冬眠しない“穴持たず”今年は増加?狂暴クマと遭遇減へ…茂みの中も姿クッキリ新対策[2023/11/12 23:30]

季節が一気に進んでもこの野生動物の脅威は続くかもしれません。
きょう12日も各地で目撃されたクマです。
この冬は、冬眠時期でも眠らないクマの増加が懸念されています

■柿食べる2頭のクマ…用水路に子グマ

今朝、木の上で柿を食べていたのは、2頭のクマ。親子とみられます。
(警察)「上がっている人危ない!」
(動画を撮影した人)「野生のクマは初めてこんな感じで見ました。実際、近い方に降りて来たりもしたので、これは結構怖いなと思いました」
この女性が最初にクマを見掛けたのが、11日夕方。20時間以上、昇り降りを繰り返していたといいます。そして…。
その後も爆竹を何回も鳴らし続け、午後1時すぎ、クマの姿は見えなくなったそうです。
(動画を撮影した人)「職場のある地域で人身被害があったりしたので、まず会社を出たら車まで走って行くようになりましたね。実がなくなるまでは、また(クマが)来ると思うので気を付けたいと思います」
クマの目撃は、岩手でも…
(今井悠貴記者)「今、この用水路の草木がとどまっているような場所に子グマが一頭とどまっている状態が続いています」
岩手県・紫波町にある用水路で発見されたこちらの子グマ。実は、ここで発見される前、近くの住宅の敷地に侵入し、柿の実を食べるなどして1時間以上居座った後、姿が見えなくなっていました。
(今井悠貴記者)「今用水路の穴を通って、クマが陸地の方に出てきました」
この後、クマは林の中へ逃げて行ったということです。

■畑に潜む3頭のクマ…熱反応で空から監視

クマによる人身被害が180人と過去最悪の事態になっている中。各地で様々なクマ対策が行われています。
ドローンを使ったクマの捜索は現在、全国各地の自治体などに広まっています。ドローンが捉えた上空からの森の映像。一見、何もいない様に見えますが、赤外線カメラに切り替えると…体温に反応し、赤紫色に浮かび上がったクマの姿が確認できます。
こちらは今年8月、岩手県岩泉町でクマの調査の為ドローンを飛ばした時の映像。人の背丈以上のトウモロコシ畑の中に潜む3頭のクマ…さらにドローンで追尾していくと、人目に付きにくい川沿いの藪を移動する姿も確認できます。
さらに、山口県岩国市。こちらの協会では自動操縦で森林を巡回するシステムの運用を目指しています。周辺では例年に比べ、クマが多く目撃されています。
(山口県産業ドローン協会芝田康平さん)「この大きなレンズが可視光カメラで望遠レンズも付いています。こちらに赤外線カメラが付いています。」
手元の送信機にはリアルタイムの映像が確認できるモニターが付いています。住民が見守る中いよいよ探索開始です。
「離陸します」
今回はクマが目撃された周辺の山の一部を捜索します。早速、赤外線カメラ映像を見ると…
(芝田康平さん)「自動航行、順調に進んでいます。設定したルートでちゃんと飛んでくれています」
Q.何か居そうですか?
「今の所見えないですね」
最新ドローンでの捜索は搭載されているGPS装置を使い、座標をプログラミングすることで広大な地域を誤差数センチの間隔で探索できるといいます。人間が山に入り探索すると2日間はかかる広さを、およそ1時間で巡回出来るといいます。
(周東町下中曽根自治会世良輝久会長)「特に今は山の中に(人が)入ってないから山に入れない。現実的には。人では恐らく無理です。(ドローンは)これから有効になってくるでしょうね」
今回の飛行でクマを探知することはできませんでしたが、自動航行での運用は大きなメリットがあるといいます。
(山口県産業ドローン協会森重優太さん)「広範囲を短時間で捜索できますし、自動航行を行うことで準備の時間を削減出来ますので、人手と時間の削減ができるのかなと思います」

