輪島「恩返し」停電も営業続けるスーパー密着[2024/02/02 20:26]
地震による停電が続くなか、一日も休まず営業を続けるスーパーがあります。「地元に恩返ししたい」、そんな思いがありました。
■“真っ暗”懐中電灯 頼りに商品探し
能登半島の北部・石川県輪島市の町野町粟蔵地区。60棟の住宅のうち、9割に及ぶ55棟が倒壊したといいます。地区で唯一のスーパーマーケットは建物が残っています。
停電して真っ暗な店内。お客さんが懐中電灯を照らしながら商品を探しています。調味料をかごに入れていきます。
創業から62年目を迎えた「もとやスーパー」。停電が続くなか、地震が起きた元日から一日も休まずに営業を続けています。地区に残っている人たちが続々と買い物に訪れます。
■客足途絶えず 隣人も九死に一生
2代目店主の本谷一郎さん(75)。
もとやスーパー2代目 本谷一郎さん
「(Q.これはホットにしている?)そうです。来たお客さまにサービスであげている。ともかく私らもそうだけど、地元にも元気になってもらいたい。その一念で」
「地元に恩返しがしたい」、その思いから妻や長男とともに店を切り盛り。2日は孫たちも手伝っています。たばこ1箱を買った男性はお隣さんです。
スーパーの隣に住む男性
「(地震発生時)家の中で4人いて、妻と子どもと母親と猫3匹。家が潰れちゃって」
倒壊した家の下敷きになった家族を必死で救出したといいます。
スーパーの隣に住む男性
「ここからしか出られなかったので、ここから3人出して皆に助けてもらって、ここで妻、子ども全員、骨折して、腕、腰、顔面。近所の皆が集まって助けてくれて小学校に避難した。町の壊滅的な状況を撮影してもらって、全国の人にこの状況を見てほしい」
■「地域のために存続を」 食料販売
この地域は石川県輪島市、珠洲市、能登町の中心から離れていて、地震の直後は孤立状態にありました。今もほとんどの住民が避難生活を送っています。本谷さんの自宅も倒壊しました。
もとやスーパー2代目 本谷一郎さん
「だからここ(スーパー)を何とか地域のために存続させたい。今、そのためにない頭を絞っている」
商品が並ぶ棚の裏には…。
もとやスーパー3代目 本谷一知さん(46)
「これが子どもたちが作ってくれた部屋」
カメラのライトをつけると…。倒壊した自宅から持ち出した家具です。
もとやスーパー3代目 本谷一知さん
「(Q.ベッドはいつ作った?)きのう完成した。(父親が)きょう初めて寝た」
■“ミシュラン”職人 炊き出し 食材調達
被災者を支援する人にとってもこのスーパーは貴重な存在です。
近くで日本料理店を営んでいる輪島出身の冨成さん(41)。
「日本料理 富成」を営む 冨成寿明さん
「2021年のミシュランガイドで、星1ついただきました」
スーパーからほど近い避難所で一日3食、炊き出しのボランティアを続けています。
「日本料理 富成」を営む 冨成寿明さん
「僕らみたいなプロが調理しないと、400人前、500人前は作れない」
復興に向けて動き出している人々。スーパーを営む本谷さん家族は、これからもこの場所で支え続けていくといいます。
もとやスーパー 本谷理知子さん(73)
「私はこれしか生き方ができない。すごいと言われようが何と言われようが、これしか生きる術がないんです」