“急増”アーバンベア驚き実態!人間の音を“聞き分け”[2023/11/14 20:25]

 連日、相次いでいるクマ被害についてです。番組では「新潟のクマ博士」の調査に同行しました。すると、人間界の音を聞き分けている実態が明らかとなりました。長年の研究から見えてきたクマの驚きの生態と警戒点です。

■新潟「クマ博士」の調査で新発見

 激しく威嚇する雌のツキノワグマ。鋭い爪で何度も攻撃。よく見ると、近くには子グマがいます。今、市街地での出没が相次いでいる親子グマ。映像から今の時期、警戒すべきことが見えてくるといいます。撮影したのは20年以上、ツキノワグマの生態を研究する新潟の“クマ博士”・箕口秀夫教授です。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「威嚇行動の後、不用意に近付くと攻撃される」

 “クマ博士”の調査に同行。貴重な映像から新たな発見が。高い学習能力から人間の音を“聞き分けて”いることも分かってきています。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「生活をしているうちに学習する。だから全く反応しない」

 過去最多のクマ被害をどのように防げばよいのでしょうか。

■“アーバンベア”カメラ捉えた最新生態

 番組の取材班が向かったのは新潟県東部の阿賀町。新潟大学農学部・箕口教授のツキノワグマの生態調査に同行させてもらいます。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「クマよけの鈴とクマ撃退スプレー」

 クマ対策をして森の中へ。箕口教授は人の生活圏に近い森の中に自動撮影カメラを10台ほど設置。2週間に一度、映像データを回収して分析しています。2本の木にくくり付けた横木。この仕掛けの上に付けるのはクマが好むハチミツと香りが強いブランデーを混ぜて入れた容器です。個体識別の調査のため、クマをおびき寄せます。

 先月30日の映像。現れたツキノワグマが横木に前足を掛けてハチミツの容器の匂いをかいでいます。立った状態のため、胸の白い模様がしっかりと認識できます。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「胸の白い斑紋。その大きさや形は人の指紋のように一頭一頭異なる」

 複数のカメラで個体を識別することで、そのクマの行動範囲をある程度知ることができるのです。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「冬眠を控えたクマはとにかく栄養を取らないといけない。餌(えさ)が比較的、簡単に取れる人里に餌を求めている」

■犬の鳴き声で母クマ“何度も威嚇”

 特に警戒が必要なのが子グマを連れた雌の親グマです。鋭い爪で執拗(しつよう)に攻撃を加える雌の親グマ。その訳は…。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「犬を連れた人が近付いてきて、それにクマが気付いて驚いて威嚇をする」

 犬の気配を察知した瞬間、母グマが威嚇。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「子グマを守ろうと思って威嚇をしている。神経質になっているので十分、気を付ける必要がある」

 一方、子グマはすぐさま木に登っているのが分かります。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「敵というか、逃げる対象に遭った時には一目散に木に登って逃げる行動をよく取る」

 母グマが威嚇している間に子グマは木を降りて森の奥に逃げていきます。子グマを追って親グマも去っていきました。この時、目の前に人がいたら被害を受ける恐れが強いと警鐘を鳴らします。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「母グマの先に人がいた場合、人がさらに母グマに近付いていくと、かなり危険な状態になってしまう」

■高い学習能力 人間の音“聞き分け”

 さらに、別の映像からは…。

 高い学習能力があるとされるクマ。8年前と今年の映像を分析した箕口教授は人間の音を“聞き分けている”クマの進化に気が付きました。

 8年前の映像。住宅近くの森に現れたクマ。すると、近くで鳴ったのは「ししおどし」と呼ばれる田畑から鳥獣を追い払う装置の音です。しかし、クマはその音に驚く様子は見受けられません。ただ、この後に近くの道路を車が通り過ぎます。車の音にビクッと驚いた様子を見せ、その場を立ち去ります。この違いは一体。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「車の音に関しては止まって人が降りてくる。“音の後に何が起こるのか”ということが『ししおどし』と『車の音』では全く違うことをクマが学習していると考えられる」

 8年が経った今、さらに新たな学習をしているとみられます。車が通る音に全く反応していません。

 新潟大学農学部 箕口秀夫教授:「今年の映像、いくつか車が通っている動画があるが、すべてでクマは無反応。関心を示さない状況。クマにとっては日常茶飯事。車が通ることが当たり前。車が通ったからといって不都合なことはないと学習。人里・市街地に行くとクマにとって大変なことが起こる。きちんと学習させることが必要」

 人間に慣れてきたクマは人里に下りてくるため、遭遇するリスクが高まります。

 阿賀町 鳥獣被害対策専門員 江花一実さん:「クマや大型獣は『山にいるもの』という既存の考え方があったが、これからは『身近にいるもの』と意識を変えていかないと。いつ遭っても対応できる、遭わないよう対応できる知識を皆が持つ必要が出てくる」

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