全国→石川に“迅速”職員派遣…「対口支援」とは?ふるさと納税“代理寄付”11億円超

モーニングショー

[2024/01/19 18:01]

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地震の被害の大きい石川県に、全国の自治体から、『対口(たいこう)支援』という支援が入っています。

■自治体職員を被災地に派遣

珠洲市では、罹災証明書の発行業務を千葉市の職員が行なっています。
能登町では、避難所の支援に滋賀県の職員が入っています。
輪島市では、災害対策本部の支援に三重県の職員が入っています。
志賀町では、支援物資の仕分け業務を鳥取県の職員が行なっています。

この『対口支援』とは、大規模災害で被災した自治体のパートナーとして、特定の自治体を割り当てて復興の支援をする手法です。

総務省や全国知事会などが調整し、15日の時点で、石川県の14市と町に42都道府県・政令市が職員を派遣しています。

跡見学園女子大学の鍵屋教授によると、「今回の『対口支援』では、1月3日には、名古屋市、浜松市などが被災地に支援に入るなど、これまでにない迅速な初動がとられた」ということです。

■中国由来の『対口支援』手法 2018年に国が制度化

『対口支援』は、2008年の中国で起きた四川大地震で、中国政府が用いたことで知られるようになりました。中国語で『対』=ペア、『口』=人です。

四川大地震では、中国政府が、北京や上海など経済発展が進んだ省や都市と、被災した市や県でペアを組んで支援に当たらせ、復興の進捗度を競わせました。

■「顔が見える、きめ細かい支援」日本でも

日本での『対口支援』の原型は、東日本大震災です。
関西広域連合が旗振り役となり、対口支援を日本で初めて実施しました。関西広域連合が被災した岩手、宮城、福島の3県を分担して支援しました。その後2018年に、国が『対口支援』を制度化しました。

2018年の制度化後、2018年の北海道胆振東部地震や西日本豪雨、2019年の房総半島台風や2020年の熊本豪雨のときなどに、『対口支援』が実施されました。

『対口支援』のメリットです。

鍵屋教授によると、
●応援自治体が責任をもって、人員確保・引き継ぎ・復興までの一貫支援ができる。
●顔の見える関係で、きめ細かい支援ができる。
ということです。

■鍵屋教授が見た熊本地震での『対口支援』

跡見学園女子大学の鍵屋教授が、熊本地震で支援活動を行った際に現場で見た対口支援です。
2016年に起きた熊本地震は、4月14日震度7の前震、4月16日震度7の本震が発生しました。

この本震の2日後の4月18日に、九州・山口被災地支援対策本部が『対口支援』を行うことを決定して、熊本県と熊本県内の15市町村に職員の派遣を開始しました。

災害時の自治体職員の業務は、避難所の運営・家屋の被害調査・罹災証明書の発行など。 通常業務と比べると、業務量が10倍以上増えます。それを支援していこうということです。

鍵屋教授が震災当時に訪れた熊本県の益城町では、益城町の職員が、地震発生から8日後の22日時点で、災害対策本部に31人、16カ所あった避難所に161人いる状況でした。

当時の状況について鍵屋教授は、「被災直後からの最優先は避難所対応。職員の7割が避難所対応に取られる。非常に厳しい状況に耐えられず、職員からだんだん表情がなくなっていき、見ているのもつらかった」といいます。

■「職員が本来の対策になかなか取り組めない」

鍵屋教授が見た、震災時の職員の業務状況です。
避難所や集積所に居た職員は、水や物資の運搬・高齢者などの状況確認・ごみ処理などの業務を行っていました。復興計画を担う課長級の職員などが、物資の受け入れや積み出しの陣頭指揮に追われている状況だったということです。

災害対策本部の職員は、
●被災者からの「うちのばあちゃんを探してくれ」
●支援者からの「おむつを1ケース持っているので届けたい」
といった膨大な数の電話対応で、1つの電話に対して、内容を記録し、関係先に連絡調整する作業に追われていました。

電話は普段の10倍以上かかってきて、人手が少ないなかで、幹部職員などが対応に忙殺されていたということです。

鍵屋教授によると、「職員は自らも被災しながら、やったことのない災害対応業務に追われ、本来の対策になかなか取り組めなかった」ということです。
こうした厳しい状況に対して、『対口支援』で、熊本に応援の職員がのべ5万3172人派遣されました。

対口支援で来た応援職員の役割です。
避難所の運営では、物資の管理や仕分け作業など。そして、罹災証明書の発行業務では、応援職員は、住宅の被害状況を調査し、できるだけ早く被災者へ罹災証明書の交付を行います。

鍵屋教授です。
「(こうした応援職員の支援によって)避難所などにいる地元の職員を廃棄物処理や仮設住宅、復興計画など、被災した自治体の職員でなければできない仕事に付かせることが重要」だということです。

■見えてきた課題「災害関連死」と「調整役の必要性」

一方で、『対口支援』を運用する上での課題です。

熊本地震では、震災による直接死が50人、災害関連死は、その約4倍の218人。そのうち約37%の人が自宅でなくなりました。
鍵屋教授は、「早期に自宅訪問調査をして、見守り体制をつくることができなかった」といいます。

さらに2つ目の課題です。

対口支援で応援に来た職員の中に、『土木技術職で、災害復旧の経験あり』という職員がいたのですが、被災地の職員の業務の調整がうまくいかず、経験のある応援職員が駐車場担当になってしまったということです。

鍵屋教授によると、「誰にどんな支援を依頼するかを調整する機能が重要。被災した職員に余力や経験がないと調整は難しいため、代わりに調整役となる自治体が必要」ということです。

■被災地支援へ…広がる“ふるさと納税『代理寄付』”

能登半島地震で、私たちができる支援の方法の1つに「ふるさと納税」があります。『代理寄付』というものです。
通常、ふるさと納税を使った寄付は、支援したい自治体に“直接”寄付をしますが、この『代理寄付』は、別の自治体が寄付の「受付」と「受領証明書」の発行業務を肩代わりし、被災した自治体は寄付金のみ受け取れるというものです。

仲介サイト「ふるさとチョイス」では、全国の83の自治体が『代理寄付』に協力しています。
茨城県境町は珠洲市の代理寄付に協力していて、約9400万円、熊本県益城町は輪島市の代理寄付に協力していて、約3100万円が集まっています。

■なぜ代理寄付?寄付額は11億円超に

なぜ全国の自治体が『代理寄付』に協力するのでしょうか?
受領証明書の発行や郵送など事務作業を別の自治体がすることで、被災した自治体の作業負担を軽減でき、被災自治体の職員は、支援物資の手配やインフラ復旧など災害対応に力を注ぐことができます。

15日までの『代理寄付』額は、仲介サイト大手3つの合計で11億円を超えています。

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年1月16日放送分より)

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