適正な積立額の目安を示していますが、既存のマンションでは、それに準じて値上げしようとしても住人の合意が得られず、難しいケースも多いといいます。

■半分以上が60歳超 “命にかかわる問題”も

さらに、「住人の高齢化」で様々なトラブルが起きていました。

都内にある、500世帯以上が暮らす、築48年の分譲マンション。

別所さん:「全体の半分以上の人が60歳を超えていて、後期高齢者も20%近くいる」

猛暑が続いた今年の夏、命にかかわる問題も起きました。

マンションの管理組合・杉森比磨副理事長(39):「(管理人さんが)窓が少し開いているところで、うめき声が聞こえるから『大丈夫ですか?』みたいな話をしたら。脱水症状で丸一日以上、水を飲んでいなくて。偶然発見されて良かったんですけど」

■“駐車代80万円”滞納 実は…3年前に死去

そんななか、こんな思わぬトラブルが起きていました。

杉森副理事長:「3年以上、動いていない状態。ちょっといたずらされて、ミラーを折られたり」

このマンションで暮らす高齢者世帯が所有しているという自動車。駐車料金およそ80万円を滞納していました。その所有者の部屋を訪ねました。

杉森副理事長:「いらっしゃらないかな〜」

この部屋に住んでいるはずの住人は、80代の女性。4年前から連絡がつかないといいます。

杉森副理事長:「電話をこちらに掛けても、掛からなくて。家族でつながる方がいるかいないか、情報を集めている」

この取材後、連絡が取れた家族によると、実は80代女性の住人は3年前に亡くなっていたといいます。

車については「同居していた息子に対応を急がせる」とのことでした。

■コロナ禍で交流減「管理面を強化している」

以前は、お祭りなどのイベントを通して住人同士のつながりを大切にしていたという、このマンション。しかし、現在は…。

マンション住人(77):「この3年、コロナ禍のおかげで祭りが止まって。3年後で年をとっちゃっているから、(高齢者の住人は)病気を持ったりしてきているじゃないですか」

住人の高齢化に加え、コロナ禍で交流が減り、所在すらはっきりとしない世帯もあるというのです。

杉森副理事長:「所在不明の住人から連絡がなくて、どこかで亡くなっていたり。そういう問題が出てくる可能性があると思うので、理事会でデータはしっかり作ってあるので、そういう管理面を強化している」

■“管理会社の見直し”で…管理費↓ 修繕積立金↑

マンションの老朽化と高齢化の問題を解決するヒントが、このマンションにありました。

マンションの管理組合・成田勲副理事長(71):「塗装も全部、外壁を塗り替えましたので、自分が住んでいるマンションが良くなった」

東京・板橋区、全37戸のこのマンション。6年前、築35年の時に外壁だけでなく、各部屋の玄関ドアなど、総額およそ2700万円かけて大規模修繕工事を行いました。

費用を捻出するため、工事の10年前(築25年)から準備を始めましたが、そんななか大きかったのが、管理会社の見直しです。

複数の会社から見積もりをとり交渉し、ほぼ業務内容は変えず2万円だった管理費を1万円に削減できました。

一方で、5000円の修繕積立金は2000円値上げできたといいます。

別所さん:「修繕積立金の値上げは、皆さん抵抗はあるんですけど、『リノベーション用の貯金をしましょう』と言うと、反応が変わってくると思う」

別所さんによると、住人一人ひとりが管理組合の運営に参加意識を持ち、専門家などの意見を活用、早めに対策を打つことが重要だといいます。

(「スーパーJチャンネル」2022年12月13日放送分より)

こちらも読まれています