硫黄島沖で噴火“新たな島”出現 海上には「軽石いかだ」漂着の恐れは?専門家が解説[2023/11/05 23:30]

おととし、日本各地に押し寄せた大量の軽石。海底火山の噴火によるものです。実は今、その火山の近くで新たな噴火が起き、島が形成されていることが分かりました。

■噴煙吹上げ溶岩も…硫黄島沖に“新島”出現

空高く立ちのぼる噴煙。激しい噴火が繰り返し起き、“火山弾”が放物線を描いて飛び散る様子も確認できます。この噴火によって海上には、直径およそ150メートルの“新たな島”が出現していました。今回、噴火が起きたのは、東京都心から南へ1200キロ。小笠原諸島の硫黄島沖合です。
(東京大学火山地質学中田節也名誉教授)「爆発を繰り返して、軽石がどんどん放出されるわけですよね」
噴火の撮影に同行した東京大学の中田名誉教授です。
(中田節也名誉教授)「軽石のかたまった小山ができて、それが今、島状に分布していると。いよいよマグマが海面上に顔を出して噴火を続けているという状態ですね」
日が暮れ始めると、噴煙とともに噴き出した溶岩が赤く光って見えるように。斜面を流れ落ちた溶岩は、海面にまで到達しています。
(中田節也名誉教授)「このまま噴火が続けば、溶岩が火口から出てきて島を覆って、その分が浸食されずに残るという、そういうストーリーが考えられる」
周辺の海上には、白い巨大な浮遊物も。これは噴火の際にできた軽石が集まり、筏のように漂流している“軽石いかだ”です。“軽石”と聞いて、思い起こされるのは、おととし、沖縄での被害。大量の軽石が港に押し寄せ、漁師は漁に出られなくなりました。
(軽石を撤去する漁師)「軽そうで結構重いんですね、これ。子どももいるので生活の不安とか、怖くなりますね」
美しいビーチも軽石で、一面、灰色に。旅行のキャンセルが相次ぎ、観光業にも大きな影響が出ました。その後、軽石は伊豆諸島にも接近する事態に。
(小川麻子ディレクター)「式根島からわずかの距離なんですが、かなりの数が浮かんでいます。少しすくっただけで、こんなに軽石がありますね」
これらの軽石は、硫黄島と同じ小笠原諸島にある海底火山「福徳岡ノ場」の噴火によって発生したものでした。
(山口豊アナウンサー)「今ですね、福徳岡ノ場の上空に差しかかりました。小さな島が確認できます。上の部分は“軽石”が積もった部分だと思われます。そして、その周辺ですね。軽石があちこちに流れている様子が確認できます」
おととし噴火した「福徳岡ノ場」も上空から見た、中田名誉教授。今回の硫黄島沖合の噴火では、以前のような“軽石被害”の恐れはないのでしょうか。
(中田節也名誉教授)「硫黄島から軽石が流れた場合には、まず沖縄に向かって、それから黒潮に乗って、日本の近海まで来ますので、小規模に届くとは思いますけど、これから溶岩が出るステージに入るので、軽石が生産されるというのは比較的少ないかなと思いますけど、漁業に影響が出ることはほとんどないと思います」
ちなみに「福徳岡ノ場」の噴火で生まれた島は、その後…波で削られ、海に沈んでしまいました。今回、硫黄島の沖合に出現した直径およそ150メートルの“新たな島”は、どんな運命をたどるのでしょうか。
(中田節也名誉教授)「この後、溶岩が出ると、軽石の山を溶岩が覆ってしまうので、そうなると波で非常に削れにくくなるんですね。そうなると、いよいよ島として残っていく可能性は高くなると思いますね。溶岩が出続ければ、島は拡大していく、面積が拡大していくということだと思います」

11月5日『サンデーステーション』より

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