ビッグモーター前社長の親族語る“カリスマ経営者の素顔”街路樹「燃やそう」新証言も[2023/07/30 23:30]

保険金の不正請求など問題が相次ぎ噴出したビッグモーター。番組では兼重前社長の親族らを取材しました。そこから見えてきたのは一代で大企業に育てたカリスマ経営者の光と影でした。

■前社長の親族語る“カリスマ経営者”の素顔

錦帯橋。山口県岩国市にある日本を代表する木造の橋です。その岩国市内に創業の地があります。1976年、ビッグモーターの前身となる「兼重オートセンター」として開業しました。
(兼重宏行前社長)「ゴルフボールを靴下に入れて振り回して水増し請求する。ゴルフを愛する人に対する冒涜ですよ」
売上高およそ5800億円。ビッグモーターを一代で急成長させた兼重宏行前社長。
創業間もないころ、会社の事業資金の保証人になったという親族です。
(兼重宏行前社長の親族)「私とすればこんな大金どうしようというような額だった。やむを得ず保証人になった。酒・たばこ、私は両方やっていましたが、彼(宏行前社長)はやりませんしね。真面目で仕事一筋。結婚式には出ましたよ。当時は公民館結婚式というのが社会的に行われていましたから、華美に流れないということで」
1980年、宏行前社長は社名をビッグモーターへ変更し、この岩国から販売拠点を山口県内に広げていきました。

■新たなビジネスモデル確立し 店舗数が急増

ビッグモーターの出店ペース。2010年ごろまで毎年一桁だったのが…2013年以降、二桁ペースに急増。2016年には最多の97店舗をオープンさせ全国展開を果たします。
ポイントは、関西で中古車販売店を展開する「ハナテン」を2005年に傘下におさめたことだと、長年、ビッグモーターの取材を続けてきたジャーナリストは指摘します。
(自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子氏)「ハナテンは本当歴史もあり実績もあり、関西圏では非常にネームバリューがあるので、まず関西から広げて、それから東海圏、そして関東。足掛かりとしても重要な存在だったのかなと思います」
買い取りから販売、車検や修理までワンストップで請け負うビジネスモデルで店舗数を急拡大させた兼重前社長。
一方、大きな転換点となったのは、息子の宏一氏が経営の実権を握ったことだったといいます。
(自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子氏)「とにかくダメなやつをどんどん切る。色んな難癖をつけて辞めさせる。“辞めさせ屋”というあだ名がついていたそうですから。そういったことが不正につながる温床みたいな」

■「いっそのこと燃やそう」街路樹に新証言

中国エリアの店舗で営業を担当。数年前、店長によるパワハラを苦に退職したという元社員です。
(中国エリアの元社員)「『死ね』だったりとか『ボケ殺すぞ』みたいな言葉を浴びせられたりとか。実際に手を出されてけがをするということもありましたね」
会社が毎年、すべての社員に配る「経営計画書」にはこんな記述が…
「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」
毎朝、全スタッフでこの経営計画書を唱和するのだといいます。
(中国エリアの元社員)「写真を撮って本部に報告するんですけど、絶対にひじを張ってやらないといけないんですよ。その日その日の単元というか、読む場所が決まってて、“生殺与奪権”もそうですし。こんな感じで全部読むんですよ」
元社員の男性が恐れていたというのが、数カ月に一度、副社長だった宏一氏が直接店舗にやってくる「環境整備点検」。全国各地のビッグモーターの店舗前で街路樹が枯れる問題が起きていますが、男性も点検前に除草剤を撒いていたといいます。しかし、ほんのわずかでも草が残っていると…
(中国エリアの元社員)「これぐらいの少ない雑草でもアウト、(点検で)減点だった」
Q. これでもダメなんですか?
「これでもアウトです。(除草剤でも)なかなかすぐには枯れたりしないじゃないですか『いっそのこと燃やそう』って言って、火で燃やしたスタッフはいましたね。たしかに付近がちょっと焦げていた」
Q. なぜそこまでする?
「すべては恐怖です。恐怖心からきているもので。僕たちが恐れているのは店長。店長が恐れているものは回ってくる本部っていうところだったので」

■急成長の陰で 前副社長の“パワハラ”証言も

損保ジャパンの前身の保険会社を経て2012年にビッグモーターに入社。そのわずか3年後にMBAを取得し副社長に就任した宏一氏。これは宏一氏が幹部らに送ったとされるLINEのメッセージ。「死刑」という言葉を使い、罵声を浴びせています。
問題がある店舗をLINE上でののしり、店長を次々降格させたと、多くの現役社員や元社員が証言しています。
(ビッグモーター 現役社員)「人を人として扱っていない印象がありました。暴言がやっぱり多かった」
(ビッグモーター 元店長)「(点検は)副社長のご機嫌次第なので、鶴の一声でクビが飛ぶので…」
外部の専門家による調査報告書は、前副社長らが降格処分を頻発することで従業員らを過度に委縮させ、経営陣の意向に盲従させていたと指摘しています。しかし、辞任会見に宏一氏の姿はありませんでした。
(陣内司 管理本部部長)「本人(宏一氏)の方からは深く反省の言葉を預かっています」
Q. どんな反省の言葉でしょうか?
「今回、お客様のためと思って体制を整えていた時に、ついカっとなって強い言葉で降格という処分を行ったことに対し、あの時にこういう風な形で言うんじゃなかったなと強く反省を示しておりました」
(中国エリアの元社員)「公の場に出ずに一言も何もしゃべらないというのは、お客様にもそうですし、今いる既存のスタッフに関しても本当に不誠実だと思っています」


7月30日『サンデーステーション』より

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