コロナ禍の苦境・5類移行…その社名が故に思い抱くメーカー社長、心境語る[2023/05/10 20:34]

 新型コロナウイルスの5類への引き下げを特別な思いで迎えた会社があります。

 株式会社コロナ・大桃満社長:「非常にきのう(8日)から食堂の活気が出てきたなと感じています」

 新潟県三条市の暖房機器メーカー「コロナ」。

 新型コロナウイルスが5類に引き下げられた8日、およそ800人が利用する社員食堂の利用時間や座席の制限を緩和しました。ランチタイムに活気が戻ってきたと大桃社長は話します。

 株式会社コロナ・大桃満社長:「メーカーとして部品の調達難、原材料の高騰がありまして、非常に厳しいなかで何とかお客様への供給責任を果たせた3年間だったのかなと思います。特に厳しかったのは2年前で、去年よりもおととしのほうが非常に厳しかったなというところです」

 苦しみながらもメーカーとしての責任を果たせたとコロナ禍を振り返りました。

 その一方、この会社ならではの事情が大桃社長を悩ませ続けていました。新型ウイルスの名称が社名と同じことです。

 株式会社コロナ・大桃満社長:「世界規模の感染症は必ず後世に名を残しますので、私たちの未来の社員及びご家族の皆さんに申し訳が立たない。つまり社名に対する不安を払拭することが私の責務と考えまして」

 顧客に対する責任は果たせた一方、未来の社員とその家族への責任がのし掛かりました。

 そうした思いが芽生えたのは新型コロナウイルスが猛威を奮い始めた3年前でした。

 株式会社コロナ・大桃満社長:「2020年6月13日に広告を出しました。その当時、(社員の)子どもがいじめられたとの報告があり、当時の社長が社員への手紙として、未来永劫(えいごう)将来の社員・ご家族が社名に対する不安を残さないようにと。きっかけはそういうことだったので、今回5類に移行するタイミングで声を上げていこうと思いました」

 3月、大桃社長は5類への引き下げのタイミングで新たな呼び方にすることを検討していた厚生労働省に対して、「COVID−19」にするよう強く求めた要望書を提出しました。

 しかし、今回のタイミングでの変更は見送られ「新型コロナウイルス感染症」の名称は変わりませんでした。

 株式会社コロナ・大桃満社長:「コロナウイルスという学術的な名前ではありますが、特定の個人や企業に不利益を与えることは望ましくないと考えていますし、そのあたりは厚労省のほうからもお話をいただいております。また機会があれば『COVID−19』にして下さいということは伝えていくつもりですので、今は状況を静観しているところです」

 厚生労働省は今月2日の時点で「名称の変更はしていないが、引き続き差別や偏見につながらないように取り組んでいく」と話しています。

こちらも読まれています