がれきの中から新映像…津波にのまれた車のドラレコ 響く悲鳴、地震発生時の映像も[2024/02/08 16:14]

 能登半島地震の被災地で、がれきの中から見つかった車のドライブレコーダーに、地震発生直後の様子が記録されていました。家屋が次々と倒壊していく様子や、津波から避難する高齢者の姿が映っていました。

 津波の映像が流れます。ご注意ください。

■がれきの中から新映像…建物倒壊の一部始終

 今もがれきが残る石川県珠洲市の住宅地。地震が発生した先月1日、この場所を津波が襲いました。

付近の住民
「やっぱりひどいですね。たぶん、この辺は(地震の被害よりも)津波の方が大きいんじゃないかと思います」

 地震発生当日、デイサービスの送迎車に設置されていたドライブレコーダーの映像です。

 車ががれきの中で手付かずだったため、最近になって映像が見つかりました。

 乗っていたのは介護スタッフの他に、80代と90代の高齢者6人。介護スタッフが利用者の家族を呼びに車を降りたおよそ30秒後、大きな揺れに見舞われます。

 高齢者たちが悲鳴を上げ、緊迫する車内。外では電線が大きく波打っています。

 地震発生からおよそ20秒後、画面奥の2階建ての建物が崩壊。車のすぐ横の建物も崩れてしまいます。

 車の後方で自転車を押して歩いていた男性は、激しい揺れで、まともに立っていられない状態になりました。

 発生からおよそ30秒後には、画面右側の建物が次々と倒壊。土ぼこりで、辺りが白く煙ります。

 道路の端の部分がひび割れ、大きな割れ目ができています。

運転していた介護職員 稲川久美子さん(59)
「今までとは違う、すごい大きな地震だったので。しかも、長かったので。家も倒壊してるし。海が近いので、津波がもしかしたら。今まで1回も来たことなかったんですけど。もしかしたら来るかなっていう思いがあって。まず、この場から逃げないとだめだと思いました」

 当時の様子をこう話す、稲川さん。送迎車を運転していた介護スタッフです。

■近くの人がおぶって運び…高齢者避難の現実

 揺れが収まった後、ほとんど着の身着のままで急いで避難を始める住民たち。車の外では、大津波警報を知らせるサイレンが鳴り響いています。

稲川さん
「車を前に進めようとしても、家が倒れていて前に進めないし。後ろも橋が段差があって、動かせない状態だったので。歩いていただくしかないなっていう感じで」

 高齢者たちを車から降ろして、避難することを決断した稲川さん。海の近くの住宅地から、高台にある高齢者施設に歩いて向かいます。

 1人ずつ車から降ろし、通りかかった人に手助けを頼みます。歩いて避難するのが難しい高齢者は、近くにいた人たちが数人がかりでおぶって運びます。

稲川さん
「自分は連れていけないと思ったので。どなたかお願いできませんかって声掛けしたら、おんぶして下さったので。あと2名を私、両脇に片手ずつ腕組んで上がって行ったんです」

 地震発生からおよそ7分、周りの人たちの助けも借りながら、6人の高齢者全員を車から避難させた稲川さん。エンジンを切ったため、いったん録画が止まりますが、それから30分後、振動に反応したのか自動的に収録を再開しました。

 映像には乗っていた車が津波にのまれ、濁流が辺りを埋め尽くす様子が捉えられていました。

 ドライブレコーダーが捉えた現場は、建物の原型が分からないほど崩れてしまっています。

 間一髪で高齢者たちを津波から救った稲川さん。自宅が被災し、珠洲市内の避難所に身を寄せています。

稲川さん
「(Q.もし取り残されていたら?)命はなかったんじゃないですかね。みんなを助けようって、ただそれだけです。的確だったかも分からないですけど、最終的にみなさん、けがもなく避難できたので。良かったなぁって、それだけです」

■津波到達時 自宅近くに…避難方法に課題も

 迫り来る津波からの避難。その難しさは別の地域でもありました。

 新潟県上越市で撮影された映像です。津波が河口付近をさかのぼり、堤防を乗り越え、住宅地に流れ込んでいく様子が捉えられていました。

 津波がまさに目の前に押し寄せてきた住宅の女性は、こう話します。

津波被害を受けた住民
「だいたい、ここら辺まで津波が来た。窓を開けてみたら、ものすごかった。それでびっくりした」

 外に出られず、夫と2人で2階に垂直避難をし、難を逃れたといいます。

津波被害を受けた住民
「避難は私もお父さんも年寄りだし、主人も92歳になるし。地震と津波が来ないようにお願いしてます、毎日」

 同じく河口付近に住む高齢夫婦は、夫が肺気腫を患い、酸素を送る機械が手放せません。避難が間に合わず、津波が到達したときはまだ自宅近くにいたといいます。

河口付近に住む夫婦
「皆、いつも訓練したり色々やっているけど、いざという時はそれの半分実行できるかどうか。九死に一生。全くその通り、九死に一生」

 上越市は新潟沖で津波が発生した場合、このエリアには地震から14分程度で津波が到達すると想定していて、強い揺れを感じた際は、数分以内に避難行動を始めるよう呼び掛けています。

 しかし、今回の避難について、住民にアンケートをとったところ、およそ8割の人が数分以内に避難を始めることができなかったことが分かりました。

 また、避難の方法に関しても課題があらわになりました。

 地震発生からおよそ1時間後の富山県滑川市の映像です。津波警報が発表されるなか、大渋滞が発生。海の近くの住民たちが、高台にある避難所にいっせいに車で移動したためです。

 東日本大震災以降、避難車両による渋滞が課題となっていますが、専門家は、地域に合った避難方法の策定が必要だと指摘します

防災システム研究所  山村武彦所長
「遠くの避難所に避難しなければ避難する場所がない地域もあれば、体の不自由な人、高齢者、子ども、乳幼児がいる家庭では、どうしても車でしか避難できない。地域ごとに、そこの特性に合わせた避難のルールを作る必要がある」

■中学生の集団避難 突然解除に保護者は…

 被災地では、復興への動きが少しずつ進んでいます。休校が続いていた輪島市立の小学校6校と中学校1校の登校が6日に再開。これで石川県内すべての公立小中学校で、登校が可能になりました。

登校した児童
「早く給食食べたいです」
「(ランドセルが)ごわごわします」

 一方、輪島市から集団避難していた一部の中学生が、避難先の施設から退所させられていたことが分かりました。保護者からは、反発の声が上がっています。

東陽中学校PTA 川原伸章会長
「子どもに不安しか与えないような状況になっていると思うんです。もう、これ以上子どもたちを振り回したくない」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年2月7日放送分より)

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