ウナギ価格高騰で期待される完全養殖“夢のウナギ”大量生産目指す研究所を独自取材[2024/03/03 23:30]

食欲をそそるウナギ…ここ数年はなかなか手を出しづらいお値段ですが、より安く、大量生産を目指した研究の最前線を取材しました。

■“夢のウナギ”完全養殖で安く大量に

水資源が豊かな、鹿児島県志布志市。
(山田水産取締役加藤尚武さん)「ここでウナギの養殖をしていまして」
(渡辺瑠海アナウンサー)「本当だ。元気に泳いでいますね」
広大な敷地に、およそ450万匹の養殖ウナギ。その一角に、夢のウナギはいました。
(渡辺瑠海アナウンサー)「ここに水産庁預かりってありますけどこれは?」
(山田水産取締役加藤尚武さん)「ここは卵から孵化したウナギを育てている特別な場所です」
(渡辺瑠海アナウンサー)「あ、つついてますね。すごいすごい」
(山田水産取締役加藤尚武さん)「バンバン食べますね」
(渡辺瑠海アナウンサー)「本当ですね。取り合いみたいな。すごいな」
食卓にのぼるウナギの99%は、ウナギの稚魚「シラスウナギ」を川で獲り、成長させたものです。これに対し、“夢のウナギ”は、人工で卵を孵化させて、ウナギを成魚まで育てるのです。ここでは試験的に“夢のウナギ”およそ400匹を養殖。普通のウナギと比べてみると…
(渡辺瑠海アナウンサー)「大きさほとんど変わらないですよね」
(山田水産取締役加藤尚武さん)「形も全く同じかなと思います」
気になる味は…
(渡辺瑠海アナウンサー)「めちゃくちゃいい香りです。ウナギがふわっふわですね。ふわっとっていうか。とろっとなくなっちゃう感じの柔らかさですね。美味しい。ウナギそのものの旨味が、すごく強いので、タレに負けてないです。私が今まで食べたことのあるウナギと、本当にそうそう変わらないですね」

■天然“子どもウナギ”激減→価格高騰

この“夢のウナギ”が生まれた理由、それは…。こちらは41年前のシラスウナギ漁の映像。当時は大量に獲れた為、海岸には多くの漁師の姿が見えます。
(金子友広ディレクター)「午後6時を回りました。これからシラスウナギ漁に向かいます」
ところが先月、漁を行っていたのはわずか数隻。ライトを照らし、シラスウナギを狙いますが…
(宮崎内水面漁業協同組合川崎進矢さん)「なかなか全然来ないですね」
Q.現状あまりよくない?
「そうですね。今の感じだときょうは厳しいかなという気はします」
この日、3時間で漁獲量はゼロ。翌日…
「きましたね」
これが天然のシラスウナギ。この日は50匹ほど獲れましたが、例年より少ないといいます。かつては全国で30トン以上獲れていたものの、昨年はおよそ1/6にまで激減。慢性的な不漁によって、ウナギの価格が高騰しているのです。2010年に成功した「ウナギの完全養殖」。より安く、大量生産を目指した研究が進められています。
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「皆さんの食卓に完全養殖のウナギが並ぶように、我々も研究して頑張っているところです」
卵を人工的に孵化させ、シラスウナギ、そして成魚へ。その成魚がまた卵を産むことで、“完全養殖”のサイクルを達成できます。しかしその過程には、いくつもの困難が…そもそも、ウナギは飼育環境が変わると卵を産みません。そこで人工的に産卵を促します。さらに―。
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「これはウナギの卵を管理している水槽になります」
(渡辺瑠海アナウンサー)「水を回すには何か理由があるんですか?」
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「(卵は)自分で動くことができないので、一カ所に固まってしまうと、そこで死んでしまったりするので、うまく攪拌しておく必要がある」
(渡辺瑠海アナウンサー)「これ孵化しているのも結構あるんですか?」
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「真っすぐピンとなっているのが孵化をして生まれたばかり」
これが孵化してすぐのウナギの赤ちゃん、仔魚です。この仔魚をシラスウナギにまで育てるのに、大変な労力がかかります。天然の二ホンウナギは、2400キロ離れたマリアナ諸島近くの海域で産卵し、海流に運ばれながら成長。シラスウナギとなり日本に戻って来るのですが、仔魚の段階での生態や移動ルートは依然わかっていません。この研究所では、どのように仔魚を育てているのでしょうか?
(渡辺瑠海アナウンサー)「真っ暗ですね」
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「電気をつけてしまうと、ウナギの仔魚が活発に動いてしまって、水槽にぶつかってしまったりするので、エサをあげるとき以外は暗くするようにしています」
「これがウナギの仔魚ですね」
(渡辺瑠海アナウンサー)「ほんとまだ透明なんですね」
エサも25年以上改良を重ね、この液状のエサにたどりついたといいます。
(渡辺瑠海アナウンサー)「本当だ、食べてる。エサの中に入っていくようにして食べるんですね。これは毎回人の手でエサやりをしているんですか?」
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「1日5回人の手でエサをあげています」
ウナギの仔魚は光に弱く、短時間でエサやりを済ませる必要が…そのため、数十個の水槽を3人がかりで行います。おいしいウナギに育てるまでの壁は、このエサやりの後にも…。エサによって濁った水…。水槽が汚れて細菌が増えると、仔魚が死ぬこともあるといいます。そのため、このパイプを使って、きれいな水に移します。
(渡辺瑠海アナウンサー)「確かに濁った水がどんどん。移動しているのはわかりますね」
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「1匹移動しました。今ここに」
(渡辺瑠海アナウンサー)「あ、本当だ」
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「こんな感じで水と一緒に」
(渡辺瑠海アナウンサー)「移動しましたね。いるいる。ここに」
100匹ほどの仔魚をおよそ2時間かけてきれいな水に移し、汚れた水槽は人の手で掃除を行います。
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「これがシラスウナギになります」
このように手間のかかる仔魚の期間はおよそ300日と他の魚と比べて10倍の長さ。
大変な作業は、1年近くに渡って続きます。そのため、天然のシラスウナギが1匹400円程度なのに対し、人工のシラスウナギ1匹あたりのコストは、人件費や光熱費などを含めると、およそ3000円。少しでもコストを下げるため、水槽が汚れにくい乾燥飼料や、自動でエサやりを行うシステムの開発も進んでいます。
(水産技術研究所高崎竜太朗研究員)「1匹当たりおよそ1000円程度まで下げることを目標に現在研究に取り組んでいます」

3月3日『サンデーステーション』より

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