「“殺意”が十分疑われる」なぜ?全国初 ひき逃げ容疑の男が『重要指名手配』に[2023/09/15 23:30]

去年6月、大分県別府市で大学生2人が死傷したひき逃げ事件では、1年以上経った今も容疑者の行方が分かっていません。こうしたなか、警察庁は15日、通常の指名手配から『重要指名手配』に切り替えたと発表しました。ひき逃げの容疑者としては全国初の指定です。

事件が起きたのは去年6月29日。その瞬間を捉えた映像では、火花を散らしながら吹き飛ばされるバイク、
もう一台、飛ばされている原付バイクも確認できます。原付バイクに乗っていた当時19歳の大学生Aさんが命を落としました。

逃走した、八田與一容疑者(27)。1年以上の捜査、延べ2万4000人の捜査員を投入して行方を捜していますが、いまだその足取りはつかめていません。

なぜこの容疑者が史上初となる、道路交通法での重要指名手配に指定されたのか。あの日、もう片方のバイクに乗っていたAさんの友人、大学生Bさんに話を聞くことができました。

Bさん:「すごい思い出しますね。ここを通ると必ず思い出すし、頭のどこかではいつも、あの時のことは鮮明に覚えています」

2人は事件直前、八田容疑者に会っていたといいます。

Bさん:「そこの出口です。Aさんが原チャリを足でバタバタさせながら止まった。僕そこで待っていたんですよ。そしたら、そこで男と話しているのが見えて」

場所は、現場から500メートルほど離れたショッピングセンターの駐輪場。時刻は午後7時42分ごろ。事件が起こるわずか3分前のことです。Aさんと八田容疑者は1分ほど言葉を交わしていたといいます。

Bさん:「『知り合い?』って聞いたら(Aさんは)『いや知らないやつ』。『なんでそんな話しよったん?』(Aさんは)『音楽を爆音で流してて、なんやこいつと思って見たら、ケンカふっかけられた。変なやつに。俺は普通にすぐ謝ったけど、めんどくせえし』」

いうなれば“言いがかりをつけられた”感じだったといいます。変な奴に出くわしてしまった。そう受け止めて2人はバイクで家路につきます。そして、あの交差点で、信号待ちをしていたところ、背後から猛スピードで近付く車に気付きました。

Bさん:「信号で止まって、そのまま『どうせ変なやつやろ』『気にするなよ』みたいな言っていたら、アクセルベタ踏みの音がした。回転数がだいぶ上がって『ブーン』みたいな。光というか音で気付いた。バイクのミラーを見たら、ヘッドライトがすぐ近くに来てて、まずいと思って。最後2人、目が合って、バーンて」

数十メートル先まで跳ね飛ばされた2台のバイク。これまでの捜査で、車は時速80キロ以上で、ブレーキをかけずに衝突したとみられています。その1分後、現場から逃走する容疑者の姿が捉えられていました。取り乱しているようには見えません。よくみると、裸足です。かなり目立つはずですが、人通りの多い繁華街を悠々と歩いていました。事件から14分後の映像が、八田容疑者の姿を捉えた最後になります。

2日後、逃走時に着ていた黒いTシャツが港で見つかって以降、手掛かりは何も見つかっていません。このまま逃走を許してはいけない。Bさんは私たちにこう呼び掛けます。

Bさん:「まず許せないですし、怒りしかないですよね、本当に。(いまも)普通に生活していて、普通に生き延びていると考えたら、めちゃくちゃ腹立ちますし、ふざけんなよって感じですよね。全国の皆にこのことを知ってもらって、どこにいるのか分からないので、協力してほしいですね。こんな凶悪犯を野放しにしておくのはすごく怖いので、早く捕まってほしいです」


◆被害者狙った“十分な殺意”

(Q.指名手配から重要指名手配への切り替えで、何が変わりますか)

重要指名手配は、殺人や強盗致傷などの凶悪犯罪が対象となることが多いものです。現在、重要指名手配されているのは、八田容疑者を含めて14人で、道路交通法違反の容疑者が重要指名手配に指定されたのは、全国初の事例です。今後は、全国の警察で、八田容疑者の顔写真入りの手配書の掲示が行われ、事件の概要や情報共有がされます。

(Q.なぜ重要指名手配に指定されたのでしょうか)

元埼玉県警捜査1課の佐々木成三さんに聞きました。

佐々木さん:「警察も“通常のひき逃げではない”と思っていて、逮捕後に『殺人容疑』での起訴を想定しているのではないか。事件前に、被害者にケンカを売っているような様子があり、車のブレーキ痕もない。これらのことから“殺意”が十分疑われるため、重要指名手配に指定された」

また、初の『道交法違反』での指定になったことで、国民の関心が高くなり、より多くの情報が集まることを期待している面もあるのではないかとしています。

容疑者の情報は、別府警察署の電話番号『0977-21-2131』で受け付けています。また、逮捕につながる有力情報の提供者には、最大300万円の懸賞金が公費から支払われます。遺族とその友人らでつくる会も懸賞金500万円を出すことにしています。さらに、ホームページなどでも、幅広く情報提供を呼び掛けています。

遺族の会のコメント:「なぜ道交法違反事件が重要指名手配になったのか、いま一度、八田容疑者の人物像と事件の経緯を多くの方に知ってもらいたいです。このような凶悪犯が逃亡を続け、皆さんの身の回りに潜んでいる可能性があることは恐ろしいことです。人ごとと思わず、八田容疑者の顔を覚えてください。似た人物を見たら、全国どこでもいいので近くの交番に情報提供をお願いします」

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