輪島から避難も「また復活すればいい」400年続く『御陣乗太鼓』避難先で再開[2024/02/12 23:30]

石川県輪島市のほぼすべての住民が集団避難するなか、空っぽの町から持ち出した太鼓に思いを込め、再び、動き始めた人がいます。

名舟町で、400年以上、受け継がれてきた『御陣乗太鼓』。上杉謙信の軍勢を名舟の村人が面をつけて太鼓を鳴らし、退けたと伝えられています。

地震で、活動の拠点は、めちゃくちゃに。でも、太鼓は無事でした。太鼓が無傷だったのは、遠くまで音を響かせるのに丈夫に作られているからだそうです。面は木彫り。髪の毛は海藻です。なかには、400年前に作られたというものもあります。

年間の公演が850回を超えた年もあり、輪島キリコ会館では、無料演奏を続けてきました。
この町で生まれた音を絶やさないため、拠点を町の外に移すことにしました。450年の歴史で初めてです。

江尻浩幸さん:「この面つけてもう30年。その前まで親父がかぶっていた。これつけて、衣装を変えたら違う性格になる」

名舟町の住人が集団避難して2週間あまり。ひとけのない街中で出会ったのが、御陣乗太鼓の打ち手・江尻浩幸さん(63)でした。自宅が気になって、様子を見に来たそうです。
江尻浩幸さん:「無理な人は、無理だろうけど、おれは戻って来たい。やっぱりこの海、変わってしまったけど。この際まで海水あって、それがこんな状態。やっぱり海、この匂い大好き。太鼓、叩きたい。みんな帰って来る、必ず」

江尻さんは、縁もゆかりもない土地での生活を始めていました。ふるさとから150キロほど離れ、こんなにも太鼓を叩いていない生活は初めてです。このままでは終われないと動き出します。

バラバラになっていた仲間が、久しぶりに集まりました。北陸新幹線が石川で全線開業する来月、金沢駅で太鼓を披露する計画があるからです。39日ぶりの音合わせです。
江尻浩幸さん:「バチ重てぇ」

これまでも、これからも。太鼓が思いを1つに。
江尻浩幸さん:「いろんなことを考えていたけど、すきっとした。このくらいで負けとったら、もっと苦しい思いをしている人はいっぱいいる。命があったら、また復活すればいい。でも久しぶり、えらい疲れるわ」

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