親グマと離れて行動する「はぐれ子グマ」の目撃が相次いでいます。専門家は子グマならではの危険があると指摘します。
■クマ続出 大学構内や庭先にも
12日午前9時ごろ、クマが出没したのは大学の構内。大学では、すぐさま職員が学生を屋内に誘導。パトカーも駆け付け、厳戒態勢となりました。
仙台駅から北へ約10キロ。近くには山もある宮城大学大和キャンパスは先週からクマの目撃情報が相次いでいます。そのため、爆竹を鳴らして周囲を警戒していました。にもかかわらず、クマは12日も現れたのです。
学生
「怖い。山が近いので」
「授業が結構なくなっている。クマが来なければ普通の生活ができる」
大学は2限目が終わった時点で休講が決定。13日、14日の2日間はオンライン授業に切り替えると発表しています。
11月中旬になっても後を絶たないクマの出没。秋田県潟上市の住宅近くにある柿の木に1頭のクマの姿が…。
柿を食べに来たのでしょうか、スルスルと木を登っていきます。
撮影者
「よくあの細いところに上がるもんだな」
この柿の実に執着しているのでしょうか。撮影者は3日連続で同じ場所に姿を現していると話します。
撮影者
「3日連続。警察に電話して爆竹を鳴らして追い払って終わる」
仙台市では住宅に迫るクマの映像が記録されていました。
カメラを設置した木村伸二さん
「近所の人が『干し柿をサルに取られる』というのでカメラを設置した」
柿を干していた庭先。しかし、カメラが捉えたのはサルではなく大きなツキノワグマでした。
カメラを設置した木村伸二さん
「(近所の)じいちゃんの方から『柿がなくなっているからカメラを確認しよう』と声掛けがあり、一緒に動画を確認したら『うわぁー!』という反応だった」
クマは一度、画面から消えると、数分後には画面右にある棚の上に上っていました。食べられるものを探すように周囲をかぎ回りながら進み、柿を干していた棒をつかんで立ち上がります。
家から食べ物の匂いがするのでしょうか。家の中をのぞき込んでいます。
カメラを設置した木村伸二さん
「柿が全部なくなっていた、動画に映っている場所では。(何かを)探している様子だった。中を確認するような感じでガラス窓の方に立って(家の中を)のぞいていた」
撮影者は仙台市に動画を提供し、対応を依頼したといいます。
クマによる被害は12日も相次いでいます。
新潟県新発田市では出没情報を受けて警戒にあたっていた猟友会の80代男性がクマに襲われました。男性は顔や右足に傷を負いながらもクマを自ら銃で駆除したということです。
岩手県八幡平市では近くに住む40代の男性が被害に遭いました。クマに頭を引っかかれ、腕や足をかまれましたが、会話は可能で命に別状はないということです。
岩手県内のクマの出没件数は過去最多ペース。被害を受けて周囲をパトロールしていた地元猟友会のメンバーも体験したことがない事態です。
八幡平猟友会 高橋啓悦さん
「(Q.こんな年あったか?)ないです。こんなに(クマが)来ることがない。今年は山に食べ物がないのか、子連れが多い」
■“食べ物に執着”帰宅するとクマが
人を恐れないアーバンベアは各地に現れています。
秋田県仙北市の住宅で撮影された映像。住人の男性が声を上げて威嚇しますが、動じる様子はありません。クマは1階にある物置をあさっていたといいます。
住人
「入ってきて、前々日のバーベキューで下にたまった油をなめていた。多分、匂いで寄ってきた」
クマはその後、姿を消したため男性は外出し、夜になって帰ってきましたが…。
住人
「いる、いる。また俺の家の方に戻って来るって」
再び自宅の前にクマが現れたのです。自宅の物置に現れた1頭のクマ。一度、姿を消しましたが、再び夜に戻ってきました。
住人
「恐ろしい。地元でもめちゃくちゃクマが出て、隣町でもすごいクマが出ているって話なので。死人もけが人も出ているって話なので」
こうした食べ物に執着し、人を恐れないアーバンベアは母グマから子グマにも広がっています。
石川県立大学 大井徹特任教授
「母親と一緒に行動するなかで学習して、人が怖くない、人里にたくさん餌(えさ)があると、安心して餌が取れると学習した子グマが増えている可能性」
■目撃相次ぐ“はぐれ子グマ”注意
さらに、親から離れて単独で行動する、はぐれ子グマが各地で出没しています。
12日午後1時すぎ、いわて花巻空港に現れたのは1頭の子グマ。駐機場の辺りをうろつき、その先にある滑走路では、ちょうど飛行機が通過していきます。クマはそのまま滑走路の方へ、車がその後を追っていきます。
空港の滑走路は封鎖され、子グマはその後、捕獲されました。
10日に雪が降る北海道で撮影された映像。歩いているのは子グマとみられ、撮影者によりますと、近くに母グマの姿は見当たらなかったといいます。
北海道では今月、札幌市の住宅地で5時間にわたって1頭の子グマが徘徊(はいかい)。人に危害を加える危険性があることから、駆除されました。
石川県立大学 大井徹特任教授
「子グマは今年2月に誕生して普通なら母グマと一緒に行動する。親から早いうちに離れてしまった子グマは危険な場所、安全な場所を母親から十分、学習していない。そのため住宅密集地など普通のクマなら出没しないような、とんでもない場所に出没する可能性がある」
秋田県でも住宅地のすぐそばで子グマが1頭、歩いているのが目撃されました。子グマは近くにある木に登っていたといいます。
撮影した男性
「(登った木が)桜の木だった。桜の木からだとほとんど食べるものがなかったのか、すぐに下りてきて、また下りてきた後(餌を)探している感じだった。子グマといえど、70から80センチあると襲い掛かってくる危険性もある」
こうした、はぐれ子グマは遭遇すると危険だと専門家は指摘します。
石川県立大学 大井徹特任教授
「何らかのきっかけでパニックになってしまうと、攻撃的になって人を傷付ける恐れがある。子グマだからといって侮ってはいけないと思う。かなり力が強いし、きば、爪も鋭い。攻撃されれば大きなけがになる」
実際、はぐれ子グマとみられる人への被害も出ています。
先月、宮城県の住宅で住人の60代の女性が玄関から外に出たところ、突然、子グマに襲われました。
■空き家で冬眠する恐れも?
また、冬眠した後も、はぐれ子グマ特有の危険性があるといいます。
石川県立大学 大井徹特任教授
「冬眠する場所については母親から学習する部分が多い。親から離れた子グマは空き家など思いがけない所で冬眠し、そのことを知らない人間が事故に遭う可能性が生ずる」
万が一、遭遇してしまった場合は静かにその場を離れ、建物などに避難するのが重要だといいます。
目撃相次ぐ“はぐれ子グマ”注意 大学構内や庭先にも 空き家で冬眠する恐れも?
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