予報士のつぶやき「“最強寒波”JPCZ観測に密着」[2023/02/08 14:34]

◆JPCZ解明へ 荒れ狂う日本海へ

JPCZ=日本海寒帯気団収束帯、冬に日本海で発生する帯状の雲のことで、
日本海側に大雪をもたらす原因の一つです。

先月、10年に一度と言われるような強烈な寒波が日本に襲来する中、
気象や海洋の専門家、気象を研究する学生がJPCZ直下の日本海へ。
報道ステーションの片野D(ディレクター)も同行しました。
過酷な観測作業、実際の映像は文末にリンクをはっていますので、ぜひご覧ください。


◆観測するのは「大気のデータ」と「海水温のデータ」

「大気のデータ」は、風船を打ち上げて観測。
風船にはセンサーが取り付けられていて、気温や湿度、風向風速を観測することができます。

風船を打ち上げる、という単純な作業に思えますが、
海は大荒れ、船の傾きは40度を超えるような過酷な状況。
映像を見ても、いかに大変な作業かわかります。

JPCZ直下の観測は、昼夜関係なく1時間ごとに36時間連続で行われたそうです。
片野Dによると「観測チームは6時間毎に交替するのですが、取材は僕1人なので交代要員がいなかったのが失敗でした。」とのこと。
眠いピークの時間帯は、観測したら部屋で10分くらい寝てまた観測、というのを延々繰り返したそうです。
なんとしても観測を撮り続ける片野Dのタフさ…話を聞いて大変驚かされました。

観測の結果、雪雲の高さは5kmを超え、平均的な雪雲の2倍以上の高さまで発達していたことがわかったとのことです。


「海水温のデータ」は、センサーを海へ投下して観測。
最大水深1850mまで水温や塩分濃度などを観測します。

観測の結果、12℃以上の暖かい海水温が水深100m以上も続いていたそうです。
通常、海水がかき混ぜられることで表面の水温は下がっていきますが、
暖かい水が深くまで達していたため、雪雲にエネルギーを供給し続けた可能性があります。

さらに、JPCZを強める新たな要因も見えてきたそうです。
「極前線」と呼ばれる、海水温が急激に変化している場所があり、
JPCZを強める可能性があるとのことです。
文末のリンクから見ることができる映像では、CGでわかりやすく解説されています。


◆気象を研究する学生も同行

今回の密着取材、研究者だけでなく同行した学生にもスポットが当てられています。
このような観測船に乗ることが初めての学生もいて、船酔いとの闘いも大変だった様子。
学生達が奮闘する場面も見所です。

「自分が普段使っているデータの観測の現場がこんなに過酷だとは思わなかった…」
これは、ある学生が言っていた言葉。この言葉には、気象予報士として胸をつかれました。
観測データは、数値予報のコンピューター計算の出発点になるもの。
普段、予報に使っているデータも正確な観測データがなければ得られません。
観測データの重要性、あらためて認識することができました。

◆「観測」への執念 JPCZ研究の最前線は必見

気象学は「地道な」学問ですが、「観測」データに基づいて進歩します。
気象予報のためには、「観測」を続けることが大事。
取材映像からは、教授、学生、船員、そして片野Dの「観測」に対する執念を感じます。
気象関係者はもちろん、一般の方にもぜひご覧頂きたいと思います。

テレビ朝日気象デスク 山口晃平

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