【関東大震災100年】被災直後の「街」写真 AIでカラー化し次世代に「防災」伝える[2023/09/01 09:13]

 9月1日で関東大震災から100年です。「首都直下地震」が近々発生するとも言われていることから、デジタル技術を使って次の世代に「防災」を伝えようとする東京大学大学院の教授を取材しました。

 7面ある大きなディスプレー。東京大学に置かれているものです。震災直後の空撮写真とその場所の今を重ね合わせた映像が映し出されています。

 東京・浅草です。現在の浅草は、浅草寺など歴史ある建物や近代的なビルが共存していて、去年10月の水際対策の緩和以降、多くの外国人旅行客が訪れています。

 実はこの浅草、関東大震災当時は木造建築が軒を連ねていて、そのほとんどが全焼しました。

 しかし、写真をみると浅草寺一帯だけが境内に植えられた樹木に守られたのか、まるで「陸の孤島」のように焼け残っています。

 続いて、五重塔。仲見世商店街を真っすぐ進むと今は左側に見えますが、1945年の東京大空襲で焼失するまでは、実は右側にあったのです。

 現在の東京・江東区です。画面中央の少し上を隅田川が流れています。その対岸にある月島には何棟もの高層マンションが建ち並んでいます。

 そんな月島も、地震が発生した正午前、多くの家庭で昼食の準備をしていたことから、建物火災によって立ち上る煙が空一面を覆いました。

 東京大学大学院 渡邉英徳教授:「驚くのが今の東京と道などがほとんど一致している。たくさんの人が居住しているところが100年前も実は埋め立て地で、当時はほぼ全滅だったことが分かりますね」

 この映像を手がけた東京大学大学院の渡邉英徳教授は、「1枚の地図に落とし込めば被災状況をより実感できる」という想いで、デジタルアーカイブを作ったと話します。

 東京大学大学院 渡邉英徳教授:「もし同じ規模の地震が東京で起きたら、全焼することはないかもしれないけど甚大な被害が起きるのは間違いないんですね。そういうことを再確認させてくれる」

 そんな渡邉教授にはもう一つ取り組んでいるものがあります。それは、白黒写真のカラー化です。

 東京・日比谷を撮影したとみられる1枚。

 東京大学大学院 渡邉英徳教授:「皆向こうの方を見ていますから、(カラー化することで)火が燃え続けていて、どうなることかという感じを受けますよね」

 では、渡邉教授が白黒写真をどのようにカラー化するのか。復興する浅草を撮影した写真で教えてもらいました。

 まず、最新のAI(人工知能)で写真に色を付けます。リアルな色に近付けるため、当時の人が残した“作品”を参考にします。

 東京大学大学院 渡邉英徳教授:「スライドですね。絵師が色をつけたモノクロ写真」

 絵の具などで彩られた着物から色をサンプリングして上から塗り直します。模様はそのままにスプレーのように色付けしていきます。

 白黒だった写真に色が付き、写っている人たちの表情が生き生きしているのが分かります。

 1枚をカラー化するのにおよそ2カ月。渡邉教授は、半年かけて10枚の白黒写真を生まれ変わらせました。

 東京大学大学院 渡邉英徳教授:「100年前の災害を今に色を取り戻してよみがえらせると、今後起きるであろう災害と重ね合わせやすくなるわけです。服装は今とは違うけれど被災した時に僕らがこんな体験をするかもしれない」

 空撮写真やカラー化された写真は震災から100年を迎える1日から、国立科学博物館に展示されます。

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