支援が来ないなら自分たちで…島の漁師が道路を自ら修繕 いち早く漁を再開した能登島[2024/02/02 23:30]

能登半島の被災地では、水道の復旧が少しずつ進んではいますが、地震から1カ月を過ぎた今も広範囲で断水が続いています。なかでも復旧が難航しているのが、七尾市にある能登島です。この島は昔から、漁業と観光業で栄えた場所で、石川県民にとってのリゾート地でもあります。島の人々は今、“自分たちの力”で“かつての生活”を取り戻そうとしています。

◆能登地域で一番乗り 漁を再開

被災した能登地域で、最も早く漁業を再開したのが、えの目漁港です。能登で代々受け継がれる、定置網漁。仕掛けた網に入ってきた魚を、じわじわと追い込み、集めていきます。

えの目大敷網(株)坂本一之さん(40)
「勝手に入っていく仕組み。ここに(魚が)たまるように。楽しみですよ」

立山連峰から富山湾に注ぐ、ミネラル豊富な地下水によって、能登の海には、多種多様な魚が集まります。

えの目大敷網(株)木村純也さん(40)
「(地震後)2日間くらいは、周り見てひどいな、どうするんかなと。船も網も無事やったし、仕事できるんやと思って。よかったですよね。(Q.やっぱり漁に出られるのは?)ありがたいです。本当にありがたいです」

えの目漁港の再開を後押ししたのが『氷』です。出荷する魚の鮮度を保つため欠かせないものですが、地震による断水の影響で、えの目漁港では氷を作ることができません。そこに手を差し伸べたのは、金沢の市場でした。

えの目大敷網(株)坂本一之さん
「(金沢の市場が)トラックと運転手、便を出してくれて。ここまで(魚を)取りに来るんですけど、金沢の市場の氷も積んで来てくれる。それで再開できた。金沢の市場さんに頭が上がらない」

非常事態を前に、関係者が協力して、能登島の漁業を取り戻そうとしています。

えの目大敷網(株)坂本一之さん
「珠洲や輪島の漁師さんには、申し訳ない気持ちもある。すぐに漁も再開できた。石川県といえば『水産業』ですから、また前向いて力を合わせて、復興に向けて頑張っていければ」


◆人気の観光地…地震で“孤立状態”に

七尾湾に浮かぶ、人口約2500人の能登島。コロナ前には年間100万人が訪れていた、一大観光地です。

能登島観光協会会長 谷口和義さん
「最初は魚釣りで船を出して、その次は会社の人も『よかった。魚が美味しかった』と。簡単な民宿を始めたら、足並みそろえて皆さんが始めた」

美味しい魚と、美しい景色が、島の人々の暮らしを支えてきました。しかし、今回の地震では、その島の“弱さ”が浮き彫りになりました。七尾市の中心部とつながる2つの橋は寸断し、一時は孤立状態に。元の暮らしに戻る日はまだ見えません。


◆水道復旧は「4月以降」住民たちは

なかでも甚大な爪痕が残っているのが、島の東部に位置する、野崎町です。

徳永有美キャスター
「道路がかなり大変ですね。コンクリートが段差になっていて、車は通れないと思います」「このあたり一帯、住宅が並んでいたんだと思います。奥の方の家も潰れてますし、納屋も潰れていますね」

水道が回復しつつある七尾市ですが、能登島だけは、復旧時期が「4月以降」とされています。

大山直美さん(72)
「ひと月経っても変わらない。この状態。野崎の全体がこの調子で」

大山善治さん(75)
「一斉にワーッと作業に掛かってくれれば、先がちょっと見えてくるかな」

この野崎町で先月28日、震災後初めてとなる町の総会が開かれ、避難先からも多くの住民が集まりました。そこでは、道路の復旧が進まないことに不安の声も…。

住民
「野崎に来るまでの道がとても怖い」「それは市役所に頼まにゃ」「待っててもダメだというなら、せめて連絡を一生懸命してほしい」「役所はケツたたかにゃ動かないからな」

町会長 吉村泰男さん(67)
「ちょこちょことは(市が)やっているんですけどね。県道くらいで(工事は)終わるから、あとは自力でやるしかない。『ワシらでやるわ!』という人と『頼んでからやればいい』という人と、色んな意見があるから」


◆支援が来ないなら自分たちで

えの目漁港の近くでは、飛び出したマンホールを、車が通行できるように、自分たちで補修していました。

男性
「(Q.自分で直してるんですか)車も通られんので、少しでも車が通れるようになればと思って」

軽トラックで何度も何度も町を往復。作業の中心にいたのは、島の漁師たちです。

彦八定置(株)角屋透さん(35)
「(Q.漁の仕事をしてからここに)日中の仕事も終えてから。誰かがしないとね。(Q.行政を待っていると大変)いつになるか分からない」

彦八定置(株)角屋透さん
「(Q.能登島ってどんな島)みんなあったかいと思います。思いやりのある人が多い。島全体がみんな豊かで、明るい人が多い。協力的で」

いち早く漁を再開させたそのパワーは、漁業だけではなく、能登島全体の復活にも力を与えています。

徳永有美キャスター
「能登島の人たちに『今、何を求めますか』と聞くと『重機が欲しい』という言葉が返って来ました。今後、行政の手厚い支援は必ず必要になります。ただ、能登島の人たちは、奥ゆかしくて、忍耐強くて『順番がつく以上、自分たちが最後になるのはしょうがない』と話していました。他人を思いやる気持ちが、島の中だけではなく、島の外にも向いていて、若い力を原動力に、復旧に向け、皆さん頑張って進んでいます。ただ、今回、そういうパワーだけでは収まりません。早く支援の手が届くといいなと思います」

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