巨大国際空港 “緊迫の裏側”に密着…滑走路に“異変” 「初めて見た」渡り鳥の群れ[2023/05/21 11:00]

24時間眠らない巨大空港で出会った様々な外国人。日本観光を心待ちにしている様々な事情を抱えた外国人。

普段は立ち入ることのできない空港の裏側へ。活気を取り戻した国際線ターミナルと、その裏側を追跡しました。

■“巨大おにぎり”の正体は…

来年で開港30周年を迎える「関西国際空港」。国際線の利用客はコロナ前の5割まで戻り、一日およそ6万人です。

国際線の到着エリアで発見したのは、巨大なおにぎりのような荷物。一人で、次々と巨大な荷物をカートで運ぶ女性。さらに、もう1台…。

三重県で、一家5人で暮らす、ペルー出身のナオミさん(42)。荷物は16個、すべて一人で運んできたといいます。中には、一体何が?

ナオミさん:「(Q.中身は何ですか?)服」「(Q.(販売する)お店が日本にある?)違う。家族のために」

母国のペルーに一時帰国し、家族のために洋服を買ってきたのだといいます。見せてもらうと、サッカーのペルー代表のユニフォームやブラウスなどが大量に。

するとその時、三重から車でおよそ3時間かけて迎えに来たのは、ナオミさんの長女と次女、そして生後4カ月の孫娘。しかし、ここで問題が起こります。

娘さんたちの想像を超える大量の荷物。次々と積み込んでいきます。

荷物を無理矢理押し込む母と娘。「なんとか収まった」と思ったら、今度は後ろのドアが閉まりません。荷物の位置を調整して再度チャレンジ、無事に大量の荷物を積み終えました。

母親と娘たちは、三重県の自宅へ。帰り道、お気を付けて!

■“夢の仕事”で…大きな試練

日が昇り、巨大空港に活気が…。早朝、出勤したのは、4月に入社したばかりの寺島香帆さん(22)。彼女の仕事は「幼いころからの夢だった」というグランドスタッフです。

CKTS(株)ランプオペレーション部・寺島さん:「乗っている飛行機を整備したり荷物を運んだり、幼いころに窓から見えるグランドスタッフの方がすごくかっこよくて」

寺島さんを指導するのは12年目のベテラン・辻野元春さん(31)。この日、寺島さんに大きな試練が…。

CKTS(株)ランプオペレーション部・辻野さん:「一番プレッシャーのかかる場面だと思います。この仕事で」

それは、着陸した飛行機を駐機場まで誘導する「マーシャリング」と呼ばれる失敗の許されない重要な仕事です。

実は飛行機は機種によって、停止位置が決められています。しかも、全長66メートルもある飛行機の車輪を、わずか30センチほどのライン上に停止させなくてはならないのです。

辻野さん:「停止位置を間違っちゃうと、お客さんが乗る搭乗橋が(ハッチに)付かなくなる。もう一回、やり直しということになります」

初めて挑む「マーシャリング」。プレッシャーがかかるなか、緊張の表情で飛行機を待つ寺島さん。

辻野さん:「大丈夫」

誘導する飛行機が到着。ハンドシグナルで、方向を変えるよう指示します。

辻野さん:「大丈夫、大丈夫」

コックピットからは停止線は見えません。そして、寺島さんの合図で止まりました。停止位置は、許容範囲内のプラス60センチです。

辻野さん:「50点ですね」

寺島さんの「止まれ」の動きが、途中から早くなったため、「ブレーキのタイミングが遅れた」のだといいます。

辻野さん:「経験です。彼女も絶対できますので」
寺島さん:「がんばります!」

■台湾から“お遍路”「苦しい修行」

次に追跡取材班が向かったのは、国際線の出発フロア。すると、気になる人物がいました。

大きな荷物を背負い、杖を持った男性は一体?

台湾から来日:「お遍路に行ってきました。40日間、歩いて回る苦しい修行でした」

実は、台湾の高雄市にあるお寺のお坊さんで、修行のために日本へ。

台湾から来日:「道中、ウメやサクラが、とてもきれいでした」

インドネシアから来た家族は…。

インドネシアから来日:「立山黒部アルペンルートに行ったの。とてもきれいだったわ」「インドネシアには雪がないからね。それと息子が日本の料理をとても気に入って。中でも牛カツライスが大好きなんだ」「エクストララージ(特盛り)を頼んだのよ」「おいしい!」

■大量の“鳥”…重大事故を招く恐れも

昼下がり、滑走路で緊急事態。今回、追跡取材班は、特別な許可を得て、普段は入ることができない滑走路へ。

密着したのは、空港消防隊の高田良介隊員と門阪悠矢隊員です。

飛行機は、滑走路に小石が1つあるだけでも、機体が破損する可能性があるといいます。

そのため、日々の点検は、重要な任務。パトロール中、門阪隊員が何かを発見しました。

高田隊員:「うわ、やば」
門阪隊員:「これ、やばいっす」

それは、無数の鳥の群れ。追い払うため、すぐにサイレンとクラクションを鳴らします。

鳥の群れの正体は、絶滅危惧種の「コアジサシ」という渡り鳥。これだけの数は、初めてだといいます。

門阪隊員:「めっちゃおる。到着機、あと何分ほどでしょうか?」

飛行機の到着まであと数分。このままでは、エンジンに鳥が吸い込まれる「バードストライク」という重大事故を招く恐れも…。懸命に滑走路を走り回り、コアジサシを追い払っていきます。

門阪隊員:「B滑走路上でバードスイープ完了しました」

そして、飛行機は無事着陸。何とか間に合いました。

門阪隊員:「初めて、あんなに大量のコアジサシを見ました」

■「お金ない」78歳女性は音楽家

夕方、予期せぬ出会いがありました。

国際線出発フロアに、疲れ切った表情の女性がいました。これからニューヨークに帰るというルイーズさん(78)。あるトラブルを抱えているといいます。

ニューヨークに在住・ルイーズさん:「お金が全く無いの。京都に戻らないと」

泊まっていた京都のホテルにパスポートやクレジットカードなどを忘れてきたといいます。さらに…。

ルイーズさん:「乗る予定だった飛行機は、もう出発したわ。ニューヨークでコンサートがあるから、急いで帰らないと」

実はこの女性、世界的に有名な音楽家のルイーズ・ランデス・リーヴァイさん。インドの弦楽器・サーランギーの奏者でした。

どうすればいいのか…頭を抱えるルイーズさん。とりあえず京都行きのバス乗り場に向かおうとした、その時でした。

男性:「お手伝いしましょうか?」

英語で話し掛けてきたのは、通りすがりの日本人男性。

男性:「これは楽器?」
ルイーズさん:「コンサートで使うのよ」
男性さん:「京都駅で大丈夫?」

すると男性は、京都駅まで2600円になるチケットを買ってくれたのです。

ルイーズさん:「ありがとう」

そして、ルイーズさんの荷物を持ちバスの中まで案内すると、男性は、名前も告げず立ち去ったのです。

こうしてルイーズさんは、とりあえず京都へと向かうことができました。

その後、ルイーズさんはパスポートも見つかり、ニューヨークへ。無事、コンサートも行われたそうです。

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