「台風→熱低」も“警報級大雨”警戒 記録的残暑は海中にも… 高級サバ大量死の異変[2023/09/03 23:30]

列島の南の海上を北上していた台風12号。
3日午後、熱帯低気圧に変わりましたが、このあと、警報級の大雨をもたらす可能性があります。
一方、記録的な暑さが続く日本海側では海の中に深刻な異変が起きています。

■「台風→熱低」でも油断禁物“警報級大雨”に要警戒

日本の南海上で発生した“W台風”。石垣島は台風11号の影響で24時間雨量が89.5mmを記録しました。
(矢谷一樹記者)「橋の奥が見えないくらいの雨の強さになっています。かなり強い雨です。」
一方、伊豆諸島の南にあった台風12号は3日午後、熱帯低気圧に変わりましたが、引き続き警戒が必要です。
(テレビ朝日ウェザーセンター佐藤圭一気象予報士)「台風と熱帯低気圧の違いというのは、風速によるものなので、雨に関しては決して警戒を緩めることはできません」

去年9月、関東東海地方に接近した台風15号は、発生24時間後には温帯低気圧に変わったものの、静岡県などでは大雨となり大規模停電や断水が発生。激甚災害に指定されるほどの被害がでました。今回も警報級の大雨となる恐れがあります。
「関東は3日の夜から雨が強まり始め、あす4日の日中をピークに激しい雷雨となりそうです。土砂災害であったり、河川の増水、都市部でも道路の完遂などに注意が必要です」

■「記録的残暑」で海に異変“ブランドサバ”大量死

一方、強い高気圧の影響で、厳しい残暑が続く西日本。大阪府豊中市では37.3℃と、9月の最高気温の記録を更新。体温超えの“危険な暑さ”になりました。
記録的な残暑は、北陸の海に“異変”を起こしていました。新鮮な地魚を使った海鮮料理が自慢のこちらのレストランでは、おすすめ料理がメニューから消えていました。
(海幸苑前原裕二副料理長)「こちらを提供していましたが、いま(魚の)入荷が無いので、オーダーストップという形で案内させてもらってます」
入荷が止まっているのは、“海の幸の宝庫”若狭のブランド魚『よっぱらいサバ』。このサバを目当てに、京都や大阪など県外からも多くの客がやってくると言います。
(海幸苑前原裕二副料理長)「味も(脂の)乗りも違いますし、地のサバと違いまして、すごく洗練された(サバ)」
“大きさよりも味”を第一に養殖された『よっぱらいサバ』。最大の特徴は、京都にある老舗の酒蔵の酒粕を、配合飼料に加えること。その結果、生臭さが無く、ほのかに爽やかな香りがする、生でも食べられるサバになりました。
(海幸苑前原裕二副料理長)「生で食べられるサバというのもなかなかないので、9月10月、秋の行楽シーズンとか入ってきますので(入荷が)ちょっと不安です」
養殖の現場で、何が起きているのか?
(よっぱらいサバを養殖田烏水産横山拓也代表)「あそこご覧になれますか?いかだのところですね」
養殖は、入江に浮かぶ生簀で行われていました。
(田烏水産横山拓也代表)「今のところ数百本は死んでると思います。600〜700本くらいですね」
この夏に起きている、サバの大量死。原因は、海水温の上昇でした。
(田烏水産横山拓也代表)「今までなかった海水温の上昇が現れまして、それまでだったら上がっても27℃、28℃だったところが、30℃、31℃平気で行くようになってしまったんですね」
サバは一般に、水温14℃から20℃までを好む回遊魚。水温が上がると体温の調節ができず、死んでしまうと言います。こうしたことから、生簀には水温や酸素濃度計を設置して、モニターできるようにしています。この時の水温は28℃近く…。
(田烏水産横山拓也代表)「27.89℃っていうのは、真夏の平常な時の一番高い温度くらいです。まだ全然高いです。10月の初旬からは何としても出荷したい。だから、もうそろそろ餌をやり始めて、酒かすの味でおいしく召し上がって頂けるようには早くしたいんですけど。まだちょっと餌やり始められないですね」

記録的な暑さは、越前のアワビやウニにも打撃を与えています。番組では、素潜り漁に同行しました。
石丸隆夫さんは、素潜り漁をしながら割烹旅館を経営。自分でとった新鮮な海産物を提供しています。潜るのは、水深9mの薄暗い海底。岩の中に貝類を見つけるのも至難の業です。
Q.何がとれました?
「これ、サザエですね」
Q.何かとりにくくなったものは?
「アワビはとれにくくなりましたね。」
石丸さんによると、近年、アワビやウニなどの貝類が減ってきているものの、今年は、特に顕著だ
(ホテル割烹石丸石丸隆夫さん)「昔は1シーズンで(アワビは)100kgくらいはとれたんですけど、今シーズンで40kgくらい。半分以下ですね。特に今年は少ない」
原因はなんなのか?素潜りをする石丸さんは、海の異変を肌で感じていました。
(ホテル割烹石丸石丸隆夫さん)「ちょっと昔だったら下の方まで行くと冷たいなっていう感じだったんですけど、今は丁度いいなっていう。海藻がちょっと少なくなってきたところはありますね。俗にいう『磯焼け』」
海藻が育たず“海の砂漠化”と言われる『磯焼け』。近年、日本各地で起きているこの現象は、気温の上昇とも大きく関わっていると言います
(福井県立大学海洋生物資源学部浜口昌巳教授)「海藻が生えている場所は、大体水深10mmより浅いんですけど、気温の影響を受けやすいんですね」
こう話すのは、福井県沿岸などで、海の生態系を調査している、浜口昌巳教授。
さらに、気象庁が出している100年間の海水温の変化をみると、東北や北陸などの日本海側が際立って高いのが分かります。浜口教授はこうした海水温の上昇が、温かい海域の生物を北上させ、『磯焼け』を拡大させていると言うのです。
(浜口昌巳教授)「これは(暖海域に生息する)アイゴの大群なんですよ。アイゴが来ると色々な海藻を食べてしまいます。海藻が無くなることによって海藻を餌として増えている生物、例えばアワビとか、サザエとかウニ類の実入りが悪くなる、育ちが悪くなる。ある程度(海水温が)下がっていただかないと、磯焼けにも影響がありますし、養殖の出来不出来にも関係してくると考えてます」


9月3日『サンデーステーション』より

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