社会

2023年3月11日 09:00

【あなたを守る防災】「地震」 気象予報士が見た地震の“現場”【予報士のつぶやき】

【あなたを守る防災】「地震」 気象予報士が見た地震の“現場”【予報士のつぶやき】
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地震大国といわれる日本。甚大な被害を出したのは東日本大震災だけではありません。
今回は2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震を当時ラジオの記者として
取材した経験から、気象予報士の視点を踏まえて防災を考えます。
地震は突発的という意味で気象災害とは決定的な違いがありました。

■突然の交通麻痺
2018年9月6日午前3時7分、胆振地方中東部を震源とするマグニチュード 6.7の地震が発生し、北海道厚真町で震度7、安平町、むかわ町で震度6強を観測。地震の直後に北海道は全域で停電となりました。
東京・羽田空港から現場に向かおうとするも震源地に近い新千歳空港は終日欠航、北海道便のカウンターが大混乱する中、昼過ぎになんとか旭川空港に到着することができました。

旭川空港内の照明はついていたものの、エレベーターは動かず電気が通っているのは一部のみという状況。国内線のチケットカウンターは大混雑で長蛇の列ができていました。
本来新千歳空港を利用する予定の人が多く、仕事の都合でどうしても東京に戻らなければいけないと、困り果てている人もいました。
台風や大雪でも空の便は乱れますが、地震の場合は突然のことでなすすべがありません。

旭川空港から200km離れた震源地へ車で向かうと、今までにない光景を目の当たりにします。
停電の影響で旭川市など市街地でも信号はつかず、警察や迷彩服を着た自衛隊員が旗を持ち交通誘導を行っていました。
すべての交差点を対応することはできず、タイミングを見て思い切って入っていかないといつまでも進めない場所もあり、道中多くの事故を目にしています。
電車やバスが使えないため交通はタクシーと自家用車のみになります。
数少ない営業しているガソリンスタンドには30台以上の車の列ができていました。

停電の影響で街灯も家の明かりもつかず、日が暮れると幹線道路も山道のように真っ暗な状況となります。

■保存食の大切さ
北海道内の街を見ても商店はシャッターを閉め、大型ホームセンターもスーパーもコンビニも店内は真っ暗。
そんな中、営業しているコンビニを一軒だけ見つけ取材すると、一人の店員が電卓で会計をしていました。
ただ、菓子パンやおにぎりはすでになく、水やお茶、ジュースも売り切れ。残っているのはお酒くらいです。物流がマヒしているため今後の営業目途も立てられない状況です。

午後7時ごろに震度6強を観測した安平町に到着。
公民館に開設された避難所には発電機が音を立てて稼働していました。
大地震発生当日の避難所には意外にも多くの食料がありました。
冷蔵庫が使えなくなってしまったため、近隣の住民が避難所に持ち寄って提供していたからです。ただ、翌日以降の食料や水が足りるか不安に思う声が聞かれました。

電気がなくても食べられる保存食というのは大切です。
冷蔵庫、冷凍庫、炊飯器、電子レンジが使えない中で家の食料が何日もつか考えてみてください。停電は自宅のみならずお店の営業も困難になり、営業できた店があったとしてもあっという間に食料も水もなくなります。
命に直結する水や保存食、赤ちゃんがいるご家庭は液体ミルクなども備えておきましょう。

■電気が使えない暮らし 暑さや寒さ対策を
発電機による電気の供給は不安定で建物内の明かりはついたり消えたりを繰り返します。
日常生活が失われた中の暗闇は強い恐怖を感じます。テレビから情報を得ることもできません。
電気がなくても明かりがとれること、ラジオなどでの情報収集、スマホのバッテリーの準備は実用性だけでなく気持ちの安定にもつながります。

胆振東部地震は暑さが落ち着いてきた9月に発生。
これがもし真冬や真夏に起きていたら凍死や熱中症による死者が大幅に増加することが考えられます。
今シーズンの冬、北海道内では-30度以下を相次いで観測、札幌でも-10度以下の冷え込みの日もありました。
停電時、エアコン、電気ストーブ、床暖房など、多くの暖房機器は使えなくなります。
寒冷地にお住まいの方は石油ストーブやカセットガスストーブなどで暖をとれる準備をしておいてください。慣れない暖房器具は一酸化炭素中毒などの事故の危険性もあるので、事前に試しておくことも大切です。
また、真夏の場合はエアコンが使えず熱中症の危険度が高まります。
電気なしで涼をとることは難しい分、水が重要となり、濡れタオルで体を冷やす、水分と塩分補給を心がけるといったことが必要です。停電と同時に断水が起こることも多いため、水は多めに備えておきましょう。

台風などの災害が予想されている場合はお風呂の水をためておくと、生活用水や体を冷やすことにも使えるのでとても有効です。

■大規模土砂災害、長引く避難生活
地震発生翌日、震度7を観測した厚真町に向かい土砂災害の現実を目の当たりにしました。
大規模なものは山頂付近から山ごとくずれ、土砂は何本もの木を根こそぎ裾野まで運び、その下にある民家を巻き込み道路を超えて畑に流れ込んでいました。
道路沿いには電線や電柱も倒れていて勢いよく崩れた様子がわかります。
厚真町付近では土砂崩れが多数起きていて、民家の一歩手前まで土砂が迫っている所もありました。

地震が発生すると大雨警報の基準が引き下げられ、気象情報では
「少しの雨でも警戒してください」
と呼びかけます。

ただ、私が見た現場は崖がひび割れ、崩れかけているもののあり、雨が降らなくても崩れそうな様子でした。
二次災害は防ぐことができます。しばらくは安心せずに避難所に移動するなど崖や山など危険な場所からは離れて過ごしましょう。

ただ、避難所では長引くほど新たなストレスが浮き彫りとなります。
お風呂に入りたい、小さい子どもが環境に慣れずに泣き続けている、携帯が充電できず家族との連絡や情報収集ができない、また、勉強ができずに不安を募らせている受験生もいました。
個々の状況によって避難先で必要なものは変わってきます。
防災においては避難所での生活を想像することも大切です。

予想されていない台風が突然日本を襲うことはありません。
ただ、地震は突発的で新たな大地震はきょう発生する可能性もあります。
非常食や長期保存できる水、ラジオ、懐中電灯、バッテリーなどは常に備えておきましょう。

また、気象災害においてはプラスアルファで備えることができます。
大雨、大雪、台風などが予想されている場合はお風呂の水をためる、ガソリンを満タンにする、予定を変更するといった準備が大切です。

テレビ朝日気象デスク 佐藤圭一

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