柴田理恵 現在も94歳母を遠距離介護「本人にやる気を出させる」「周囲に相談する」
モーニングショー
[2023/11/29 19:05]
高齢化が進む中で、家族を介護しながら働く人や介護を理由に仕事を辞める人が、今増えています。 元気だったお母さんが突然、要介護4になったという、柴田理恵さん。 実家がある富山で離れて暮らすお母さんの遠距離介護から、得た教訓とは…
酒と麻雀が大好き サルと大バトルをしたパワフルな母が…
柴田理恵さんは富山県生まれ。劇団『ワハハ本舗』を旗揚げして、バラエティ番組などで活躍されています。
柴田さんの母・須美子さんは、富山の実家で一人暮らし。94歳です。 ご主人は、2016年に亡くなっています。 17歳で小学校の教員になりました。 お酒と麻雀が好きだそうです。
こんな話もあります。 移動動物園で、子どもが落とした傘を拾おうとしたら、サルに眼鏡を奪われ、取り返そうと柵を乗り越えて大バトルになった、パワフルなお母さんです。
お母さんは、38年間務めた教員を、54歳で退職しました。 退職後は、
●幼稚園や小学校などで子どもにお茶を教えたり、
●地域の人たちに謡を教えたり、
●地元の婦人会の会長を務めたり、していました。
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「東京で一緒に暮らさない?」に母「絶対に嫌だ」「東京で一緒に暮らさない?」に母「絶対に嫌だ」
そんなお母さんが、突然の体調不良です。 2017年10月、腎盂炎で緊急入院。当時88歳でした。 そして、要介護4の認定を受けました。 要介護4というのは、介護なしには日常生活を送ることができない重度の状態です。
柴田さんは、お母さんに提案しました。 「よかったら一緒に東京で暮らさない?」 お母さんは、 「絶対に嫌だ」 「そもそも自分の人生は自分のもの、あなたの人生はあなたのもの」と普段から言っていたということです。 柴田さんは、東京から片道3時間あまりの富山のお母さんを遠距離介護することに。
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母へのニンジン作戦「正月に酒」「お茶と謡を生徒に教える」母へのニンジン作戦「正月に酒」「お茶と謡を生徒に教える」
介護にあたって柴田さんは、お母さんの生きがい目標を設定しました。 『退院後の一人暮らしを目標にして、リハビリを頑張る』 ニンジン作戦として「正月に家でお酒」を飲む、 「お茶と謡を生徒に教える」 を目標に設定しました。
お母さんは、リハビリに精力的に取り込み、みるみる元気になりました。 しかし、2017年12月初旬、夜中にトイレに行こうとして転倒。 腰椎を圧迫骨折し、2週間の絶対安静となりました。 お母さんは、 「2週間は我慢。それからまた頑張る」と、前にも増してリハビリに励みました。
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要介護4から要介護1にまで回復…正月は親子でお酒も要介護4から要介護1にまで回復…正月は親子でお酒も
すると年末年始、一時帰宅できて、親子でおせちとお酒を楽しむことができました。 お母さんは、 「あぁ〜おいしいお酒が飲めてよかったわぁ」と、喜んだということです。
その後は雪解けの春まで、介護老人保健施設を利用し、要介護4から要介護1まで回復しました。 そして、2018年4月から在宅介護になりました。
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実家に3日いたら喧嘩に…「ある程度の距離感が必要」実家に3日いたら喧嘩に…「ある程度の距離感が必要」
柴田さんが感じた、遠距離介護で気をつけなければいけないところ、それは、 『介護を自分の手で行うことは親孝行になる』という気持ちです。
第三者に頼ることなく介護した場合、親が子どもに依存してしまう、という問題が起きます。 回復の見込めない親の介護は“撤退戦”とも言われています。 ストレスをため込み、子どもが虐待や暴力に走ってしまう、さらに仕事ができる人ほど頑張りすぎて介護離職に追い込まれるというケースも…。
