「デロリアン」が現実に!?アルミ“ごみ”からクリーンな水素発電[2024/04/03 19:36]

 アルミのごみから水素を作り、発電する技術に今、世界が注目しています。

 アルミから勢いよく発生しているのは水素です。富山県高岡市にあるベンチャー企業「アルハイテック」では、捨てられたアルミを再活用して水素を作り、クリーンに発電するシステムの開発を進めています。

 社長の水木さんが思い描く未来は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するタイムマシン「デロリアン」です。ごみを燃料に変えて走ります。

アルハイテック 水木伸明社長
「この映画自体が好きなんですけど、ごみから燃料を作るというのは、ありじゃないかと思う」

 アルミは紙パックの内側やレトルト食品の袋、薬の包装シートなどに使われていて、多くの自治体で「燃えるごみ」として回収されます。

アルハイテック 水木伸明社長
「アルミがついているからこそ余計に高価。7重構造で宝の山。これを作るまでにどれだけエネルギーを使っているか。燃やしているものを取り戻せたら、すごく良いことになる」

 アルハイテックでは、紙パックについたアルミを再利用するためにパルプとプラスチックを取り除き、きれいなアルミだけを取り出す技術を開発しました。このアルミと反応液を混ぜることで、化学反応が起こり、水素が発生。燃料電池に送り、発電します。

 実は、この反応液に秘密があります。

 通常、水素の製造に使われる水酸化ナトリウム水溶液は、1度使うと機能が低下してしまいます。そこで特殊な反応液を独自に開発しました。約100回繰り返して使うことができ、その後も浄化して再利用できます。

 この特殊な反応液とアルミさえあれば二酸化炭素を出すことなく、必要な時に必要な量だけ水素を作り発電できます。

 コンパクトなシステムのため、工場や施設に設置することができ、水素を貯蔵するコストや運搬する際の二酸化炭素の排出もありません。

 大発明をした水木社長ですが、40代までは運送会社で働くサラリーマンで、アルミに関する知識はほとんどありませんでした。取引先からアルミごみの廃棄について相談されたことをきっかけに研究をはじめ、2013年に会社を設立。研究開発の成果を論文にまとめ、富山大学で博士号を取得しました。

アルハイテック 水木伸明社長
「エネルギーの変革期にテクノロジーが変わる。テクノロジーの変革期にビジネスモデルが変わる。ビジネスモデルの変革期に暮らしが変わる。最後はやっぱり暮らし」

 去年の岸田総理大臣の中東訪問に、経済ミッションの一社として同行し、その後、COP28にも招かれました。地球の未来を変えられるかもしれない新世代の水素に、日本政府も世界も注目しています。

 キャスターが付いて移動ができる小型の水素製造装置も開発しました。その名も「エ小僧」です。

アルハイテック 水木伸明社長
「エ小僧はAEDと消火栓の横に置くものだと思っています。アルミとエ小僧を持っていけば、どこでも水素を出して、電気でも熱でも起こせる。エ小僧の優位性はそういうところにある」

 350ミリリットルのアルミ缶20個で電子レンジをおよそ1時間使えるだけの電力が作れます。電源が必要ないため、大きな災害時の電力確保に役立つと全国の自治体の注目を集めています。

アルハイテック 水木伸明社長
「被災地とか電線がない場所で、絶対に役に立つ。アルミを持って被災地へ飛んで行って、お風呂くらい沸かしてあげたい」

 また、水素製造の副産物として取り出される水酸化アルミニウムは、可燃性の素材を燃えにくくさせる難燃剤の原料となり、生活用品や建築材料など幅広い分野で活用されます。二酸化炭素を出さずに作られたアルハイテックの水酸化アルミニウムは、グリーン化を目指すメーカーからの需要が高まっています。

アルハイテック 水木伸明社長
「立地に依存されず、天候に左右されず、24時間エネルギーを出し続けられる皆さんのごみを使えば、新たな脱炭素のエネルギー社会ができると確信しています」

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