瓦礫の中で見つけた“晴れ着の前撮り”妻と娘の形見を捜す父 家族がビルの下敷きに[2024/01/28 23:30]

能登半島地震の発生からまもなく1カ月。
震度7を観測していた輪島市の倒壊現場には、犠牲になった家族の形見を探す父の姿がありました。

■家族がビルの下敷きに…妻と娘の形見探す父

28日、輪島市で遺品を探しているのは、妻と娘を亡くした楠健二さん(55)。
(妻と娘を亡くした楠健二さん)「これが見つかってよかったよ。娘の成人式のね、去年前撮りした時の…」
長女の珠蘭さん。今年、成人式を迎えるはずでした。
(楠健二さん)「やっぱり、現実受け入れられないじゃん、いまだに。目の前にいた2人を助けられないんだよ…そんな悲しいことある。ないよたぶん…」
倒壊したビルの隣で飲食店を経営していた楠さん。当時、家族5人、建物の3階にいました。地震で隣のビルが倒壊し、楠さんの自宅は下敷きに…
余震の中、救助活動は困難を極めました。祈るような気持ちで見守る楠さん。しかし、2人は帰らぬ人に…。
(楠健二さん)「とりあえず、何か時間だけが過ぎてるから探しとかないとダメかなと…亡くなった女房とか娘に怒られそうだから…とりあえず捜さなきゃいけないかなと…」
楠さんが見つけたのは、妻が好きだったジブリのDVDと長女の写真でした。
(楠健二さん)「生きていればさ、亡くなっちゃったから死んじゃったから止まっちゃってるんだ、そこで。これからどうしようかこうしようか…分からない」

■「生活の足」を“救出”倒壊建物から車引き出し

七尾市などで一般ボランティアの活動が始まる中、奥能登ではまだ受け入れのめどが立っていません。そんな中、活躍しているのが、災害支援を行うNGO、エキスパートの集団です。
(佐々木一真アナウンサー)「重機を乗せたトラックが現場へと向かって行きます。あちらもマンホールが浮き上がっていますね」
向かったのは、輪島市・門前町。依頼されたのは、倒壊した建物から車を引き出す作業です。
(佐々木一真アナウンサー)「道路が真ん中から割れてしまっていますね。重機もここから通る事ができないということで、このように側道を使ってですね重機が進んでいきます」
このNGOは、地震発生翌日から能登半島に入り、重機を使ったボランティア活動を続けています。
(佐々木一真アナウンサー)「こちらが今日車を引き出す作業を行われる現場です。家屋の1階部分は完全に潰れてしまっているのがわかります」
(災害NGO結大城秀一さん)「車の動線を確保できる状態を作ってから車を救出する形になる」
心配そうに見つめるのは、この家に住む木下さん。
(被害を受けた家の住人木下孝次さん(74))「この納屋を取り壊しに来る時間まで、この状態かなと思っていた」
作業開始から1時間。
(佐々木一真アナウンサー)「作業開始時には見えなかった奥に停めてあった車がようやく見えるようになりました。あの車をこれから取り出します」
(災害NGO結大城秀一さん)「手前の車は見させて頂いたんですけど、乗れるっていう状態ではないので、僕らは生活で使えるっていう車を救出させて頂いている」

作業中、思わぬ発見もありました。
(佐々木一真アナウンサー)Q.これは何のお写真ですか?
(木下孝次さん)「孫です」
Q.発表会か何かの?
(木下孝次さん)「うんだと思うんだけどね」
Q.今、おいくつなんですか?
(木下孝次さん)「もう二十歳になってます」
「お写真見つかって良かったですね」
開始からおよそ4時間、木下さんが見守る中、ついに…
(佐々木一真アナウンサー)「午後1時半です。今トラックが引き出されました。トラックを傷つけないように、ゆっくり慎重にただ確実に作業が行われています」
「トラックの大部分が外に出てきました。ゆっくりとバックして道路の方へと出して行きます。エンジンもかかっていて、車も大きな損傷はないように見えます」
(木下孝次さん)「いや、うれしいです」
Q.何日ぶりですか?
(木下孝次さん)「1日の夕方からですから28日ぶりですか」
「いや感謝です、感謝のみ」

■「確かめたい」“復興バス”で震災後初めて故郷へ

被災者の交通手段にも、復活の兆しが見え始めました。
(佐々木一真アナウンサー)「金沢駅では、奥能登へと向かう特急バスの運行が再開されました。こちら珠洲へと向かうバスには多くの方が乗車しています」
能登方面と金沢を結ぶ、北陸鉄道の特急バス。復興支援のため25日から一部再開されました。中には複雑な思いで、被災地へ向かう人も…
(土井真知子さん(75))「地震の前に(先月)30日に金沢に帰ってきていました」
金沢市に住む土井真知子さん。珠洲市にある実家を地震後初めて見に行くといいます。
(土井真知子さん)「どんなふうに壊れているか。悲しいから見るなって連絡はあるんですけど、やっぱり確かめたい」
午前7時。15人を乗せたバスが、珠洲市に向けて出発。
(佐々木一真アナウンサー)「ここはまだ信号機の明かりがついていないですね」
走ることおよそ4時間…1カ月ぶりとなる故郷に到着しました。果たして実家は無事なのでしょうか…
(土井真知子さん)「これです…瓦が…どうするこれ」
初めて目にする光景。母屋は扉が外れ…家の中には物が散乱していました。さらに…
(土井真知子さん)「階段が外れて落ちてる。全然、影も形もない…」
土井さんが見つけたのは両親の写真。
(土井真知子さん)「これ持って帰るかな。ウチの父親と母親。悲しい。すごい悲しい」
家族との思い出が詰まった、大切な家。これまで毎月のように訪れていましたが…
(土井真知子さん)「地震の前は、ここをきれいにして、時々来ようかなと思ってたんですけどでもここまでひどいと、もういいかって感じですね」
土井さんには、会いたい人が…
「ごめん、来たわ」
珠洲市内に住む親戚の宮山さんです。
(宮山久乃さん(76))「うれしいんですけど、気を使ってもらって申し訳ない」
無事を確認して一安心。しかし、住宅は…
(宮山久乃さん)「天井落ちて、雨漏りしてるから、全部こんなんなってしまって…今、毎日を過ごすのに精いっぱいって感じ」
先が見通せない中、土井さんは生まれ育った家を守っていきたいと考えています。
Q.今どんなことをお伝えしたんですか?
(土井真知子さん)「『再建するからね』って言いました」
Q.ご両親もご覧になってますかね
「そうですね。ちゃんと見てると思います」

1月28日『サンデーステーション』より

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