豪雪地帯で深刻“除雪危機” 過疎化・高齢化・空き家問題…移住者への“高まる期待”[2023/01/22 11:00]

日本有数の豪雪地帯として知られる新潟県・津南町。住民の高齢化が進み、除雪の重労働は高齢者にとって深刻な問題となっていました。

さらに、近年急増する「空き家」問題。実際に雪の重みに耐えられず倒壊する事故も発生。一方、津南町では、新たな移住者を募る取り組みも行っています。

過疎化、高齢化が進む豪雪地帯が抱える深刻な危機を追跡しました。

■無くてはならない「灯油」…価格高騰で家計直撃

取材班が向かったのは、日本有数の豪雪地帯として知られる、新潟県の津南町です。

津南町の住民(79):「(Q.今、何をしている?)雪を消そうと思って」「(Q.ここの雪かきをしている?)そうそう、朝から」

過酷な冬の生活で、無くてはならないのが、暖房器具に使う「灯油」です。

その灯油を各家庭に配達しているのが、津南町にあるガソリンスタンド。タンクローリーで1軒1軒回っていきます。

しかし、降り積もる雪で、家までたどり着けません。そこで、タンクローリーから長いホースをつなぎ、給油タンクに灯油を注入します。

寒さのせいか、こんな光景も見られました。凍り付いた給油タンクのフタ。スコップを使って、氷を割り、何とか給油します。

住民にとって無くてはならない灯油ですが、その使い道は、暖をとるだけのものではありません。

灯油の配達を依頼した男性(69):「ほとんど屋根の融雪です。(雪が)降る時は、400リットル満タンにしても、2日間くらいで無くなってしまう」

屋根に積もった雪を溶かす「融雪装置」に、大量の灯油を消費しているのです。しかし、現在、原油価格の高騰が家計を直撃しています。

灯油の配達を依頼した男性:「1シーズン20万円〜30万円。これ(灯油タンク)を作ったばかりの時は、1リットル50円くらい。今は1Lリットル100円くらい。雪国は仕方ないです。まだ始まったばかり。これからが本番なので…」

■豪雪地帯で深刻…高齢化加速“交通手段なし”

住民を悩ませる除雪作業。町で見掛けるのは、高齢者の姿ばかりです。

65歳以上の高齢者の割合が4割を超える津南町。除雪の重労働は、高齢の人たちにとって深刻な問題です。

町のスーパーに、真剣な表情で食材を選ぶ男性の姿がありました。高倉商事の阿部政輝さん(75)です。

自分が口にするものではありません。パンや牛乳などを買い、山間部の雪道を進むこと、およそ30キロ。到着したのは、津南町と長野県栄村にまたがる地域「秋山郷」。住民からの依頼を受け、食料を配達しているのです。

阿部さんの配達を頼りにするのには、この地域が抱える“ある事情”がありました。

牛乳1本の配達を頼んだのは、89歳の女性。息子と2人で暮らしています。

津南町の住民:「父ちゃん(夫)が死んじゃったから…」「(Q.自分で買い物は難しい?)バスがない。乗り物がない…。一番、不自由なのが、買い物」

以前は、津南町の市街地から秋山郷をつなぐ路線バスがありましたが利用客が減少し、5年前に廃止されました。

津南町の住民:「頼めば持ってきてくれるから助かる」

阿部さんは、スーパーへ行く交通手段のない高齢者の生活を支えているのです。過疎化が進み、高齢者が高齢者を支えなければならない現状。阿部さん自身も限界を感じていました。

阿部さん:「もう年が年ですから。段々(体が)動かなくなる。足腰が弱ってきて…。あと3年ぐらいでやめようと思う」   

■“除雪依頼”高齢者から増加「これからも大変」

釜川除雪会・鈴木隆会長:「(Q.何をしている?)雪下ろしです。この自宅の人から頼まれて、雪下ろしをしている」

作業をしていたのは、30代から40代のメンバーを中心に集まった、除雪チーム。この日は、高齢夫婦の住む木造2階建ての雪下ろし。背丈ほど積もった雪を下していきます。

特別に、取材班も屋根に上らせてもらいました。

ディレクター:「結構、高いですね。雪も硬くて…重たいです」

近年、高齢者からの除雪依頼が増加しているといいます。

鈴木会長:「高齢の家が毎年、段々増えている。除雪をできない人が増えているので、結構大変かな、これからも…」

■豪雪で危険 “空き家”増加 深刻な問題に…

次に向かった家は、よく見ると、軒先が折れてしまっています。実は…。

釜川除雪会・鈴木和人さん:「空き家になっていて、『雪下ろしをやってくれないか』と」

今、こうした空き家が雪の時期に深刻な問題となっているというのです。一体、どういうことなのか?

この家の除雪を依頼した家主の男性に、話を聞くことができました。

飯田一郎さん(47):「新潟市のほうに出てきてしまっている。両親とも亡くなってしまい、今は空き家になってます」

両親の死後、およそ3年前から空き家の状態に…。それでも家を守るため、除雪作業を依頼しているのだといいます。

飯田さん:「自宅を雪から守り、どうしても維持するために…やっぱり生まれ育った所なので。 取り壊してしまうと(将来的に)津南町に帰れなくなってしまうので」

■移住を考えている人に 「空き家バンク」試み

津南町では、空き家の数が年々増加しています。

津南町の住民:「空き家で雪下ろしを頼んでない家だと、屋根のほうからグチャグチャと崩れてきて…」

去年、放置された雪の重みに耐えきれず、倒壊した空き家。適切な除雪が出来ていない空き家も多く、近隣の住宅や通行人に被害が及ぶ危険があるのです。

そこで津南町は、移住を考えている人に空き家を利用してもらう、「空き家バンク」という試みを始めました。

津南町観光地域づくり課・照井麻美さん:「去年は半年で3、4件はご成約頂いている。(移住者が)多くはなってきてる」

■過疎化・高齢化・空き家問題…移住者に高まる期待

津南町でカフェを営む女性。5年前、家族4人で東京から移住してきました。

ジャックマン秋山望さん(41):「サツマイモとカボチャのポタージュです」

始めたカフェも町に溶け込み、今では住民の憩いの場となっています。店の営業を終え、自宅に案内してもらいました。

秋山さん:「この壁を全部はがして、壁紙を貼り替えました」

津南町では、空き家への移住者に対し、補助金を交付。改修にかかる費用の一部を町が負担しています。

秋山さん:「やっぱり、冬は寒いのが現状だったので、結構きつかったが。津南の人たちってすごくいい人たちばかりで、話していると楽しいです」

地域が抱える深刻な過疎化と高齢化。そして、雪による倒壊の危険をはらむ空き家問題。移住者への期待は高まっています。

照井さん:「雪国は住みにくいなと思っている人もいるが。移住者の人が来て頂けるような町作りや、住み続けて頂けるような町づくり・地域づくりを心掛けている」

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