つらいイメージを覆す、痛くない検査や治療が増えています。急拡大する“らくらく医療最前線”を追跡しました。
■痛くない?インフルエンザ検査
厳しい寒さが続く季節。街の皆さんに体の不調や痛みがないか聞いてみると、「めっちゃありますね、肩こりは。湿布を貼ったりとか、マッサージとか」という声が聞かれました。
首のヘルニアで通院した男性(70代)は痛みを止めるため、かつて脊髄に注射したそうです。
「脊髄注射?痛いなんてもんじゃない。脊髄だもん。半端じゃないですよ」
その記憶がよぎり、病院に行くのは抵抗があるといいます。
「注射でグーッと打つ。もう口塞いでうなってました。ウォーッて」
30人に聞いたところ、「病院での検査や治療で痛い思いをした」との答えが多数。なかでも「最も行きたくない」との声があがったのが、インフルエンザ検査です。
「小さい頃にインフルエンザの検査で、綿棒みたいなのがズボッてされるのは、トラウマになるくらい痛かった思い出があります」
「鼻の中に綿棒を突っ込んで、グリグリのやつが痛い」
「あれはきついよね」
鼻の中に長い綿棒を入れる抗原検査では、多くの人がつらい思いをしていました。しかし今、痛くないインフルエンザの検査があるというのです。
「受験は無事終わったの?」
「いや、まだ続きます」
患者は10代の女の子で、前日から熱があるといいます。
「周りでインフルエンザ流行ってる?」
「インフルエンザって言ってたよ、保健の先生」
インフルエンザが疑われます。そこで医師が取り出したのは、綿棒ではなく…。何でしょうか?
「インフルエンザを診断していくカメラ」
検査はカメラで、のどを撮影するだけです。
「こっちのほうが楽」
「(Q.痛かった?)いや、大丈夫です」
「鼻だと中に入れる恐怖心とか、痛さがあるので、こっちのほうが子どもは楽だと思います」
痛みを伴わないだけではありません。のどの写真を撮影し、問診内容や所見をパソコンに入力すると…。なんと、わずか数秒で結果が出ました。
「インフルエンザは大丈夫ですね」
抗原検査では結果が出るまで5分以上かかりますが、なぜこんなに早く結果が出るのでしょうか?
「インフルエンザだと、のどの咽頭(いんとう)後壁に『インフルエンザ濾胞』という、もこもこしたリンパ節の変化が出てくる」
このような患者ののどの画像を、50万枚以上のデータベースと照らし合わせるなどし、AI(人工知能)がインフルエンザの疑いを検出するといいます。
「最終的に診断していくのは我々医師ですが、正しい診断に行き着くための診断の補助として利用している」
千木良医師によると、精度は抗原検査と遜色なく、結果もすぐ出ることから、インフルエンザの疑いのある患者の4人に3人はこのカメラで検査しているといいます。
「楽でした。前までは、鼻に痛みがくるような検査だったけど、今回の検査だとそんな痛みもなく、楽に診断を受けることができました」
この検査には保険が適用され、2年前に登場以来、全国1000以上の施設に導入されています。
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■一瞬!痛くない針なし注射■一瞬!痛くない針なし注射
続いて、痛かった経験としてやはり多かったのは、注射です。
「予防接種。昔した時は、ちょっと痛かったです」
「歯医者は、体質的に麻酔がなかなか効かなくて、いつも追加で打ってもらったりするので、いつも怖いですね」
痛いイメージがつきまとう注射。しかし、痛くない注射が今、革新をもたらしています。
歯科を訪れた男の子(6)はちょっと緊張気味です。下の前歯の虫歯治療のため麻酔を打つといいますが、手にしているのは注射器。でも、私たちが想像しているものとは、大きく違います。
「ドンってするよ」
「大丈夫?ビックリしたね」
一瞬の出来事です。男の子も、何もなかったかのような反応。一体、どういうことなのでしょうか?
