手つかずの倒壊家屋 その訳は “公費解体”に課題[2024/04/11 23:30]

能登半島地震から100日余りが経ちましたが、今も手つかずの倒壊家屋が目立ちます。復興を加速させるために必要な解体作業がなぜ進まないのか。課題は山積みです。


■「同意書もらえず」所有者不明の空き家も

能登半島地震で壊れた家屋は11万以上あります。『全壊』『半壊』の建物の所有者が申請すれば、役場が代わりに解体・撤去をしてくれます。石川県は公費で解体される家屋を2万2000棟と想定していますが、申請を受け付けたのは2割ほどに留まっています。

離れが全壊した、久本正人さん(66)。待っていられない事情がありました。

久本正人さん
「(Q.ここは今どういう状況)(隣家の)所有者が分からない。建物ブロック塀のところから向こうがうち。後ろの家に迷惑をかけていますし、早くやりたい」

隣の空き家が家に寄り掛かり、久本さんの家もまた隣の住宅に寄り掛かっている状態です。

久本正人さん
「最初はまだ傾いていたくらいだったが、2月22日くらいに一気にドンと崩れて。余震とか雨とか」

崩れる危険があるため、まとめて壊す必要があります。

久本正人さん
「隣も倒壊しているのですが、所有者が分からなくて同意書をもらえない状態」
職員
「税務課の方で1回確認したら、今の所有者のお名前が分かるかも」

税務課に足を運びましたが……。

職員
「税務課もその方との取引がなくて、所在地とか全然分からない状態」

取り壊す建物の所有者全員の同意を得られないため、行き詰まりました。


■環境省マニュアルには“宣誓書”

3カ月間、公費解体の現場で仕事をしてきた南山さんは、相続などで所有者が変わった際に登記されていないことも、復旧を阻んでいると説明します。

能登町住民課 南山寛幸課長補佐
「やはり3代前とかになると、なかなか権利者の方も多くなるので、その辺がネックになっているのかなと」

例えば、実家の所有権がいとこやまたいとこなどと30人に及び、全ての人と連絡が取れないため、解体が滞るケースもあります。

能登町では、これまで428件の申請を受け付け、解体を終えたのはわずか5件。解体で出るガレキの仮置き場や最終処分場の調整が進まないことも遅れの原因です。また、「マンパワー不足」も。能登町は県外からの応援職員を6人以上とお願いしましたが、来てくれたのは3人です。

環境省は『公費解体・撤去マニュアル』で、所有者全員と連絡が取れない場合などは、申請する住民が「問題が生じても責任を持って対応する」という『宣誓書』を書くことで「解体を行うことも考えられる」としています。しかし……。

環境省
「民法上の所有権は残るため、解体後のトラブルの可能性はゼロではない」

能登町住民課 南山寛幸課長補佐
「私たちが発注者になりますので、町の判断で解体していくことになる。解体した私たちにトラブルで訴えてくる形はあるかと思います」

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