■“ツキノワグマ生息地の核心部”に学ぶ対策

秋のシーズンを迎え、多くの観光客が訪れる山間部では観光地全体で独自のクマ対策を行っている場所があります。長野県上高地。大自然の宝庫として国の文化財に指定され、年間120万人もの観光客が訪れる景勝地です。
(埼玉から来た観光客)「こんなすごい景色(埼玉では)見られないんで、やっぱり見応えありますね、すごくきれい」
ツキノワグマの生息地の核心部ともいわれる上高地。この自然豊かな観光地では3年前からクマによる被害を食い止める対策を強化しているといいます。目撃情報が入った際はクマ対策専門の人員を配置します。
(自然公園財団上高地支部香取草平主任)「これがシールドですね。親子クマであったりとか、何らか興奮状態にあるクマの場合は、(クマが)突進や威嚇などして上高地ではあまりないが、その可能性も考えられるということでこれ(シールド)は全体を守れますので」
こうした対策強化には3年前に起きたクマによる人身被害が教訓として活かされているといいます。
2020年8月9日未明、キャンプ場にクマが出没。テント内の食料を漁ろうとしたところ、テントに泊まっていた50代女性の足にクマの爪が刺さり、けがをする事故が発生。そのおよそ11時間後、人を襲ったクマの姿が防犯カメラに捉えられていました。ゴミ箱を漁るクマ…その数分後。建物から離れるクマの数メートル先から人の姿が…クマの存在に気付いていない様子で一歩間違えば、さらなる事故につながる可能性がありました。
(香取草平主任)「お客様に対する被害を防止しながら、クマを守っていく必要がある。非常に難しい場所。(私たちには)2つの使命がある。1つはもちろんクマの生活を変えない。2つ目は観光地としてクマと適切に共存して安全な観光地を目指す」
“クマの生息環境を維持しながら人的被害を未然に防ぐ”ことを目標に上高地では、人とクマの住むエリアを明確に区分けしています。
(環境省中部山岳国立公園管理事務所松野壮太管理官)「観光利用する人もいれば奥に行くにつれて登山利用の人もいる。そうした利用実態に合わせてゾーニング分け(区分け)をしています」
観光地全体を4つのエリアに分け対策。対応も厳密なマニュアルに従い管理され、目撃情報などは即座にネット上に共有されます。こちらのキャンプ場では…
(小梨平キャンプ場道鬼梨香支配人)「クマ対策として食糧庫、フードロッカーをこちらに置いてます。これを設置してからは全て食べ物飲み物も水以外のものをこちらにしまうように指導しています」
3年前の人身被害の影響もあり、徹底的にルール化したといいます。キャンプ場で一夜を過ごした人は…
(愛知県からのキャンプ客)「全然安心して泊まれる」
Q.クマ対策がとられていることは?
「すごくいいことだと思います」
さらに散策エリアにはクマ監視網が…全部で12台のセンサーカメラを設置し夜間などの監視も行っています。そして人の往来が最も多いホテルでも対策が―。
(五千尺ホテル上高地丸山政幸支配人)「クマ対策の一つとして過去は木で囲っただけのゴミステーションだったのですが、コンテナを入れて、夜間に関してはシャッターを閉めて完全にクマの侵入を防ぐという対策の一環です」
独自でコンテナを購入し対策しているホテル。こうした取り組みにより散策エリアでゴミを漁るクマは、2年前から現れなくなりました。クマ対策の要は訪れる人の意識だといいます
(自然公園財団上高地支部香取草平主任)「私たちが生態を深く知って、きちんと対策というのがどういうものなのかを1人1人がきちんと理解した上でここの観光地を楽しむ。私たちが深い理解と強い意識を持って自然に影響を与えないように行動していくということ」


■スタジオ解説“冬眠しないクマ”続出か2つの原因

(小木逸平アナウンサー)
クマと人間の共生関係に詳しい東北芸術工科大学・田口洋美名誉教授によると、“2つの原因”で冬眠しないクマが増える恐れがあるとのこと。
1.「凶作」→今年はクマの主なエサ・ブナの実などが少ない中、鹿などを食べ“肉の味を覚えたクマ”が一定数現れる。冬眠で穴に入っても体温が下がらず、寝つけずに外に出てしまう【穴持たず】と呼ばれるクマになる恐れがある。この「穴持たず」は“狂暴化”、
そのうえ眠く判断力が鈍った状態で人に襲い掛かかってしまう危険性があり特に警戒必要。
2.「暖冬」→多くのクマは空腹のまま無駄なエネルギーを消費しないよう早く冬眠に入るとみられるが、暖冬で穴の温度が高いと目覚めて外に出てきてしまう。

(渡辺瑠海アナウンサー)「暖冬と言われるこの冬もかなり心配になりますね…」
(小木逸平アナウンサー)
田口氏は、「この冬も同じように冬眠できないクマが増えた場合、冬山にエサが無いので普段は来ない人が住む場所にまで行動範囲を広げる恐れがあり「人間側も行動に注意」が必要」とのこと。

Q.太田さん、クマが冬眠しないと自治体も警戒が長く続くことになりますよね?
(共同通信社編集委員太田昌克氏)
「私の故郷の富山でもクマの被害が出ている。富山市のクマ対策の担当者に話を聞くと、『暖冬で雪が降らないなら(冬の間も)警戒を強めないといけない。とはいえすでに柿の木の伐採など打てる手は打っていて、妙策はない』クマで有名なカナディアンロッキーでは、ツナ缶にミートローフ缶、あらゆるゴミの臭いが残らないよう洗い、フタ付きのゴミ箱に捨てていた。冬も気を抜かずクマをおびき寄せないよう出来る対策をしっかりとっていきたい」

11月12日『サンデーステーション』より

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