「北陸に来て」石川の宿泊キャンセル“8億円超” “応援割導入”に温泉街の切実な願い[2024/01/28 11:30]

 能登半島地震の復興に向けた観光業の支援策が発表されました。宿泊旅行代金の50%を政府が補助する北陸応援割。今回は被害の大きかった能登地域は対象となっていません。「サンデーLIVE!!」では、それぞれの被害に悩む加賀と能登の温泉街を取材。復興に向け奮闘する観光業者の胸中とは…。

■通常営業を続けるも「6割キャンセル」加賀・山代温泉

 多くの文化人が愛した石川県の名湯、山代温泉。能登半島地震で震度5強の揺れに見舞われたものの、被害は比較的少なく済みました。しかし、地震の風評被害が、地域経済を支える観光業に暗い影を落としています。

取材ディレクター 山田寛明
「本来の週末であればにぎわう場所だということですが、人通りはまばら、閑散としています」

 明治元年創業の老舗旅館「たちばな四季亭」。

たちばな四季亭 和田守弘社長
「少し配管が損傷してしまいましたけども、すぐに修理して大事には至らなかった。そのまま温泉もご利用いただけました」

 例年この時期は満室続きの書き入れ時だということですが、地震後、およそ6割の予約がキャンセルとなりました。

 石川県旅行業協会によると、およそ4万人が宿泊をキャンセル、損失は8億4000万円を超えるといいます

愛知からの観光客
「(被害が)ひどい場面を結構見ているので、(石川県)全体がそうなのかなって、私も勘違いしていた」

■北陸新幹線の延伸控え…応援割に期待「能登の復興を下支えする」

 観光客の呼び戻しが急務となるなか打ち出された政府の観光支援「北陸応援割」に、旅館は大きな期待を寄せています。

たちばな四季亭 和田守弘社長
「3月16日、いよいよ北陸新幹線加賀温泉駅開業ということで、機運も高まってきています。(応援割の開始が)3月から4月ということで、非常にいいタイミングだと思います」

 山代温泉観光協会では、来月から売り上げの一部を能登地域の温泉地に寄付することを検討しているそうです。

たちばな四季亭 和田守弘社長
「日頃から能登との交流は盛んでもありますので、同じ石川県民として復興を下支えできるような観光業を力強く推進していきたい」

■建物に大きな被害も「重傷者ゼロ」の訳は…七尾・和倉温泉

 一方、今回応援割の対象にはならず、再開の目途が立たない温泉街は…。

取材ディレクター 瀧尾春紀
「石川県有数の観光地、和倉温泉です。こちらでは10日ほど前に源泉のくみ上げが再開し、街には温泉の匂いが漂っていますが、通りに観光客の姿は全くありません。地震の被害も大きく、辺りには復旧の工事音だけが響き渡っています」

 七尾市の中心部に位置し、1200年の歴史をもつ和倉温泉。20余りある旅館は当面営業できる見込みがなく、全館休館しています。

 創業200年以上の伝統を誇る「美湾荘」の若女将、多田直未さん。

「美湾荘」若女将 多田直未さん
「ここ建物と建物の継ぎ目なんですね」
「(Q.あちらの棟には行けるんですか?)行けますよ。足元に気を付けていただければ」

 建物の継ぎ目は、割れることで揺れの力を逃がす設計になっているそうですが…。

「美湾荘」若女将 多田直未さん
「最初見たときは大変なことになったなと。何も手を付ける気になれないというか、しばらく放心状態みたいな…」

 いまだにほとんど手を付けられていない客室もあるといいます。

取材ディレクター 瀧尾春紀
「お茶などが当時のままの状態。まさに“着の身着のまま”出ていったような状況が伺えます」

 幸い、和倉温泉全体で重傷者はいなかったそうです。その背景には、長年愛され続ける観光地ならではの“従業員の姿勢”があったと話します。

「美湾荘」若女将 多田直未さん
「和倉温泉はお客様に対する責任感、気持ち、ホスピタリティーが強いので、そういう思いが、避難の時に自分のことを投げ出してでも揺れる館内に皆入っていって、皆さんに『逃げて下さい!」とできた」

■見えぬ再建への道「北陸観光が能登復旧につながる」

 いまだ水道が復旧せず、片付け作業も思うように進まないなか、多田さん自ら作業を進め、輪島や珠洲などの復旧工事にあたる業者に使える部屋を貸し出しています。

「美湾荘」若女将 多田直未さん
「大変なことが起こったなとは思ってますけども、別に自分だけが不幸なわけじゃないですし、皆で立ち上がっていくしかないと思ってます」

 多田さんは自分たちが観光客を迎え入れることができない今、北陸の他の観光地を訪れてもらいたいと話します。

「美湾荘」若女将 多田直未さん
「北陸に来ていただくことが、能登半島の応援、そして奥能登のまだ大変な思いをされている方の一刻も早い復旧につながっていくと思いますので能登半島、石川県は観光の裾野。その一端を担えるように一生懸命頑張っていきたいです」

■「北陸応援割」どう使う?能登地域は“70%支援”検討

 北陸応援割の対象は宿泊を伴う旅行商品で、代金の半額・50%まで、1人1泊につき2万円を上限に補助します。対象は石川、富山、福井、新潟の4県(能登地域を除く)で、期間は各県が復旧の状況を踏まえて判断するものの、3月から4月の大型連休前までを念頭に置きます。

 新幹線やバスなどの交通とセットになったツアーも対象で、2泊以上の場合は最大3万円、2つの県以上に宿泊する場合は3.5万円が上限です。

 対象となっていない能登地域について、岸田総理は「適切なタイミングで(旅行代金の)割引率を70%にするなどのより手厚い観光需要の喚起策を検討する」としています。

(サンデーLIVE!! 2024年1月28日OA)

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