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少年刑務所に服役していた20代の男性受刑者が精巣腫瘍(しゅよう)を発症して死亡した事案で、東京地裁は医療行為が不適切だったとして国に150万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。
川越少年刑務所さいたま拘置支所に服役していた男性受刑者は2020年、精巣腫瘍を発症したため精巣除去手術を行い、化学療法を受けていましたが、2021年に23歳で死亡しました。
男性の遺族と婚約者は拘置支所の医師の診察が不適切だったことから腫瘍の発見と治療が遅れたとして、約7000万円の損害賠償を国に求めて裁判を起こしていました。
今月30日の判決で東京地裁は「診察時点で腫瘍が発見されて治療が行われたとしても治療が奏功しなかった可能性は否定できない」として、医師の医療行為と男性の死亡との因果関係は否定しました。
一方で、男性の症状が精巣腫瘍を疑わせるものだったにもかかわらず速やかにエコー検査を行わず、施設外の専門医に依頼しなかった点について「当時の医療水準と大きく乖離(かいり)していた」と指摘したうえで、「拘置支所の医師の医療行為は著しく不適切なものであったといえ、『適切な医療行為を受ける利益』の侵害による不法行為が成立する」として、国に150万円の損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡しました。
原告の代理人弁護士は判決後の会見で「たとえ刑事施設でも適切な医療を受けさせる義務があるという指摘が出たのは評価できる判決だ」と話しました。
川越少年刑務所は「判決内容を精査し、関係機関と協議したうえで適切に対応する」としています。
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