紅葉どこへ?色づき遅れ…行楽地に異変 日本の四季「今後は二季に」専門家が警鐘[2023/10/23 10:28]

 日本の季節感に異変が起きています。夏の風物詩「花火大会」が秋に開催され、秋の風物詩「紅葉」も色づきが遅れています。専門家は「季節が4つから2つになる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

■花火大会…寒さにブルブル「秋だった」

 東京の夜空を彩ったのは6000発の夏の風物詩・花火。21日、4年ぶりに「世田谷区たまがわ花火大会」が開催され、多くの人でにぎわいました。

 30代:「夏の終わりに、ピッタリなイベントかなと思って。今年の夏、花火大会全然行けなかったので、いい機会だと思ってきました」

 思わず「夏の終わり」といってしまうような気候。この日の東京は、最高気温が22.5℃。浴衣姿や薄着の人も多く、10月後半にもかかわらず、夏のような光景が広がりました。

 時刻は午後6時、人で埋め尽くされた多摩川の河川敷。大輪の花火が打ち上がると、大歓声が上がりました。しかし、終盤に差し掛かると…。

 来場者:「寒い」「ちょっと、もう秋でした。夏だと思っていたら…」

 気温は日中よりも低い20℃以下に低下。風が強かったことも相まって、寒さに震え上がる人が続出しました。

 風が吹きつける河川敷。思わず小さな木の裏に隠れる人もいれば、全身に青い何かをグルグルに巻きつけて、肩を寄せ合いながら歩く女性3人組の姿もありました。

 来場者:「マジで寒いんすよ。これで防寒している。レジャーシートです」「(Q.レジャーシートの下は?)普通に服着てます。暖かい服だけど、それ以上に風が強い…」

■夏の異常気象…各地で広がる「秋花火」

 2017年までは8月に開催していた、この花火大会。なぜ、夏の風物詩を10月にずらしたのでしょうか。近年、猛威を増す「夏の異常気象」を避けるためだといいます。

 6年前のこの花火大会、ゲリラ雷雨が会場を襲い、けが人が出る事態にまで発展。そのため、翌年からの開催時期を“夏”から比較的気候が安定している“秋”へずらすことを決断しました。

 こうした「秋花火」は各地に広がり、日本三大花火大会の一つ、茨城県の「土浦全国花火競技大会」も秋開催となっています。

■紅葉どこへ…? 行楽地の景色に異変

 変化が起きているのは、夏の風物詩だけではありません。秋の風物詩にも、ある異変が起きているといいます。

 「(今年)きれいな紅葉を見られるのであれば、なるべく今見た方がいい」と話すのは、三重大学で気象学などを研究する立花義裕教授です。秋の風物詩・紅葉が危機的な状況だと指摘します。

 立花教授:「1年の半分近くが夏で、ちょっとだけ秋と春があって、残りは冬。そういうような四季じゃなくて、まさに二季になる」

 東京では夏日が140日と過去最多タイを記録するなど、各地で異常な暑さが続いた今年の夏。その異常だった夏が、各地の紅葉に影響を与えているといいます。

 例年、この時期に見頃のピークを迎える栃木県那須高原。斜面の紅葉を一望できるロープウェイには、多くの観光客が訪れて、一見これまで通りの“秋”真っただ中のようですが、近くの別の場所に行ってみると…。

 「Cafe MADOKA」では例年、この時期にはテラスで食事をしながら紅葉を楽しむことができるのですが、今年はまだ緑が多いです。

 ロープウェイから6キロほど離れたこの店では毎年、この時期になるとカラフルな紅葉を見ることができますが、22日は見頃のピークにもかかわらず、ほとんどの葉がまだ緑色です。

 この景色に、九州からの観光客は次のように話します。

 九州からの観光客:「ちょっと予定よりも遅れていて、早すぎたかなって感じ」「(Q.いつもはこんな景色を見ることができる)それ最高ですね。それをぜひ見たかったですね」

 昔からここで働く酒井秀一さんは、記憶にない光景だと話します。

 Cafe MADOKA 酒井専務取締役:「(いつもは)9月過ぎると、かなり冷え込むので真っ赤になるが、今年はそれがない。今年は暖かいですから、秋がなくて、急に冬がきそう」

■専門家「異常気象がニューノーマルに…」

 紅葉の遅れは、札幌でも。去年と今年、ほぼ同じ時期に撮影した写真を比較してみると、同じ建物ですが、見た目が全く異なります。

 立花教授:「今年は特に、極端に暑いのが長引いた。夏が長くなると当然、紅葉の季節は少し後ろにずれます。ほんとはそろそろ葉っぱの色を変えようと思ったら、まだかなり暑いので。まだかなと思っているうちに、雪が降ってしまうということ」

 今年の日本列島、暑さが続いた原因の一つとして、列島周辺の海水温が関係しているとされています。

 立花教授によりますと、去年も海水温がおよそ2℃上昇し、「異常水温」と呼ばれましたが、今年はその倍以上となる平年よりも5℃も高い地域がありました。

 立花教授:「海も暑いので、気象的にはもう秋になっても、周りの海があたたかい。暑いから、なかなか冷えない状態だった。結局、春と秋が縮むので、長い夏と冬があるから、四季が二季に減る。夏と冬だけという時代が来ると思う」

 これまで1カ月程度楽しむことができた紅葉。しかし、今後は秋が非常に短くなるため、すぐ散ってしまうといいます。

 今後、“季節の風物詩”はどうなってしまうのでしょうか?

 立花教授:「春は桜、秋は紅葉が楽しみで、季節を非常に楽しめる国だったけれども、それが間もなくそういう国じゃなくなるかもしれない。今年のような季節感が普通になると思いますので、異常気象がニューノーマルになる。これが普通になっていくと思う」

(「グッド!モーニング」2023年10月23日放送分より)

こちらも読まれています