「針がないです」
実は「針のない注射器」と言われる医療機器です。
機器の先端に麻酔薬をセットし、レバーを押せば、機器の先端から麻酔薬が勢いよく飛び出します。これを歯茎に直接押し当て、薬を高速で噴射することで、瞬時に粘膜の下に薬が注入されるため、痛みを感じにくいといいます。
6歳の子どもは「痛くない」と感じていますが、メリットは痛みの軽減だけではありません。
「普通の麻酔だと打って何分かかるが、(この)麻酔に関しては20秒〜30秒で麻酔効果が発揮されます」
この「針なし注射」は保険が適用され、歯科を中心に現在、全国で100以上の医療機関に広がっています。今後は予防接種などへの広がりも期待されています。
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■つらい肩こり…刺さない鍼でもう痛くない?■つらい肩こり…刺さない鍼でもう痛くない?
特に冬場、皆さんが「つらい」と口にしたのが、肩こりの悩みです。
「めっちゃありますね、肩こりは。肩こりはありますね」
「肩回りがデスクワーク多いので、すごく肩こりますね」
20代の女性は肩こりがひどく、鍼(はり)治療も考えたそうですが…。
「はり灸とか行ったことないんですよ。刺されるの怖いじゃないですか」
ところが今、刺さない鍼治療があるといいます。一体、どういうことなのでしょう?鍼灸(しんきゅう)院にやってきた30代女性は、7カ月の娘の授乳で首や肩がつらいといいます。
「体勢がつらいから、壁で頭を支えてとかやってると、首がすぐ痛くなっちゃって」
「(鍼は)勇気がいるというか、やったことがないので、ちょっと踏み出しにくいですね」
鍼に抵抗感があるのに、なぜ鍼灸院に?鍼灸師が貼り始めたのは謎のシール。首や肩に合計6枚貼り終えると…。
「かなり変わるでしょ」
「全然変わる」
「首ぐるって回してみても構わないよ」
「動かしやすさが(改善してる)」
「肩回り、ちょっとどうですか?先ほどと比べてみて」
「楽になってます」
「全く痛くないので、(鍼だと)ちょっと怖いなってところも、これだと大丈夫」
鍼の代わりに首筋に貼ったシールのようなものは、一体?
「これは『刺さない鍼』と言われています」
シールの裏側には、ゴムなどで作られた細かな突起がたくさんあります。これがなぜ、痛みの軽減につながるのでしょうか。「刺さない鍼」を研究している常葉大学健康鍼灸学科の沢崎健太教授は、次のように述べました。
「(シールの裏に)小さな突起がたくさん付いているが、それが皮膚を刺激して、神経を介して脳に伝わっていきます。脳から同時に、痛みを抑制するモルヒネみたいな働きをする物質が分泌されます。それで、痛みを抑えることが分かってきています」
鍼よりも弱い刺激が、治療の幅を広げています。
「高齢の方で、鍼の刺激が強すぎる人は、とてもいいんじゃないかなと思います」
「刺さない鍼」は、全国のおよそ800の整骨院・鍼灸院で活用されています。
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■苦手な胃の検査痛くない?小型カプセル■苦手な胃の検査痛くない?小型カプセル
街の人が訴える痛みは病院の検査でも…。特に多かったのが、苦手な人も多い胃の検査です。
「つらかったのが、鼻から入れる胃カメラで、麻酔もちょっとしたんですけど、なかなかどうしてもつらかった」
「社会人になって初めてバリウムをやったんですけど、途中でゲホゲホしちゃって。それ以降1回もバリウムやってないです」
実は、その負担が解消される可能性があります。
「水槽の中で、自走式カプセル内視鏡が泳いでいる」
現在開発中の「自走式カプセル内視鏡」は普通の薬より一回り大きいカプセルを飲み込み、体の外から操作することで、痛みを伴わず、食道から胃、小腸、大腸まで一気に診ることができるようになるといいます。
「将来的には体の中から(カプセル内視鏡が)がん細胞を取ってくると、がんかどうかの100%に近い診断ができる。検査以外の治療にも役立つ、さまざまな医療機器に進化していくものだと考えています」
医師で医療ジャーナリストの森田豊氏は「痛みの少ない検査や治療は患者へのメリットが大きく、今後は様々な医療に広がっていくだろう」とのことです。