柴田さんもお母さんと喧嘩しました。 柴田さんが、 「お母さん、そうじゃないでしょ、こうでしょ!」と言うと、 「なにいってんのよ。こっちのほうがいいのよ!」と、実家に3日いたら喧嘩になっていたそうです。
柴田さんは、『ある程度の距離感が必要」だと感じて、介護のプロやご近所さんの力を借りながら、サポートするという考えに変えました。
遠距離介護の教訓…「やる気を出させる」「家族のみの介護では限界がある」
柴田さんが得た、遠距離介護の教訓です。
教訓1『本人にやる気を出させる』 1人暮らしのお母さんの食事は、ご飯と味噌汁を、お母さんが自分で用意して、おかずは、ヘルパーさんが用意しています。家事は「危ないからやめてほしい」と言っても聞くような人ではないので、心身のプラスになっていると信じて、家事の一部を任せることにしました。
すると、お母さんが時間割を作成するようになりました。 こうして、時間割を作ることで、規則正しい生活が送れて、やる気も出てきたそうです。
教訓2『家族のみでの親の介護には限界がある』 とにかく早めに、地域包括支援センターに相談しましょう。 ケアマネージャーや保健師などが在籍していて、介護の悩みや困りごとのほか、介護保険を使って外部の支援を受けるにはどうすればいいかを教えてくれます。
さらにヘルパーや訪問医を頼り、チームを組むことで、子どもは自分の仕事や生活を犠牲にする必要がなくなります。 親は、子供に依存せずに、プロの介護を前向きに享受するようになる、ということです。
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自分らしく楽しく暮らして欲しい…少量の飲酒はOKに自分らしく楽しく暮らして欲しい…少量の飲酒はOKに
柴田さんのお母さんが、病院から家に戻って4カ月後の2018年の夏、地域のバーベキュー大会の時のことです。
この会は、新旧住民の交流の場として、柴田さんの両親が企画して始めた会なので、特別な思い入れがあったお母さんは、顔を出して、みんなにお酒を注いで回りました。
すると、その日の夜中、トイレに行こうとして転倒して、顔にアザができてしまいました。 翌日、その顔でデイサービスへ。
どう見ても具合が悪そうなので、介護スタッフの人が、「いったいどうしたの」と聞くと、「楽しくて飲み過ぎてしまい、夜中に転倒した。まだ二日酔い」と答えたそうです。
デイサービスから連絡を受けた柴田さんは、 「デイサービスは二日酔いで行くところじゃありません!」と叱ったそうですが、自分らしく楽しく暮らすことが良いと思い、少量の飲酒はOKにしました。
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遠く離れていてもできることはある遠く離れていてもできることはある
こんなこともあったそうです。 ケアマネージャーから、柴田さんに、 「実は服を全然 着替えないんです」と連絡がありました。 『お母さんは、きれい好きなのになぜ?』と理由を聞くと、 「お嫁さんが2人の子どもを育てながら、自分の洗濯物までしてくれるのが申し訳ない」と答えました。
近くに住む親戚のお嫁さんが、お母さんの洗濯をしているのですが、お母さんは、洗濯物が出ないように着替えるのを控えていたそうです。
お嫁さんに聞くと、 「私の洗濯の仕方が気に食わないのかな」と、逆にお母さんが着替えないことを気にしていました。 柴田さんは、お母さんに再び連絡し、 「お嫁さんが『自分のせいだ』と落ち込んでいたよ。変に気兼ねしないで洗濯物を出したら」と伝え、以後、着替えをするようになったそうです。
遠距離介護の秘訣について、柴田さんです。 「介護する側が踏み込めなかったり、介護される側も言いづらかったりする。両者の間に立って密にコミュニケーションをとることで、うまくいくことが多い。遠く離れていても、できることはいくらでもある」
『遠距離介護は決して無責任ではない』ということです。