“人食いバクテリア”感染者が語る恐怖 経路わからず「腕の切断も…」[2024/04/05 18:00]

■「人食いバクテリア」感染者語る恐怖

 溶血性レンサ球菌、いわゆる「人食いバクテリア」に侵された患部の写真。手のひらが全体にむくみ、特に親指は巨大な血豆のように腫れ上がっています。こうした「劇症型」に進んだケースでは、手足の組織が壊死(えし)するだけでなく、毒素が血液を通して内臓に回るなどして約30%が死に至るとされています。

 恐ろしいのは進行の速さです。写真を提供してくれた上林さん(54)によりますと、最初に感じた症状は“指の痛み”。痛風かと思い、そのまま出勤しましたが、仕事中…。

元患者 上林さん
「全体が腫れ出して、鉛筆が持ちにくくなった」

 帰宅後、症状はどんどん進み、この状態に。

元患者 上林さん
「(気付いてから)12時間ぐらいであそこまで。じっとしていられない痛みになってきた」

 上林さんは翌日の早朝、夜間病院に駆け込み、「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の診断を受けます。

元患者 上林さん
「命に関わる病気かもしれないという話がそこで。は?という感じ。全く知らない」

 手術を受ける際、医師からこう告げられたといいます。

元患者 上林さん
「腕を切断する可能性もあると。この痛みから解放されるなら、最悪それも仕方ないと。腫れがこの辺まで来たので」

■感染経路わからず

 術後、数日間は昏睡(こんすい)状態が続き、入院生活は2カ月に及びました。感染に心当たりはあったのでしょうか。

元患者 上林さん
「…全く」

 それがこの病気のもう一つの恐ろしさです。

愛知県立大学 感染制御学 清水宣明教授
「感染の経路もよく分かってない。例えば傷口から入ったとか、それと思う例もないことはないが、全く感染の経路が分からない例が半分以上を占めるという感染」

 人食いバクテリアといっても溶血性レンサ球菌自体は珍しい菌ではありません。そうしたありふれた菌が時として劇症型の症状を引き起こす。感染や発症を防ぐ手立てはあるのでしょうか。

愛知県立大学 感染制御学 清水宣明教授
「常在菌でもあるので、なかなか防ぐことは難しい。ある意味では発症するかは運」

 劇症型を発症した患者数は去年、過去最多を記録。今年は3月までですでに556人と過去最悪のペースで増えています。

■「痛みや腫れを感じたら まずは病院に」

 感染経路や発症に至る原因が分かっていない以上、大切なことは初動対応だといいます。

愛知県立大学 感染制御学 清水宣明教授
「今までないような手と足の痛みとか腫れとか、そういうものを感じたら、まずは病院クリニックに相談するのが良いと思う」

 清水教授によりますと、治療法は確立しているので、早期の診断さえつけば過剰に恐れる必要はないといいます。8年前に劇症型と診断された上林さんの右手。当時、腫れ上がった親指も現在は回復しています。

元患者 上林さん
「今ほぼ普通に生活できている。先生には半日遅ければ手の施しようがなかったと言われた」

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