放射光施設を次世代型に機能向上へ性能は100倍に 実現すれば世界トップ水準[2023/08/08 14:43]

 兵庫県にある大型放射光施設「SPring−8」について、文部科学省のプロジェクトチームは大幅に機能を向上させる考えを示しました。

 兵庫県西部の播磨科学公園都市にある施設「SPring−8」では、太陽の100億倍近い明るさの「放射光」を使って通常では見ることができない様々な物質の内部を精密に解析することができます。

 スマホの画面やシャンプーをはじめ、インフルエンザの治療薬に至るまで、身の回りにあるものを研究するのに幅広く活用されています。

 科学捜査にも使われたことがあり、1998年の和歌山カレー事件では、死刑囚の自宅で押収されたヒ素とカレー鍋に混入していたヒ素の同一性を突き止めました。

 他にも押収された麻薬などを分析し、薬物の産地や密輸ルートの解明に貢献してきました。

 一方、1998年に利用が始まってから25年以上が経ち、日本はその技術で欧米や中国に遅れをとっています。

 欧米では次世代半導体やGX社会の実現など、社会や産業の転機を見据えて放射光施設の機能向上を図りました。

 中国ではすでに新しい施設の建設が進んでいます。

 競争が激化するなか、文科省のプロジェクトチームはいまある「SPring−8」から新しい施設となる「SPring−8−2」へ大幅に機能向上を目指す報告書をまとめました。

 それによりますと、新しい施設の建設費はおよそ500億円で「放射光」の明るさは100倍ほど高くなります。

 これによって、さらに高精細なデータを短時間で解析できるようになります。

 これまで3年かかっていた解析が、わずか数日まで短縮され、実現すれば世界1位の水準になります。

 2位と比べると技術の差は倍以上になるということです。

 これまで2割ほどにとどまっていた民間企業での利用率を高めるほか、カーボンニュートラルや半導体戦略経済安全保障といった国家的な課題解決にも貢献することが期待されます。

 文科省は2024年度に概算要求をし、2029年度からの本格稼働で再び世界をリードすることを目指しています。

画像:国立研究開発法人理化学研究所提供

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