■10年で23%が退職「危機的状況」若手官僚 早期退職の背景
2014年度に採用されたキャリア官僚約655人のうち、23.2%がこの10年間で退職しました。
若手官僚が早期退職する傾向が強まっています。
若手官僚の早期退職の背景です。
長時間労働への不満や、給与水準への不満があり、入省当初から早期転職を視野に入れている人も増えているということです。
「業務量や求められる質が以前よりも増大している中、働き手不足や質の低下が生じるかもしれない危機的な状況」だと話しています。
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■東大生も『官僚離れ』就職先 人気は「コンサル」■東大生も『官僚離れ』就職先 人気は「コンサル」
東大生の官僚離れも起きています。
東大生の就職先として、コンサル会社の人気が高まっている理由についてみていきます。
2023年度の東大生の就職先です。
トップ5のうち1位、2位、4位と、3つがコンサルティング会社です。
コンサルティング会社は、企業の問題などに対して、専門的な助言や提案をする会社です。
キャリア官僚試験の合格者の出身大学です。
2014年度、東大生の合格者は438人でしたが、2024年度は、189人でした。
10年で東大生の合格者が約6割減りました。
また2024年度は、東大、京大に続いて、立命館大学が3位に入りました。
現役の東大生に聞きました。
「周りに官僚を目指す人は一定数いるが、民間企業を目指している人が多い。東大法学部は、官僚養成学校といわれていたが、今はだいぶ減っている」
「コンサルの授業では、300人くらい入る教室が満席になっている。コンサル業希望の人が増えているのを実感する」
一方で、キャリア官僚試験の合格者数3位の立命館大学では、国家公務員総合職(キャリア官僚)のような行政リーダーに求められる力を早期に身につけるためのプログラム『立命館霞塾』を2013年から実施しています。
試験の合格者数は、2014年度は、28人(全体の17位)だったのが、2024年度は84人に増え、3位になりました。
「キャリア官僚は、国全体の課題や将来に関わるやりがいを感じられる仕事なので、志願者が減少している今こそ魅力を伝えている」と話しています。
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■現役東大生のホンネ「やっぱり稼げる」コンサル人気のワケ■現役東大生のホンネ「やっぱり稼げる」コンサル人気のワケ
なぜ、東大生にコンサル会社が人気なのでしょうか。
1つは、給与面です。
「コンサルを目指している人は増えている。やっぱり稼げるからじゃないですか」
「コンサルは2〜3年スパンで給与が上がるらしいし、あとは今のトレンド感もある」
「外資系コンサルは、キラキラしていて給与もいい。官僚は残業時間が長くて、給料もそこまで…。コスパが悪い」
大手企業の初任給が上がっています。
東京海上日動火災保険は、2026年4月に入社する大卒総合職の初任給を、約28万円から最大41万円に引き上げます。
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、2025年3月入社の新入社員の初任給を、30万円から33万円に引き上げます
三井住友銀行は、2026年4月に入行する大卒の初任給を、25万5000円から30万円に引き上げるなど、続々と初任給が30万円を超えています。
一方で、キャリア官僚の初任給は、本府省採用の場合で、約28万円です。
1年目の年収です。
番組で取材をした、東大から大手コンサル会社に就職した女性は、手取りで約700万円。
一方で、キャリア官僚は、額面で約570万円。
ここから税金や保険などが引かれます。
「コンサル会社での初任給は、手取りで約45万円。5年で年収1500万円を目指したい」と話しています。
「官僚の給与は法律で決まるので、民間のような柔軟性に欠ける」と話しています。
物価上昇などがあっても、官僚は民間のように自由に賃上げができません。
「一流企業に勤務する同世代と比較して、同じ程度の質の高い働き方をしても給与が低い、という意識は根強い」
「東大生は、先輩にキャリア官僚が多いので実情がよくわかる。官僚離れの原因は、ハードワークのわりに給与が低いからだと思う」
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■コンサルでスキルアップ 早期の転職や独立の傾向も■コンサルでスキルアップ 早期の転職や独立の傾向も
東大生にコンサル会社が人気の理由、スキルアップの面です。
「以前は、政策といえば官僚の印象があったが、コンサルでも国に政策を提言できるのがいい」
「私も一時期官僚を目指していたが、やりたいことがあってもすぐに実行できないと聞いてやめた」
こちらの学生は、ベンチャー企業を支援するコンサル会社に内定しました。
実際に東大から大手コンサルに就職した女性の話です。
インターン期間中に模擬的に企業戦略を考えるグループワークで、自分のアイディアが採用され、入社したら初年度から活躍できると思い、魅力を感じたということです。
配属は、プロジェクトがどんどん変わるので、興味のない部署に縛られず、人脈も広がるといいます。
さらに転職にも有利です。
入社後、様々な業界のプロジェクトに参加できるため、スキルアップしながら、やりたいことを見つけられるといいます。
一方で、コンサル側はどう思っているのでしょうか。
東大生に人気の大手コンサル会社アクセンチュアは、
「成長意欲の高い従業員が多く、入社後4、5年で転職や独立しやすい傾向」にあるとしています。
「長く働いてほしいとは思うが、従業員が社内に残っても社外に出ても役立つようなスキルアップを応援する文化や仕組みがある」と話しています。
「東大生は将来のことを考えて、組織に入って安心するより、いかにして社会を勝ち抜くスキルを得るかを考えて就職先を選んでいるのではないか」ということです。
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■日本の公務員制度「最も閉鎖的」海外は?■日本の公務員制度「最も閉鎖的」海外は?
日本の公務員制度についてです。
若手官僚が退職を考える理由で1番多いのは、『満足なキャリア形成ができる展望がない』と考えていることです。
30歳未満の官僚の59.1%、30代の官僚の64.0%が、こう考えています。
次いで多いのが『成長実感が得られない』という理由です。
30歳未満の47.2%、30代の51.5%が、こう答えています。
どうして、若手官僚がそのように考えるのでしょうか。
「キャリア官僚は、いろんな部署に異動が頻繁にあるので、専門性が身につかない」と指摘します。
また、人材の流動性も低く、他府省からの出向者の割合は、幹部職(審議官以上)で11%、管理職(課・室長)では4%程度で、民間からの採用も少ないということです。
「霞が関は、職員の在籍年数や年齢、役職などに応じて、報酬やキャリアを決めるメンバーシップ型人事を最も強固に維持している」といいます。
スウェーデンの大学の調査では、日本の公務員制度は、先進諸国で最も閉鎖的と評価されています。
では、海外はどうなのでしょうか。
アメリカでは、『回転ドア式』と呼ばれるやり方が慣例になっているといいます。
『回転ドア式』とは、一般的な省庁と民間を行き来することで1回転、つまり、省庁と民間を1度ずつ経験するごとに人脈や財力などが蓄積されていくという、アメリカのエリートの慣行ということです。
また、イギリスは、新しい人材を官に取り込むため、公職への任用に『官民公募』を活用しているということです。
「霞ヶ関のメンバーシップ型人事が、省庁の利益を守り、政策形成をゆがめている。これを解決するためには、公務員の多様性・流動性を高めることが不可欠」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年1月22日放送分より)

























