春は桜が駅舎彩る 「のと鉄道」 復旧目指し代行バス開始[2024/01/29 19:07]

 復旧に向けて動き始めました。能登半島地震の後、全区間で運休が続いていた「のと鉄道」が代行バスの運行を開始。高校生たちが列を作りました。

■復旧急ぐ「待ってくれる人のため」

 365日、止まることなく走り続けてきた鉄道は今、人々を乗せて走ることができません。

のと鉄道 中田哲也社長(61)
「これは浮き上がってドンと沈んで」
「(Q.元々は段差はない?)これはきれいにフラットだった」

 29日、のと鉄道の中田哲也社長が被災した駅の現状を知ってほしいと案内してくれました。

のと鉄道 中田哲也社長
「ここは穴水駅構内の車両を整備するための検修庫の建物。まっすぐ行ってYの字になっているのではなく、(線路が)グネグネになっている。あれは(地震で)揺さぶられた」

 Y字に分岐する手前で線路が曲がっています。地震前の写真では、点検のための電車がまっすぐに入っていく様子が分かります。

 震災からまもなく1カ月。鉄道会社は復旧を急いでいます。

のと鉄道 中田哲也社長
「私たちは鉄道マンなので、『地域の足として必ず復活するぞ』という強い気持ちのなかで復旧作業を頑張っている。待っていてくれる人がいるということに尽きる。そのためにも地域の足として公共交通の使命を果たしていく、その一点が僕たちのモチベーション」

■ドローンで見る 線路のゆがみ

 「のと鉄道」は石川県七尾市と穴水町を結ぶ全長33.1キロ。能登半島の沿岸から望む青い海。四季折々の景色。観光列車として…。人々の生活の足として…。年間、延べ48万人が利用していました。

 ところが、地震の影響で甚大な被害が…。山肌が崩落して土砂でふさがってしまったトンネル。線路がゆがむ被害も数多く確認されています。

 取材班は28日、ドローンを使い、のと鉄道の線路を上空から撮影しました。一見、問題なく続いているようにも見える線路。高度を下げていくと…。ところどころ、ゆがんでいるのが分かります。

 七尾湾の沿岸を走る「のと鉄道」は穴水駅から七尾駅まで合わせて8駅ありますが、復旧の見通しが立たないことから、全区間で運転を取りやめています。

■久しぶりに友と通学「うれしい」

 29日、七尾市にある「和倉温泉駅」の前には…。29日から鉄道の代行バスの運行が始まりました。毎日、朝と夕方に上りと下り、合わせて14便です。

代行バスに乗る高校生
「電車が動いていない時は(親に)学校まで送り迎えしてもらっていた」
「(Q.久しぶりに一緒に通えてうれしい?)うれしいです」
「うれしい?ありがとう」

 8つの駅の近くに停留所があります。運賃は鉄道と同じで、定期券はそのまま使用できます。

高校生
「久しぶりで少し元に戻った感じでうれしい。毎日いっぱい本数が走っている鉄道は早く戻ってきてほしい」

■車両で寝泊まりも…復旧し前へ

 人々が望む鉄道の再開。果たしていつになるのでしょうか。地震の直後、のと鉄道の社員たちは穴水駅に停車させた車両を仮の事務所として使い、寝泊まりしていました。

のと鉄道 中田哲也社長
「すぐ向こうに土砂崩れが発生している。さらにもうしばらく行くと土砂崩れが発生していて、復旧のめどが全く立っていません」

 土砂崩れが起きたのは穴水駅と隣の能登鹿島駅の間です。春には桜の花が駅舎を彩る「能登鹿島駅」。県外からも多くの観光客が訪れ、にぎわっていました。

 ただ、地震後には駅のホームから人の姿は消えました。

のと鉄道 中田哲也社長
「僕たちが負けていたら駄目だよね」

 社長や社員たちは前を向いて進んでいます。

のと鉄道 中田哲也社長
「ただ、今みたいに列車の線路自体が復旧していないので、まだまだ道のりは長い。線路がつながってもしばらくは安全性を点検しながら進まなければいけないので、まずは安全性の問題が一番大事だと思う。そこが一番。(バスの)代行輸送はほんの始まりにすぎないので、これからもしっかり復旧に向けて社一丸になって取り組んでいく。それが鉄道事業者の使命だと思っている」

 のと鉄道は来月中旬に一部区間で運転再開を目指しています。

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