激やせとメタボ 進む“二極化”背景にクマ同士の「熾烈な生存競争」[2023/11/08 19:50]

 今年の秋、北海道で出没が相次いでいるガリガリに痩せたヒグマ。一方で、丸々と太ったヒグマも頻繁に目撃されるなど、いわばクマの“二極化”が進んでいます。北の大地で一体、何が起きているのでしょうか。現地を緊急取材しました。

■激やせ 一方“メタボ”ヒグマ多数

 自動撮影カメラが捉えたのは丸々と太った巨大なヒグマ。

 写真家 黒澤徹也さん(52):「“メタボ”クマ。太り方が尋常じゃない」

 撮影した北海道在住の写真家が「メタボ」と表現するのは雄のヒグマです。今年は自宅近くに設置したカメラに頻繁に映っているといいます。木に寄り掛かって立ち上がると、目印として付けた2メートルの白いラインを超えています。推定の体重は…。

 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「だいぶ太っている様子。300キロを超える、400キロ近い」

 北海道ではこの秋、極端に痩せ細ったヒグマも目撃されています。丸々と太った“メタボ”ヒグマにガリガリの“激痩せ”ヒグマ。

 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「今回の映像は対比として興味深い」

 専門家も注目する二極化。さらに、都市型クマが今後も増える恐れが…。

 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「人の生活圏のすぐ近くにクマがいる時代、ウィズベアーズの時代にある。(人の生活圏の)近くにいるクマが町の中に出てくるようなアーバンベア化していかないように、適切に人間側が管理していく必要がある」

 「ウィズベアーズ」の時代が到来。私たちには、どのような備えが必要なのでしょうか。

■進む“二極化”北海道で起きた異変

 8日、Jチャンネルの取材班が向かったのは北海道北部の興部町です。この町の周辺では今年、ヒグマの目撃件数が急増。すでに過去5年で最多となっています。

 写真家 黒澤徹也さん:「ヒグマの生態もまだ分かっていないことがたくさんあるので、今まで知られていない生態が映っていたら良いという思いで撮っている」

 ヒグマの生態を調べるため、自宅周辺の土地に複数のカメラを設置しています。野生動物を赤外線で感知して自動で撮影できるカメラです。住宅から、わずか150メートルしか離れていない場所に現れたのは北海道に生息する珍しいキツネ「十字ギツネ」です。さらに、同じ場所に出没したのは「ヒグマ」。

 自動撮影カメラが捉えたのは、まるでダンスしているかのようなヒグマ。実はこれ、背こすりと呼ばれる行為です。木に体をこすり付けることで「におい」を付け、雌グマやライバルの雄に対して存在をアピールしているといいます。

 52年間この土地で生活する黒澤さんは異変を感じています。

 写真家 黒澤徹也さん:「糞(ふん)などの痕跡すら見たことがなかった、子どものころは。今はそこら中、奥に行ったら糞がいっぱい落ちているし、食べた跡、草を倒している跡もすごくよく見る」

 8日に回収した映像を確認すると…。

 写真家 黒澤徹也さん:「親グマと子グマ3頭。今年3頭連れは初めて見た」

■背景にクマ同士「熾烈な生存競争」

 この秋、めっきり減った親子グマの出没。その代わりに良く映るようになったのが丸々と太ったヒグマ。黒澤さんは“メタボグマ”と呼んでいます。この秋は山の餌(えさ)不足の影響でガリガリのヒグマも現れるなか、丸々と太っている訳は…。

 写真家 黒澤徹也さん:「デントコーンを食べているのかも」

 この周辺は酪農地帯で、デントコーンと呼ばれる飼料用のトウモロコシ畑が広がっています。畑には無数の穴が。黒澤さんによりますと、ヒグマによる食害だといいます。専門家は餌不足の影響を、こう分析します。

 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「森で餌を食べられていた大きな雄が、より畑の近くに来てトウモロコシを食べている。そうするとトウモロコシを食べていた親子が別の場所に行く」

 体が大きく優位な雄グマが森の中の餌に加えて山に近い畑でトウモロコシなどを食べて太っていく一方で、子育て中の雌グマや若いクマは押し出されるように市街地に出没せざるを得ず、痩せていく状況だといいます。

 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「いつもと違う場所に若いクマや親子のクマが出てきている」

 その結果、人身被害が増える恐れがあると警鐘を鳴らします。

 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「(クマが)生活していないような人の生活圏に入っている段階で、クマがパニック状態になっていることが多い。その時、人に会ってしまうと事故に至る可能性が高い。目撃情報が出たら外出を避ける、車内に身を隠す、クマが目立たない場所に避難」

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