「がんの主治医は自分」秋野暢子さん がんを患って…いま、伝えたいこと[2023/01/25 12:20]

2022年6月にステージ3の食道がんが判明した女優の秋野暢子さん(66)。4カ月半に及ぶ闘病生活を乗り越え、およそ半年ぶりに仕事を再開した。がんを患って気づいたこと、向き合い方など、テレビ朝日の大下容子アナウンサーが話を聞いた。

■秋野さん不安なく「こんなことで死なない」

闘病中、強い痛みに襲われても秋野さんは、常に前向きだった。

大下アナ(以下、大下)
「秋野さんは抗がん剤・放射線治療の始まる前に髪の毛を剃られましたよね。あれはどういう理由で?」

秋野さん(以下、秋野)
「髪の毛ってやっぱ抜けると、枕とか病室とかに散らばったりして。私は髪の毛が落ちていると気になるタイプなんで。どうせ抜けるんだったらと剃っちゃったんです、自分で」

大下
「私の知り合いでも今、がんの治療中の方がいまして。やっぱり、自分の体の違和感の正体が分かるまでがすごくしんどかったっていうふうにおっしゃってて。秋野さんもそういうところありましたか?」

秋野
「そうですね。何だろうな…不安っていう感覚は私の中には、ないのかもしれません。欠落してるのかな。今回のことも、ステージ3の食道がんというと結構シビアだと思うんですけど。私としては「いやいやこれ治る治る」と思っていたし「こんなことで死なない」と思っていたんです」

■秋野さん強さの理由「根拠のない過信って大事」

がんを宣告されても動揺することはなく、治ることだけを考えていた秋野さん。この強さはどこからくるものなのか?40年来の仲である女優の萬田久子さんは、秋野さんの強さをむしろ気に掛けていた。

萬田さん
「イメージでは強い女性っていうのは、あるでしょうね。涙なんか見せないっていう感じがありますもんね。でも、病っていうのはかなり人間を、もろくというか… 心細くなったことはあると思いますよね。損ですよね、何でもできすぎちゃうんですよね。隙があるくせに隙がないと思われちゃう。なんでもできちゃうっていう…それに応えようとしちゃうんでしょうね、きっと。頑張っている秋野さんを見れば見るほど、私は、そんなに頑張らなくてもいいのにって」

大下
「(萬田さんは)ちょっと頑張り過ぎるのじゃないかと…隙がないと皆に思われてるんじゃないかっていうふうにおっしゃってましたけれども、いかがですか?」

秋野
「でも本当にそれは、なんだろうな…大丈夫だって思っていくってすごく大事なような気がしてます。病は気からといいます。そればかりではありませんけど、でも昔から言われてる言葉だし、そういうこともあるような気がするので、気持ち気持ちみたいな。ここで下手したらだめ、気持ち気待ち、頭持ち上げてっていうふうに感じていたことは事実です。くよくよして悔やんで泣いてても、がんは良くならないので。だったら、笑っていようと。絶対治るっていうこの根拠のない過信。いやこれって大事だなって思うんですね」

秋野さんの強さの理由。それは、闘病生活で自分にできることが限られるなか、がんに勝つ確率がわずかでも上がればと、自らを奮い立たせていたことだった。

■週1でヨガ 週2でジム トレーニング継続

がんとの戦いが始まって3カ月半後、その影はなくなった。

大下
「5つのがんが見えなくなったっていうことを、お医者様から言われた時はどんな気持ちでしたか?」

秋野
「抗がん剤、効いたんだなと思って。先生も驚いてらっしゃいましたね」

大下
「先生からも『普段、運動をされてたことが、いいふうに作用したのではないか』というお話があったそうですね」

秋野
「病というのは、体力がなくなっちゃう、気力がなくなっちゃう、これが一番良くない。『秋野さんはずっと運動してきたから、それがきっと良かったと思います』と。まあ、私自身の頑張りも当然あったとは思うんですけど。本当に医療従事者の皆さん、看護師さんもそうですし、本当に良くしていただいたんで、そこはもう大きな感謝ですね。先生に言わせると、再発みたいなことって五分五分だと。『退院しても、トレーニングをちゃんとやって下さいね』って言われました。だから、歩いたり、筋トレしたり、ヨガをやったり、色んな運動をしています。次、再発した時に抗がん剤の治療というのは、体力ある人にしかできないし、体力のある人の方が効く。手術もそうですね。だから、とにかく体力を回復するためにトレーニングをちゃんとして下さいって」

大下
「どれぐらいの頻度で(運動を)?」

秋野
「今、大体、週に1回ヨガに行き、ジムに週2回ぐらい行って、泳いだりして」

■秋野さん「がんの主治医は自分」 丸投げせず…

秋野さんは、このインタビューの2日前に検査を行ったが、がんは消えたままで再発はなかったという。

大下
「がんを経験されてご自分の中で、考え方が変わったなっていうところは何かありますか?」

秋野
「たくさんありますが、例えばこうやって話ができる、物を食べる、飲む、起き上がる、歩く。これって普通に皆できることですよね。当たり前のことで、それが生活ですから。ところが、病を得るという言葉があるらしいんですが、病気になってみて、これ全部奇跡なんだと思えるようになりました。1日1日を大事にって、ずっと思ってましたけど、いや、本当に思ってたかなって今は思います」

当たり前の日常をかみしめながら、生きているという秋野さん。他にもがんを患ったことでがんとの向きあい方に気付きがあったという。

大下
「日本人の2人に1人ががんを経験すると言われています。今、実際に治療中の方も、きょうの秋野さんの話を聞いてらっしゃると思いますし、ご家族だったり知り合いがという方も、たくさんいらっしゃると思います。秋野さんから伝えたいことって、どんなことがありますでしょうか?」

秋野
「そうですね…まず、皆、自分はがんにならないと思ってます。私もそうでした。でも、突然やってきます。災害みたいなものです。自分がもしがんになってしまったら、それは悲観せず、しょうがないです…なってしまったものは。だから、いかに自分がそれに立ち向かっていくか。がんの主治医は自分です。ドクターはあくまでもサポーターだと思って、先生に丸投げしない。自分で考えて治療していくっていうこと…私が今、がんと戦っている皆さんに、こうした方がいいかもしれないなと思うことは、そういうことです」

大下
「そうですね」

秋野
「がんになっても人は亡くなりますが、がんにならなくても人は亡くなります。じゃあ、いつ自分の人生が終わるっていう時が来るか分からないけど、その時に自分が納得してるかどうかって、後悔してないかどうかってすごく大事だと思うんです。私は後悔しない方法を選びました。これでひょっとしたら、あした死んじゃうかもしれないけど。それでも私は、自分で選んだ道が自分にとって正解だったと思っているので。そういうふうに自分の人生の決め方を皆さんが納得して選ばれるといいと思います」

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