「子どもに希望を見せる番」“宙に浮く靴”町工場の挑戦 大阪・関西万博のいま[2024/04/30 23:30]

大阪・関西万博の開催まで1年を切りました。準備を急ぐ万博会場を取材しました。

大阪の埋め立て地・夢洲。
大越キャスター
「クレーンがすごくたくさん見えてきました。これが万博の建設会場。正面に見えるのが、いわゆる大屋根リングです」

いろいろ指摘されている万博会場の今です。

建設費約350億円、大屋根リング。
大林組大阪関西万博室・森田真行さん
「木によって風合いが違います。梁はスギなんで、赤みを帯びていたり」

大越キャスター
「大屋根ぐるりと1周しますと2キロくらいあるそうです。直径は600メートル以上あって、東京スカイツリーをドンと倒しても、すっぽりはまるくらいの長さがあるそうです。中では、盛んにパビリオンなどの工事が進められています」

大屋根リングの工事は、8割がた完成に近い状態に。パビリオンの建設は、手つかずのところから仕上げに入っている物までとさまざまでした。

大越キャスター
「この万博をめぐっては、工期の遅れ、資材の高騰による予算の膨張。国費も入っていますので、そうしたことに対する批判、あるいは、この万博のテーマっていったい何なんだろうか。そこが見えにくいという声も上がっているのも事実です」

数字を見ると、万博を取り巻く現実は芳しくありません。
大阪府と大阪市が、2023年末に全国を対象に行ったアンケートで、『万博に行きたい』と答えた人は33.8%でした。2021年末が51.9%、2022年末が41.2%なので、関心度は、年々、下がっていることになります。

大阪・新世界『ジャンジャン横丁』で聞きました。
のんきや・畑中英伸さん
「僕は万博に賛成です。大阪に来てもらって、大阪にぎわう。大阪を知ってもらえて、いいと思います。税金うんぬん、いろいろ言うけど、僕は賛成です」
市民
「中止だったら、エライことになるで。ほんまに。引くに引けへんで」
市民
「(Q.万博への関心は)半々かな。(Q.万博って何やる場所なのでしょうか)それがようわからん。何するんですか?」

今回のテーマは『いのち輝く未来社会のデザイン』です。ただ、それが、どういったものなのかは見えてきていません。

大阪府の吉村知事に聞きました。

Q.1970年の万博、そして今度の万博では、どういうゴールを目指すのか。万博についてお考えをお聞きしたいです。
大阪府・吉村洋文知事
「1970年万博のときは『国威発揚型』だったと思います。でも、現代は、やはり国威発揚型ではなくて『社会課題解決型』の万博を目指すべきだと思うんです。紛争もあり、戦争もあり、地域によっては感染症があったり、衛生が不十分であったり、食糧の問題があったり、国によって『いのち』のテーマも少しずつ変わると思うんですけど、そういった世界の課題を1つのところに集めて、6カ月間、共存する。そこにすごく大きな意味があると思ってるんです」

Q.集う目的が一緒であれば、万博会場の中はカオスで構わないのでしょうか。
大阪府・吉村洋文知事
「カオスであっていいと思うんです。多様な価値観がギュッと集まってくる」

Q.これは税金も入ってるし、みんな一番言いたくなることで、費用が増えてるじゃないですか。資機材高騰してるので理由はわかるけど、ちょっと計画が甘かったんじゃないかという声はあります。それにはどう説明されますか。
大阪府・吉村洋文知事
「どうしても、この2年間で、経済の専門家すら予測できなかったウクライナの侵攻であったり、急激な円安があって、資材等が1.3倍に増加をしています。公共事業全体が、民間の事業もそうだと思う。万博に限らず起きている現象だと思っています。建設費が増額したことに対する、必要なこと(増額)だとつながってくる。あわせて説明を丁寧にする必要があると思ってます」

万博開幕まで348日。

大阪・関西万博では、161の国と地域のほかに、企業や団体のためのパビリオンも建設されます。その中には、中小企業が参加できるブースもあります。

履物のオリジナルブランド『リゲッタ』。大阪商工会議所などが、企画・運営するブースに応募し、出展が決まりました。

高本やすおさん(48)は、健康を意識したオリジナルのサンダルやスニーカーを作り続けてきました。万博の出展には、これまでにない靴を考えています。
リゲッタ・高本やすお社長
「イメージなんです。まだ本当にイメージでモックアップ=模型の状態なんですけど、“宙に浮く靴”というのを作りたいなと。ふわーんと宙に浮くような感覚の靴作れないかと。磁石をかかととかに入れて、磁石の反発みたいなことで、着地・蹴り出しがボヨンといく履物を作れないかと。プラスとマイナスはくっつくじゃないですか。この感覚を靴の中で作りたい。足のかかとのところに」

普段から地域の職人さんたちと分担しながら1足を作り上げているため、万博に出す“浮く靴”もみんなと協力することになります。

そのうちの1人、秀山和生さん(78)は、生地からパーツを裁断するのが担当です。大阪生まれ大阪育ち、1970年のときには、お客さんとして万博を体験しました。今度は、出展者としての参加です。
秀山裁断・秀山和生さん
「(Q .万博に関わる気持ちは)聞いたときに、あまり実感がわかなかったです。あとからじわーっと考えたら、自分が裁断した商品を、全世界(向け)に展示するということで、自然と力が入ってきてね。“一員”やから、それだけでも感激しました。昔は、アメリカの『月の石』がメインでしたね。今回はリゲッタがメインになってくれたら最高」

肝心の“浮く靴”ですが、浮かせる方法は、まだ定まっていません。もしうまくいったら、介護の世界などで大きな手助けになると考えています。

リゲッタ・高本やすお社長
「万博って“希望の入り口”になるんじゃないか。僕らが子どもたちに希望を見せる順番にならないと。人間って本当は浮いたら歩けないです。わかっているんですよ。でも、子どもたちがそれを見て、30年後とかに『おっちゃん、できたで!』って言いに来ないかなと」

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