卒業シーズンを迎え、各地の生徒・学生が新たな一歩を踏み出すなか、姿を変えている「卒業アルバム」の今を取材した。
■卒業アルバムがデジタル化 教育現場の悩み解決?
横浜市の川和東小学校で19日に行われた卒業式。学び舎を巣立つ子どもたちが卒業証書と共に待ち望んでいるのが「卒業アルバム」。その姿は今、様変わりしている。
「デジタルで思い出を振り返られるようなアルバムを取り入れています」
デジタル化した卒業アルバムを導入する学校が増えているのだ。タブレットやスマートフォンなどから専用アプリを開くと、映像と共に音楽が流れ出す。デジタルだからこそできる動画を多用している。
そして、多くの写真データが保存されているため、児童自らがアルバムをカスタマイズすることができる。
このデジタル卒業アルバムは、教育現場の悩みを解決するのにひと役かっているという。
「まず紙の(アルバム)場合だと(写真を入れられる枠が)固定されたものしかないので、どこに誰が何回写っているみたいなのをすごく細かくチェックして名簿に正の字書いていって偏りがないようにする作業があります。それをするのに結構時間がかかって」
1人の児童が何回写っているのか?それをバランス良くしなければならないが、デジタルの場合、顔認証システムを使って確認できるため、トラブル回避にもつながるという。
「大きなプレッシャーと負担があったと思うのですけど、それがかなり軽減された。子どもたちのことに集中できる時間が増えたかなと思います」
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■採用する学校増加 背景に少子化問題■採用する学校増加 背景に少子化問題
「デジタル卒業アルバム」を開発した会社によると、近年、採用する学校が増えているという。
「3年前に発表させていただいて、今現在では日本全体でいうと70校ぐらいが採用していただいています」
増加する背景には、少子化問題もあるという。
紙のアルバムの場合、50冊でも100冊でもかかるコストは変わらないため、卒業生が少ないと1冊あたりの値段が高くなる。しかし、デジタルなら…。
「デジタルの場合は一つのソフト×個数という形になりますので、基本的には紙の時よりはそんなに価格差が生まれるということはない。できるだけ今のデジタルとかAIという技術をこの制作の中に駆使して、少ない部数でも卒業アルバムが作れるというのは日夜努力している。今後も研究開発を続けていきたいと思います」
■卒業生と親はどう受け止めている?
紙世代の保護者たちは、デジタル化をどう受け止めているのか?
「最初聞いた時、デジタル化、大丈夫かな、不安だったんですけど、すぐ見られるというのもいいなと思うのと、かさばらなくていいと思いました」
そして、卒業生たちは…。
「動くから、その時何をして何が楽しかったのかが分かるかな。思い出に残りやすいかな」
「声を思い出せるのはいいなと思いました」
「おじいちゃん、おばあちゃんたちにも、こうやって電子アルバムで見せることができるのは、すごくいい点だと思いました」
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■卒業アルバムの歴史■卒業アルバムの歴史
新たな形の卒業アルバムが広がっているようだが、そもそも卒業アルバムはいつごろに誕生したのだろうか。
卒業アルバムの起源について番組で調べたところ、1900年=明治33年には、東京帝国大学で歴代の総長や教授、学内施設の写真などが収められた冊子が作られていて、学生たちの写真はないが現在の卒業アルバムの原型のようなものとなっていた。
ただ、こちらは学生たちに配られていたものではないようだ。前付けには、「東京帝国大学においては校舎設備の状況を撮影し、これに総長、前総長および、その他職員の肖像を加え(中略)大学現時の状況を知るにおいて無比の好資料というべし」と記されている。つまり、あくまでこちらは当時の大学の様子を後世に残す資料としての役割が大きかったようだ。
また、1912年=大正元年には「卒業記念写真帖」という名前で冊子が作られ、「在学中、ご薫陶の厚恩を謝するためこの帖を作り謹んで諸先生の膝下に呈す」と記されていて、卒業生のためではなく先生に贈るものとして作られていたケースもあるようだ。
ただ、写真をよく見ると、学生が講義を受ける様子も収められていて、今の卒業アルバムに近い形になってきているようだ。
■卒業アルバムが“海外進出”
現代で卒業生に贈られている卒業アルバムだが、実は今、海外で注目されているようだ。
デジタル卒業アルバムを手掛けている松本社長によると、海外では学校全体の1年間の様子を記録した「イヤーブック」と呼ばれる冊子は作られているが、卒業生に限定した「卒業アルバム」は日本独自の文化だという。
そこで、海外に卒業アルバムを売り込んだところ大きく注目され、今では世界の10の国と地域の学校が日本の卒業アルバムを採用しているということだ。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年3月25日放送分より)