津波16m被害想定に見直しで…9m“避難タワー” 使用中止に 地元困惑[2023/03/11 15:35]

 私たちは東日本大震災の経験を、防災として未来へつなげていかなくてはなりません。しかし、ここにきて避難計画の見直しを余儀なくされた地域もあります。その1つが岩手県久慈市です。

 見直しが必要になったのは、避難タワーです。2016年におよそ1億5000万円かけて完成しました。スロープもあり足腰の弱い人や車いすでも上りやすくなっています。すぐ隣には階段もあります。タワーの上までは50段ほどとなっています。タワーの高さはおよそ9メートルほどとなっています。

 久慈市役所によると、東日本大震災の際、この近辺では2メートルほどの津波がきたということで、その被害を考えるとこの避難タワーは十分な高さがあると言えます。タワーの上から、すぐ近くに海を見ることができます。

 ところが、この避難タワーは津波からの避難場所としては使えなくなってしまいました。地元の人からは不安の声が上がっています。

 久慈湊地区自主防災連合会・七十刈清明会長:「ここは危険であると判断されて、避難タワーとしては役目を果たしていないというようなことですので、大変、地元としては不安に思っています」

 海に面した久慈市湊地区は、震災で津波に襲われ、建物などに被害が出ました。

 この時、住民は近くの高台にある神社に避難。そこで辛うじて、難を逃れたといいます。しかし…。

 久慈湊地区自主防災連合会・七十刈清明会長:「金刀比羅神社には普段の人でもなかなか上がれない。急な階段等で上がれない状態。(避難に)あまり適さない場所」

 そこにあるのは、159段もの階段。

 久慈湊地区自主防災連合会・七十刈清明会長:「足、がくがくだ」

 震災後、地元が要望し、高さ9メートルの津波避難タワーが整備されました。ところが…。

 岸田総理大臣:「最大クラスの地震津波を想定した基本計画の変更を決定」

 今後、日本海溝周辺でマグニチュード9クラスの地震が発生した場合、久慈市には最大16メートルもの津波が到達すると想定され、これによって市は避難タワーの使用中止を余儀なくされたのです。

 久慈湊地区自主防災連合会・久住徳良さん:「年寄りが多いんですね、高齢者が。その人たちをどのように避難させたらよいのか」

 実は、こうしたケースは久慈市に限ったことではありませんでした。

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