除雪後の「雪」 深刻な「その後」 北海道ならでは“処理方法”…“マンゴー栽培”も[2023/02/19 17:00]

雪国の住民を悩ます除雪問題。除雪後に道路脇に作られた“雪の壁”は交通トラブルの一因に…。また、川に捨てると、冠水・浸水被害が発生する可能性もあります。

では、除雪した後の雪はどこへ行くのか。取材を進めると、地下の“巨大滑り台”や、25メートルの山など、北海道ならではの処理方法がありました。

さらに、除雪した後の雪を有効利用し、なんと、真冬の北海道でマンゴー栽培まで。除雪した後の雪の行方を追跡しました。

■まさか横から…“雪の壁”の恐怖

3年ぶりに会場を設けて開催された「さっぽろ雪まつり」。その一方で、札幌市の住民は降り積もる雪に頭を抱えていました。

札幌市の住民(71):「1月2日からずーっと降りっぱなし…。きょうはこのぐらいだから、まだいいんだけど。10センチ、20センチぐらい降ったらね、大変なんてもんじゃないよ…」

ひと冬で5メートル近くもの雪が降る、世界有数の豪雪都市・札幌。生活を守るには除雪作業が欠かせません。

ところが、除雪によって、道の両側には“雪の壁”が形成されてしまっているのです。

札幌市の住民(80代):「道路脇にだんだん(雪が)出ていく。やっぱり、捨て場所がないから、歩道のほうに(雪を)投げてしまう」

去年、記録的な大雪に見舞われた札幌市内の様子です。除雪された後の雪が車道に大きくせり出し、至る所で渋滞が発生。物流が滞るなど、深刻な事態となりました。

そして、この“雪の壁”には、「交通事故につながりかねない」危険も潜んでいます。

札幌市の住民(55):「ここから大きい交差点に出る時には、すごく見づらいんですよ、この位置だと。もう、目隠し状態で(車の)鼻を出して調整しながら、本当に車が来ないなと思った時に出る」

新潟県内で撮影された“恐怖の瞬間”。雪道を進んでいると、交差点で青い車が雪の影から突如現れました。撮影者は慌ててブレーキを踏み、間一髪、衝突は免れました。

撮影者:「まさか、横から出てくるとは思わず。こちらもハンドルを切って、(衝突まで)ギリギリ5センチくらい…車が出てくるまでは、全然見えなかった」

■除雪した“雪”…深刻な「その後」

危険な“雪の壁”にならないように、「別の場所」に捨ててはいけないのでしょうか?札幌市内では、こんな注意書きがありました。

「川に雪を捨てないで下さい」って一体、なぜ?

2年前、100年以上前から続く老舗酒造会社の酒蔵が水浸しとなった映像です。実は、その原因が、大量の雪を用水路に捨てたことによって詰まってしまい、水があふれたとみられています。

猪又酒造 猪又順子さん:「大量に雪が降りすぎて、(用水路に)雪を一度に入れすぎたせいかもしれないのですが、水があふれて川のようになって、酒蔵のほうにも入ってきた」「過去に経験が全くなかったんですけども、水がチョロチョロ入ってきたなと思ったら、あっという間に水量がどんどん増えて、慌てましたね…」

札幌市雪対策室事業課 井上実課長:「川に雪を入れると川が詰まってしまい、実際に水があふれた事故も起きておりまして。川には雪を入れないで頂きたいとお願いしております」

川に捨てると水があふれる危険があるため、道路脇などに集めるしかないということ。とはいえ、放っておけば危険な“雪の壁”になります。

その後、この雪はどうなるのでしょうか。

たまった雪は、札幌市の委託を受けた民間業者が別の場所へと運びます。市の中心部にある建物に次から次へとトラックがやってきて、雪を捨てていきます。

穴の中へと吸い込まれる雪。一体、どこへ?

建物内部の地下施設に案内してもらうと、地下には開けた空間、そして、“巨大な滑り台”のようなものがあります。すると、猛スピードで雪が滑り落ち、勢いよく流されていきます。

これは、一体?

札幌市雪対策室事業課 井上実課長:「道路から運び出した雪をダンプで持ってきて、それをこちらで溶かす施設になります。下水の処理水を利用していて、温度が13℃、14℃くらいありますので、その熱で雪を溶かしている。(市の中心地から)近くの施設に持っていくことで、効率よく排雪ができる」

しかし、このような処理ができる雪は“ほんの一部”だといいます。

では、大部分の雪は、どこへ?

トラックの後を追ってみると、たどり着いたのは“巨大な雪山”。この場所の正体とは!?

■市内に80カ所!?“巨大な雪山”

丸彦渡辺建設 西里渉さん:「(Q.トラックがいっぱい入っているが、ここは?)ここは札幌市中の雪を搬入する『雪堆積場』です」「(Q.高さは、どのぐらいある?)今のところ20〜25メートル」

雪山の正体は「堆積場」と呼ばれる、いわば“雪捨て場”です。10万平方メートルという広大な敷地に、最大250万トンもの雪をためることができるといいます。

こうした「堆積場」はこれまで札幌市内に75カ所ありましたが、去年の大雪を受け、今年は80カ所に拡大。

西里さん:「雪の受け入れは3月31日で終わり、大体7月半ばまで雪が解け残る」

札幌市雪対策室事業課 井上実課長:「やはり排雪というのは作業も手間もかかるし、お金もかかる作業で、頻繁に行うことはできないものですから。雪を処理するというのは、非常に大きな問題ではあります」

除雪で集めた雪を処理するには、多くの費用と労力が。何とかこの雪を活用する方法はないのか。画期的な取り組みも始まっています。

■雪を利用し…“南国フルーツ”栽培

北海道の十勝平野の中心に位置する音更町。農家のハウス内で栽培されていたのはなんと、なんと「マンゴー」です。

ノラワークスジャパン 中川裕之代表:「うちは南国のマンゴーを作っています」「(Q.北海道でマンゴーを作っている?)はい、そうです。冬に降った雪をエネルギーとして使って…」

その名も「白銀の太陽」。北海道で栽培され、しかも冬に出荷というのも驚きですが、それを可能にしているのが雪だというのです。一体、どういうことなのでしょう。

マンゴーの木が大きな実をつけるには、一定期間涼しい環境に置くことが必要です。真冬の12月に収穫するには、夏の間、ハウスを冷やさなければいけません。

中川代表:「ここが雪氷庫といって、11トンダンプで約880台の雪が入る施設です。ハウスの中を冷やすために雪を集めている」

除雪された雪で水を冷やし、循環させることで、夏のハウス内を涼しくしていたのです。逆に、温かさが必要な収穫時期の冬は「湧き出る温泉」を利用することで、26度以上をキープ。光熱費がほとんどかからないため、コスト削減にもつながっています。

雪を利用することで、マンゴーの一大産地、宮崎県が収穫できない真冬に出荷することを可能にしたのです。

真冬に食べられるマンゴーは価値を呼び、1個3万円以上の値が付くこともあります。

中川代表:「わざわざ捨てなきゃならない雪をどうやって活用するかって…。雪国らしい何か対策を取ることのほうが、先決じゃないかなって僕は思うんですよね」

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