知られざるヒグマの生態“お尻スリスリ”教授は「繁殖期じゃないのに珍しい」[2023/11/23 20:20]

 クマの奇妙な生態が明らかになりました。北海道でヒグマが木にお尻をこすり付ける様子です。この時期には珍しいとベテラン研究者の方も驚く事態です。

■「冬眠前に初めて見た」驚き生態

 雪が積もる北海道の林道を親子のヒグマが歩いていきます。気温はマイナス4℃。冬眠の時期が迫るなか、謎が多いクマの生態を捉えた新たな映像が…。

 木に背中をすり付けているのは雌と見られる成獣。すると、お尻をスリスリ。この行為は約50秒続きます。自動カメラでの撮影に成功した写真家の黒澤さんは…。

 写真家 黒澤徹也さん:「お尻スリスリするヒグマ。あんなに長く執拗(しつよう)にやっていたのは初めて見た。繁殖時期なら分かる。お尻から出るフェロモンをこすり付けている可能性があるが、今は繁殖時期ではないので、この時期にやるのが不思議」

 クマの繁殖期は5月から7月。この時期には特に、雄が雌に存在をアピールするため、自らのにおいを木にこすり付ける「背こすり」が頻繁に行われるといいます。

 30年以上ヒグマを研究 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「クマの場合は雄も雌も単独で生活している。個体同士が出会わなくても自分の存在を知らせたり相手の存在を知ったりするため、におい物質を介してコミュニケーションを行う」

 ただ、冬眠前の時期に雌とみられるヒグマがお尻を執拗にこすり付ける行為が確認されたのは「非常に珍しい」と驚きを隠せません。

 30年以上ヒグマを研究 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「冬眠前の食いだめの季節に(お尻をこする)行動をするのは私も初めて見た。お尻をこすっている個体は雌のように見える」

■匂いに誘われ?オスが次々と

 雌がお尻をこすり付けたのは先月31日。その翌日、同じ場所に現れたのは雄のヒグマです。木に鼻を近付け、においを嗅いでいるように見えます。

 30年以上ヒグマを研究 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「雌がお尻をこすっていた辺りを嗅ぐ時に少し口を開いて、嗅覚でにおいを嗅いでいるだけでなく口の中ににおいを入れているように見える。におい物質の中に含まれるフェロモン様物質を体の中に送って受容する行動に見える」

 さらに、その後も雄とみられるヒグマが度々現れ、木のにおいをかいだり、背こすりしたりする姿が確認されました。

 写真家 黒澤徹也さん:「実はあの背こすりの木も1カ月以上クマが映っていなかった。あの雌がお尻をスリスリしたら次から次へと雄グマや小さいクマが色々やってきていた」

 雌から雄へ「においのコミュニケーション」。クマの生態をひも解くための新たな発見につながるかもしれません。

 30年以上ヒグマを研究 酪農学園大学 佐藤喜和教授:「分からないことが多いが、背こすり木は雄から他の個体へにおい発信をする場所と思っていたが、今回のように雌からの情報発信にも使われているのかもしれない」

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