【能登半島地震から1カ月】「避難所としての学校」その機能と課題とは[2024/02/01 17:20]

 元日に発生した能登半島地震から1カ月が経った今も石川県内では45の学校が避難所となっていて、多くの被災者が身を寄せています(2月1日正午現在)。

 【災害が起きた時の学校】
 大規模災害が起きた時、学校が第一に果たすべきは児童生徒や教職員の安全確保です。電話連絡はもちろん、1人1台配布されている端末なども用いた相互連絡が取られることになります。

 それと同時に学校施設が担うことになるのが地域住民の避難所としての役割です。1995年の阪神・淡路大震災や2004年に起きた新潟中越地震においても学校は避難所として被災者を受け入れ、物資を共有する拠点となるなど多くの役割を果たしました。2011年の東日本大震災では学校が避難所として長期間にわたって利用されました。

 【避難所となる学校の機能】
 東日本大震災を受けて災害に強い学校施設の在り方が検討され、2016年の熊本地震の後の7月には緊急提言が出されるなど避難所としての学校の整備が進められてきました。文部科学省は避難所となる学校施設に必要な機能を以下のように示しています。

 ◇耐震性、耐火性
 ◇電気、ガス(太陽光発電の整備)
 ◇トイレ(断水も想定し、マンホールトイレや簡易トイレの組み合わせ、プールの水をトイレに流せるようにしておく)
 ◇情報通信(停電に対応した校内放送、防災無線の受信設備、相互通信可能な無線設備)
 ◇備蓄倉庫(食料・飲料の備蓄を安全な場所に確保)

 これらを想定される避難者数や地域特有の災害を明確にしたうえで確保することが求められます。

 【学校施設の現状と課題】
 文部科学省の調査によりますと、2022年12月時点で全学校の91.5%にあたる2万9856校が避難所に指定されています。防災機能を確保している学校の割合は「非常用発電機」が73.2%、「ガス設備等」が73.3%、「断水時のトイレ対策」が73.6%、「通信設備」が82.9%、「備蓄倉庫等」が82%、「飲料水の確保対策」が80.8%となっています(※それぞれ避難所指定の学校数に対する割合)。

 学校は本来、教育施設であることから、これまでの避難生活でもトイレや電気などの確保において様々な不具合や不便も発生してきましたが、事前に備えるということは何より重要になります。

 また、避難所となる学校においては学校施設利用計画を策定することも重要です。学校が避難所となった時にどう備えてどのような対応を行う必要があるのかを防災担当部局と連携して作成します。避難者の居住スペースや運営に必要なスペースの設定、教育活動の再開を見据えた開放が必要です。

 そして、この計画を利用が想定される地域住民に周知し、共有することが最も重要です。文科省の調査で計画を策定していると回答したのは避難所に指定されている学校の68.9%にとどまっています(※2022年12月時点)。

 今回の能登半島地震においては地震の発生後に避難所となった金沢市や富山市の学校で玄関などのガラスが割られていました。原因は明らかになっていませんが、解錠する方法が分からずに割って鍵を開けて避難した可能性も考えられます。

 地震の感知による自動解錠や遠隔で開く仕組みの導入も検討されるべきですが、停電時や安全確認など運用面の整備が求められます。災害時に自らが向かう避難所の学校にどんな機能があるのか、どのような対応が可能なのかを知っておくことが命を守ることにつながります。

 【避難所としての学校のこれから】
 被災地では徐々に学校が再開されるなど一歩ずつ復興が進むなか、「避難所としての学校」は課題を抱えています。学校設置者や行政だけでなく、関係者を巻き込んだハード面とソフト面を合わせた施設整備と運営が必要になります。

 地震による津波、台風や大雨など自然災害が多い日本では被害を未然に防ぐことや最小化するために地域や学校での防災教育も重要です。今回、文科省は全国の教育委員会と石川県をつなぎ、教職員の派遣を行うなど子どもたちの継続的な学びに向けて支援を進めています。これまでの経験や学びを生かし、学校が本来担うべき「教育活動」と「避難生活」が良好な環境で共存することが求められています。

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