【報ステ】4カ月の南極同行取材終え「小説読み終えた感覚」観測船『しらせ』帰路へ[2023/03/20 23:30]

南極観測隊に同行取材している報道ステーションのスタッフは、3カ月過ごした南極を離れ、帰途につきました。

吉田遥ディレクター:「昭和基地ありがとうございました。頑張れー」

これまで南極の氷がどれくらい解けているのかを調査してきた観測隊。帰国前に立ち寄ったのは、南極の東側で最大級を誇る氷河『トッテン氷河』です。

テレビ朝日記者・カメラマン、神山晃平さん:「この海との境目にある白い氷の大地、これすべてがトッテン氷河になります。東南極最大級の氷河です」

近年、研究者の間で、次に大規模な氷が解けて崩壊をするのは、このトッテン氷河だと言われています。

東京海洋大学海洋資源環境学部・溝端浩平准教授:「今までは南極の東側は(氷が)減らないと言われていたのに、ここ最近、急に減少してきている傾向が見えてきている。海洋の暖水が(氷河の)底面を解かしている」

これまでの調査で、氷が解ける原因は、南極大陸から突き出した氷の下に温かい海流が流れ込み、氷の裏側を解かしていることが分かってきました。もしトッテン氷河が全て解け出てしまうと、地球の海面を約4メートルも上昇させると言います。

しかし、温かい海水が、いつ・どのくらい・どのように運ばれているのかはいまだ解明されていません。そこで、行ったのは海水の調査です。海水の水温や塩分を調べることで、南極の氷がどのくらい解け出たのかが分かるといいます。

気温マイナス10度を下回るなか、海水を何度も何度も採取。さらに、棚氷の下を解かす暖かい海水が、どのような経路を辿ってくるのかを調べるために重要なのが、海底地形の調査です。海底に音波を当てることで、地形を観測していきます。

第64次南極観測隊・藤井昌和さん:「過去は、ここまで棚氷のふちが来ていた。でも今年は、この棚氷がここまで後退した。今年はここまで調査できるということで、きょう実施している」

今回の調査では、3年前より15キロもトッテン氷河の近くまで南極観測船『しらせ』を近付けて、海底の地形を調査することができました。しかし裏を返せば、3年前に比べて、海に突き出した氷が15キロも解けて流れだしたということです。

藤井昌和さん:「毎年来て、今年はどうなっているのかを、まずは船を運んで観察してから、できる観測をやって帰るということを地道に続けないと、本当にいつ何が起こるか分からないですし、急に変動するかもしれないので、地道に継続しながら貴重なデータをとっていくことが重要」

トッテン氷河での観測は2週間ほど続きました。


【“南極”調査で見えたこと】

『しらせ』に同行取材している吉田遥ディレクターと中継を結びます。

(Q.現在はどこにいますか?)

吉田遥ディレクター:「私たち観測隊は、20日朝にオーストラリア・フリマントル港に入港し、夕方に上陸許可が出ました。久しぶりに街を歩いていると、南極にはにおいがありませんでしたが、街にはにおいがあることを感じています。数日前までは南極の冷たくて鋭い風にさらされてきましたが、今こうして暖かい空気に触れて、少し安心しています」


(Q.日本を出発して4カ月。観測隊を同行取材してどう感じましたか?)

吉田遥ディレクター:「振り返ってみると、過酷な場面も多々ありました。しらせはオレンジ色の船体が特徴的ですが、今回の旅で分厚い氷を砕きながら進んだため、船の底の塗装がはがれてしまっています。氷に阻まれて、思うように船が進まなかったり、計画の変更を余儀なくされたりと、自然は人間の都合を考えてくれないものだと実感しました。そうしたなかでも、同行した研究者たちは、ひたむきに現場に足を運び、観測を続けていました。南極観測は『地球の健康診断』とも言われています。今回、取得したサンプルは今後、日本で長い時間をかけて分析されます。南極の今を知ることによって、地球環境の未来の予測にも役立つことがよく分かりました」


(Q.吉田さんにとっても、かけがえのない経験になりましたか?)

吉田遥ディレクター:「4カ月間、南極という世界に夢中になっていたと感じます。夢中で小説を読み進めていって、読み終わった後に現実に引き戻される時の喪失感のようなものを、今感じています」

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