藤井聡太六冠が「穴熊囲い」 タイトル戦では初めて 師匠が語る「藤井穴熊」とは[2023/04/23 10:40]

藤井聡太六冠(20歳、叡王・竜王・王位・棋王・王将・棋聖)が、タイトル戦で初めて対戦する「振り飛車(ふりびしゃ)党」、菅井竜也八段(31)。大駒の飛車を序盤で左方向に移動させる「振り飛車」戦法を得意とする。

午前9時に始まった叡王戦五番勝負の第2局、菅井八段は5手目で飛車を左から3列目まで移動させた。
「三間飛車(さんけんびしゃ)」だ。
菅井八段は第1局でも、この「三間飛車」を採用したが、藤井六冠の堅い守りを崩せず完敗した。

今回、菅井八段は自分の玉を右の隅まで移動させ、金と銀で周りを固める「穴熊囲い」にした。相手からの“王手”がかかりにくく最も守備力の高い囲いとされている。

対する藤井六冠も玉を自陣の左隅に移動させて「穴熊囲い」にする。
藤井六冠は飛車を元々の位置のまま戦う「居飛車(いびしゃ)」戦法で、その穴熊は「居飛車穴熊」と呼ばれている。
双方が穴熊に囲ったので「相穴熊(あいあなぐま)」だ。

タイトル戦で藤井六冠が「穴熊囲い」を採用するのは初めてのこと。
藤井六冠にとって14回目のタイトル戦(進行中の名人戦含む)は、ファンにとっても新鮮な展開で進んでいる。

■ 師匠「藤井穴熊は非常に攻撃的な穴熊」

隅にある香車を一段上に上げ、空いたところに玉を潜り込ませる。金や銀を移動させて“穴”をふさぐ。
「アナグマ」が穴に潜って身をひそめるような「穴熊囲い」は、大駒の飛車や角を渡してもすぐに攻略されることがないのが大きなメリット。
「相穴熊」ともなれば、じっくりとした戦いも予想されるのだが…

実は師匠の杉本昌隆八段は、藤井六冠の「穴熊」についてこう話していた。
「非常に攻撃的な穴熊。穴熊って、どちらかというと固め終わるまではずっと待っているような戦法なんですけど、藤井六冠は、いったん穴熊にしたらその後は、場合によって守りの金銀すら攻撃に参加させてリードを奪いに行くような穴熊ですね」

金や銀で玉の守りを固めたはずなのに、その金銀を攻撃に繰り出すような独特の戦い方をすることがあるという。

「穴熊をやる人というのはリスクをなるべく少なくしたがるんです。王手がかかるとリスクが大きいのでなるべく王手がかからない道を選ぶんですが、藤井六冠は例外的ですね。
どんどん守りを薄くしていくというか、穴熊の固さを維持することに全然こだわっていないですね」

そこには藤井六冠の将棋に対する考え方があるのだと杉本八段は言う。
「(指し手をしっかり)読む将棋が好きなんですね、根本的に。ガチガチに固めてしまうと大雑把になるし、楽に勝てるときがあるんですね。多分それが好きではないんじゃないかと思います。もともと楽に勝とうなんて思ってないんで。だから(守りが)薄い将棋を好んでいるのだと思います」

持ち時間4時間で、タイトル戦では最も短い叡王戦だが、決着まで目の離せない展開となりそうだ。

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